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「200字の書評」(321) 2022.6.25



こんにちは。

空梅雨になりそうです。蒸し暑さは相変わらず、鬱陶しい雨が無いのは、果たして良いのか悪いのか。夏の水不足が心配です。いつもの散歩道、満々と水をたたえた田圃からは、カエルの声が聞こえてきます。日常の大切さを知る一瞬です。

21日は夏至、昼と夜の長さが同じとされています。6月7月は7時過ぎまで明るく1日が長く感じられて、若いころは仕事も遊びもたっぷり時間が取れました。今はそれどころか、1週間の過ぎ去るのが早いこと、早いこと。そして早く眠くなります。

22日には参院選が公示、23日は沖縄慰霊の日、日本人として地球人として、考えを深める日々が続きます。

さて、今回の書評は戦争を考察します。ウクライナ戦争が長期化し、停戦の糸口が見えない現在、歴史をさかのぼる必要がありそうです。




山崎雅弘「第二次世界大戦秘史 周辺国から解く独ソ英仏の知られざる暗闘」朝日新書 2022年

二次にわたる世界大戦を世界史として見た時に、独対英仏、日独伊対米英ソ中など大国を中心に考えがちである。その狭間で圧力と思惑から、一方に加担せざるを得ない中小国、いわば周辺国から見る視点が新鮮。本書では民族間の古い因縁や憎悪・対立が再燃する経緯が詳細に解明され、欧州だけではなく、中東、アジアなどの小国諸地域への目配りなどからは、私達の歴史認識の偏りが明かされる。別な世界史がここにはある。




【水無月雑感】


▼ 参院選、その争点は生活と平和だと思います。食料、電気水道ガス、ガソリン代など生活に欠かせないものが次々に値上がりしています。スーパーでは野菜も魚も肉も、高値を付けています。値上がりしていない品をよく見ると、数量が減らされています。生活を支える賃金は上がらず、むしろ実質的には低下し先進国最低の賃金です。年金も減額、私は厚生年金と共済年金を受けていますが、いずれも減額されています。
政治は、いや為政者はどう受け止めているのでしょう。疑問だらけです。ウクライナ戦争を奇貨として、自公政権とその翼賛勢力は改憲を主張しています。敵国への攻撃能力の保持、核兵器に手を伸ばそうとさえ主張しています。自衛権の範囲での専守防衛が国是のはずです。防衛費を2倍にする、一体どこにそんな金があるのか。人口減が現実化して、衰退が叫ばれているのに。
メディアは自公政権与党対野党の対立という、いつも通りの構図で報じています。正しくは「自公+準与党(維新・国民民主他)」対「弱含みの野党(立憲民主)+強硬野党(共産+れいわ他)」と読み解くのが正しいと思います。改憲勢力が3分の2を超えると(超えそう)9条はなし崩しとされ、国会審議抜きに政府の決定が優先する緊急事態条項が付加されて、憲法は骨抜きになります。皆さんはどう思いますか。私は反対です。


▼ 川柳に「売り家と唐様で書く三代目」があります。先々代が呻吟労苦の末形成した資産を、苦労知らずの三代目くらいになると没落し屋敷を手放さるを得ないことを、皮肉ったものです。まるで現代日本を映していませんか。政治家(屋)三代目のアベシンゾーは総理大臣に上り詰め、8年近く君臨して未だに影響力を誇示しています。アベノミクスなる珍奇な経済財政運営で膨大な借金を抱え、親分の米国に媚び諂い武器を爆買い、政治の信頼感を失わせ、官僚の規律を破壊し、メディア支配を進め、大企業には気前よく減税、庶民課税は無慈悲なまま、円安には打つ手なしで物価高騰を招いています。数え上げればきりのない愚かさでした。日本売りがとめどもなく進みそうです。諸外国の利上げに日本が対応できないのは、もし利上げをすると日銀が抱える莫大な国債金利を上げざるを得ず、日銀が破綻する危険性があるからです。
そこで二首。

「右折のみ 爆走先に 待つ悲劇」
「知性欠き 欲と一緒の 戦さ道」


▼ しばらく音沙汰が無い故郷の旧友に電話をしたら応答がなし。不安が兆したころ、電話がありました。男性特有の症状で入院し手術を受けていたとのこと、彼は高校時代の同級生。東京での学生生活でも、良く行き来していました。さらに驚いたのは、入院中の市立病院で別な同級生とばったり会ったとのこと。そちらはガンの疑いで検査を受けているとか。同じ市内に居ても、同級生ともなかなか会えないようです。それが病院でミニクラス会とは。高齢者同士の会話は病気の話しか、誰それが力尽きたという話になるのが実際です。齢を重ねると、こうした事態が起きがちで、一人減り二人減りの現実です。お互い気を付けようと、励まし合っています。


▼ 世界人助け指数をご存じですか。そんな調査があるそうです。日本は何と、最下位の114位だそうな!思いやり欠如、ということでしょうか。




<今週の本棚>


イ・ヒョン「ペイント」イースト・プレス 2021年

韓国の近未来、国が子育てを政策化し、その施設での出来事。一定の年齢になると外部の社会に養子として送り出される。その際には一切の履歴が塗り変えられ、通常の親子関係が作り出される。それに疑問を感じ抗い、ありのままに社会に出ようと決意する少年が主人公。親子関係、子育ての意味、国家の関与などを考えさせられる。映画「約束のネバーランド」を思い起こさせる。隔絶させられた囲いの中での暮らし、その外に待つものとは何か。少年たちの自我の成長を思わされる。


ジル・ボム/ティエリー・デデュー「そらいろ男爵」主婦の友社 2015年

平和を好む男爵は、戦争を忌みながらも動員される。飛行機好き本好きの男爵は一計を案じ、前線の双方に爆弾ならぬ本を投下する。本の魅力に取りつかれた兵士は、次の投下を待ち、敵兵同士が互いに本を交換するようになっていく。これでは戦にならぬ。ウクライナの前線やミャンマー、アフガニスタン、シリア、パレスチナなどの紛争地に本を投下する作戦は実行できないものか。本には「戦地の図書館」にも通じる何かがある。優れた児童書には説得力があります。大人も読むべきですね。


原武史「松本清張の『遺言』 『昭和史発掘』『神々の乱心』を読み解く」文春文庫 2018年

未完の遺作である「神々の乱心」にかける清張の真意を、政治学者であり鉄道マニアでもある原がたどる。天皇制研究者である原らしく天皇制の本質とその正当性を担保する三種の神器を軸に、新興宗教と皇居内の女官と皇太后らの思惑にせまる。さらに二・二六事件の経緯の陰には何があったのか。「昭和史発掘」で清張が解明しようとした歴史とは何か。政治史研究者らしい資料に当たった推理が説得力を持つ。




コロナ下げ止まり、むしろ感染増大の傾向になっています。自粛疲れと開放感の相乗効果でしょうか。自然の摂理は人間の思惑を超えます。まだまだ慎重な行動が求められています。4度目のワクチン接種、予約が取れました。出来ることはしていきます。
インフルエンザも流行しそうとのこと、ご注意ください。


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