「200字の書評」(343) 2023.5.25
こんにちは。
春に戻ったり真夏になったり、気候の落ち着かなさは一体何でしょうか。服装と寝具に悩み気味です。それでも田圃の稲はすくすくと育っています。水面からわずかに顔を出していた苗は、いつの間にかよく見えるようになってきました。代掻きをしているトラクターもあり、稲の種類によっては早い遅いがあるのでしょうね。いつの間にか民家の庭に紫陽花が目立つようになりました。例年よりやや早い様な気もします。
さて、今回の書評は異色の組み合わせによる対談です。
坂本龍一/福岡伸一「音楽と生命」2023年 集英社
二人の対話は流れる水の如く清らかで、見事なハーモニーを奏でる。ともに生命と自然への愛着と深い敬意があるからであろう。自然と言ってもいわゆるnatureではなく本来の自然を意味するphysisを共通認識とする。音楽家は楽譜ではなく、地上に流れる音を聞き取ろうとし、生物学者は生命の流転を動的平衡として受け止める。38億年前の生命誕生以来の歩みへの視点は、生命誌研究者中村桂子に通ずるものがあるのかもしれない。
【卯月雑感】
▼ G7サミットが鳴り物入りで開催されました。幾つか疑念がありました。被爆地広島にふさわしい議論がなされたのか、核保有国は被爆実態と向き合い被爆者の苦難をどう受け止めたのだろうか。ウクライナ戦争では核の使用やNATO対ロシアの全面戦争の危機さえ懸念されているのに、和平への道筋は語られたのだろうか。もはや世界はG7などと言う欧米先進国が先導する時代ではなくなっている。グローバルサウスと称される一群の新興国のパワーが、大きく成長していることに気付くべきではないだろうか。
▼ バイデン大統領は横田基地や岩国基地などの米軍基地から日本入国をしている。他の首脳は羽田などを使用しているのに、何たることだろう。オバマもトランプも同様。公式訪問なのにまるで属国か植民地的な扱いである。しかも大統領警護隊は、警備する日本警察のパトカーまで検査したという。国家主権など無視。それに抗議できないこの国は植民地扱いに満足しているのだろうか。恥を知れ、と言いたい。
<今週の本棚>
増田剛「日朝極秘交渉 田中均とミスターⅩ」論創社 2023年
拉致被害者の帰国を実現する上での、見えないところで緊迫したやり取りが行われていた。困難な相手との交渉と同時に、国内での秘密を守るために費やしたエネルギーの膨大さは想像に難くない。官僚の矜持と政治家の胆力が試された濃密な時間が再現される。ミスターⅩの運命や如何に。
鈴木敏夫「読書道楽」筑摩書房 2022年
高畑勲、宮崎駿言うまでもなくアニメ界の巨人であり、備えている知性と癖の強さでは天下に並ぶものはない。その御両所を向こうに回して、心地よく仕事をしてもらう段取りをつけ、時には厳しい姿勢を辞さない。そんなジブリのプロデューサー鈴木の一代記もまた、怪人の名に値しよう。彼の蔵書は驚くほどの8000点。個人蔵としては破格であり、数室に分散しているという。半端なき読書量とその人脈の広さに驚愕する。
★徘徊老人日誌★
5月某日 胃カメラ検査、心電図検査等を受ける。コロナ禍で3年ぶりの胃カメラになった。鼻からのカメラ挿入、今回は通りが悪く少々辛かった。食道、胃の内部も特に異常なく無事終了。一安心。
5月某日 旧友より電話あり。お互いの第一声は「オウ 生きているか?」こんな会話をしているうちは大丈夫かな。その友も前立腺の手術を受けて予後を養っている。早く以前のように飲みたいものだ。
5月某日 宇都宮へ。図書館をこよなく愛する仲間との宴を、訳あってこの地で開くことに。数年ぶりの邂逅に甲論乙駁、大いに語る。当然飲みも。私は別な用件があって失礼ながら途中退席。次は縁のある宇都宮大元教授との会、ほぼ同年代で共通の話題に大いに盛り上がる。学の独立を失いつつある大学の現状、とめどなき右傾化への危機感など時世を憂え、餃子を肴にグラスを傾けた。左翼老人の憂いは深し。
翌日は朝の新幹線で北へ。青森の彼女に逢いにひたすら走る。彼女とは青函連絡船「八甲田丸」のこと、歴史的遺産として保存公開している。僅か3時間の青森滞在、再開発の駅前は没個性の地方駅になりかけている。慌ただしい逢瀬で思いを残してはやぶさに乗車。一路埼玉へ。津軽海峡の向こうにも彼女が。博物館として公開されている「摩周丸」が待っている。「港々に女あり」(船は女性名詞です)いつか函館で再会しなければ‼ 昔は夜行列車で一晩かかった青森~上野間が一日で往復できるとは夢の如し。されど旅の風情は失われていた。
中国ではコロナ感染者再拡大の兆しあり。周辺ではマスクなしが増えている。開放感はもっともだが、備えは大切。くれぐれもご油断めさるな。
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