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「200字の書評」(311) 2022.1.25



大寒です。冷気が世を覆い、オミクロンが跋扈しています。変異株も出現したとか。加えてトンガ近海の海底火山が噴火。近隣の島々は火山灰に覆われ、津波に襲われました。被害の実態はつかめていません。心配です。日本にも想定外の津波が押し寄せ、漁船などが被災しました。22日未明には九州での震度5の地震。もしかすると、自然の底知れぬ力は人間社会に好意を持っていないのかもしれません。火山、地震研究者の研究環境は貧困です。予算配分とポストは少なく、その割に期待は大きいのです。国土強靭化と称してゼネコン奉仕の巨額予算が計上されてます。むしろ調査研究にこそ、予算と人員を投入すべきです。

地震、津波と言うと子どものころの二つの記憶が蘇ります。1952年(昭和27年)3月の十勝沖地震の際5歳の幼児でした。強い揺れに驚き、トイレから出たばかりでパンツのまま外に走り出ました。足の弱かった祖母が玄関の戸口につかまり、家ごと揺れていたのが今でも目に浮かびます。揺れが収まった後、津波警報が発せられ釧路川の河口近くに住んでいたので、高台に避難して崖の上からじっと家を見つめていました。家が無くなったらどうしようと不安に怯えながら。夜になって家に戻り、枕元に長靴を置いて寝ました。

もう一つは1960年(昭和35年)5月のチリ地震津波です。チリ沖で発生した地震は津波を引き起こし、時速750km、23時間後に日本に到達しました。釧路管内の浜中町霧多布地区はその直撃を受け、ほぼ壊滅しました。当時は中学生、知っている場所だけに強烈な印象も残しました。

海底火山については以前取り上げた本を紹介します。佐野貴司「地球を突き動かす超巨大火山 新しい「地球学」入門」(講談社ブルーバックス)です。参考になります。

さて、今回の書評は韓国の差別、ヘイトについてです。我が国のこと自分自身のことかもしれません。




キム・ジヘ「差別はたいてい悪意のない人がする」大月書店 2021年

韓国社会での差別の実相とそれへの抵抗、政府の政策と議会での論議から内在する深刻さが露わになる。積極的な是正措置への反発も根強い。些細な差別の背後には公共の場では見えない差別があり、新自由主義の終わりなき競争に、深い根がると指摘する。私は民主的で公平であろうと生きてきたつもりだが、社会的構造で形成された固定観念は抜きがたい。差別意識はない、悪気は無いとする私達の内なる意識が問われている。




【睦月雑感】


▼ 少し日の暮れが遅くなってきたように感じます。庭の蝋梅の芳香も強まっています。北海道では低温が続き、氷点下15℃20数℃などと報じられています。体験したものでなければ、その凄味はわからないでしょう。小中学生の頃、防寒着は今ほど優れてはいませんでした。朝の登校時手袋の中の指も長靴の中の足も、感覚を失うほどです。それでも通っていたのですね。教室には石炭ストーブが設置され、用務員さんが着火してくれていました。高校も同様でした。冷え切った室内はなかなか暖まりません。真っ赤になった達磨ストーブとチンチンと音を立てる蒸発皿を懐かしく思い出します。「冬来たりなば春遠からじ」私の大好きな福寿草はいつ咲くのでしょうか。


▼ ラジオが好きでよく聞いています。テレビは気に入った番組を録画して観ます。気になったことが一つ。国営放送が政権寄りなのには驚きませんが、それは別にして民放のCMで首を傾げています。耳に心地よい教訓めいた声の後に「提供は聖教新聞です」と入りました。民放はスポンサーに弱いのです。全体にスポンサーが減っている中で、宗教団体のCMは貴重な収入源なのでしょう。するとそれを母体にした政権与党の一角公明党を批判できるのでしょうか。読売新聞と大阪府の連携協定問題も要注意、維新に親和性を持っているのでしょうか、報道機関の矜持は何処に。




<今週の本棚>


山田正紀「開城賭博」光文社 2021年

江戸開城は西郷と勝の会談によって、平和裏に実現したとされている。実は両者の間に、開城条件をかけてサイコロ賭博が展開されていたとは。SF作家の面目躍如、奇想天外な話が面白い。


海堂尊「コロナ黙示録」宝島社 2020年

アベ政権下でのコロナ敗戦の真実が、小説の形で語られる。舞台回し役のいつもの登場人物以外、すべて実在の政治家官僚に擬されていて、実名がすぐわかる仕掛けになっている。笑いの中に恐怖が込められている。度重なる政府官僚の文書改竄、インチキ統計によるGDPのかさ上げなど、一昔前なら政権崩壊につながった事態も、アベ政権以降隠蔽されます。こうして国は腐っていくのだろうか。




オミクロン対策、相変わらず迷走しています。ステイホームなんて必要ないと口走ってみたり、若年層は検査より診察をとか、入院はできないので自宅療養とか、先進国なのかという疑問がまたまた頭をかすめます。出来ることを確実に成して、自衛することにしましょう。
どうぞお元気でお過ごしください。


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