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「200字の書評」(309) 2021.12.25



こんにちは。

9時間45分、冬至の昼間の時間です。夕食に小豆とかぼちゃの冬至かぼちゃをいただき、柚子を浮かべた風呂に入りました。浴室には柚子の香りが満ちて、その空気を吸い込み季節を満喫しました。暦には二十四節気が載っています。旧暦との差は多少ありますが、一年間の季節の動きと、その折々を感じるには好ましく生活を律することができます。

生活の中に定着した古い習わしから学ぶべきことと、旧弊として改めるべき事態もあります。夫婦別姓、外国人参政権、技能実習生の処遇、移民、入管の非人道性など人権にかかわる後進性は憂慮されます。「新しい資本主義」を唱えながら、アベスカアソウなどの流れを引き継ぐキシダに期待出来そうもありません。

クリスマスです。宗教とはかけ離れたイベントになって久しいのですが、子どもにとっては夢を見られる時期でしょうか(その楽しみも奪われている子どもたちは少なくない)。この時期に流れるクリスマスソングで懐かしく思い出すのはホワイトクリスマスです。中学生か高校生の頃、友人から薦められて聴いたパット・ブーンの歌声を思い出します。公民館の大ホールを会場に「S盤アワー」?が良く開催されていて、そこで聞いた彼のホワイトクリスマスは記憶に残っています。シルキーボイスとでもいうのでしょうか、柔らかな声は魅力でした。

さて、今回の書評は歴史家の時評です。




加藤陽子「この国のかたちを見つめ直す」毎日新聞出版 2021年

著者はこのタイトルが司馬遼太郎の「この国のかたち」に触発され、それを批判的に論じたと記す。おわりにでは歴史の真実は事実からだけで成立しているのではなく、「言葉」に現れた知性の営みの中にあると主張する。過去から現代を照射する歴史家の目に映じる日本はどのように見えるのか。学術会議会員任命拒否にも、事実と向き合う歴史家としての矜持が感じられる。冷徹でありながら、政治への静かな怒りを読み取れる。




【師走雑感】


▼ 何となく気ぜわしい時期です。道路での工事が増えているように見受けられます。予告なく規制されるとハッとして、ムッとすることもありますが、理由があっての工事と思わざるを得ません(もと土建業者としては理解します)。気になるのは、誘導している警備員の年代です。どこの現場でも、かなりの高齢と見受けられる人(時には女性も)が赤灯を振っています。自分よりも上のように見える人もいます。寒気のさ中道路に立ちっぱなしで、中には心無い言葉を投げつけられるのでしょう。高齢者が困難な仕事を続けざるを得ないのでしょうか。気になります。


▼ 認諾と言う言葉を初めて知りました。法律家でなければ知る機会は無いのでしょう。ここではニンダクと読むより「卑怯・卑劣」と読むべきかもしれません。権力者夫妻の醜悪さを隠すために、公文書の改竄を命じられた実直な公務員が自ら命を絶つ。この事態と誠実に向き合うことはできなかったのでしょうか。アベスカそしてキシダと続く権力者にとって「この国のかたち」とは何だったのでしょう。卑しき権力者たちとそのしもべを何と呼ぶべきでしょう。


▼ 日本海溝、千島海溝地震被害予測が公表されました。丁度テレビで「日本沈没」が放映されていただけに、驚きと危機感が広がりました。改めて我が国土が、プレートの押し合う微妙な位置に浮かんでいる火山列島であることが示されました。地震予知、火山爆発予知はかなり困難であるそうです。火山学者は数えるほどで、観測拠点も縮小気味だとか。国土強靭化など建設業界に巨額の予算を計上するなら、同時に着実に研究を積み上げる地震・火山研究にも研究予算を配分してほしいものです。もし千島海溝で地震が発生すれば、太平洋に開けたわが郷里は津波に飲み込まれることは確実です。もう一つ心配なのは太平洋側に立地する原発です。東北~東海には12基の原発があります。福島原発事故の教訓から学ぶべきです。




<今週の本棚>


中央公論新社「中央公論」2022年1月号

貴重な総合雑誌の一角「中央公論」を買いました。リベラル色の濃い「世界」とはややスタンスが違う編集姿勢が読み取れます。特集「謀略と昭和史」、小田嶋隆とオバタカズユキの対談「コラムニストとは何者か」を読むのが目的でした。別の対談で公明党山口委員長と佐藤優が語っていました。一時、知の巨人と持ち上げられた佐藤は、今や創価学会御用評論家になっていました。


横関大「K2 池袋署刑事課 神崎・黒木」講談社文庫 2019年

K2と言ってもヒマラヤの高峰ではありません。人気の刑事もの「相棒」や「あぶない刑事(あぶデカ)」とは違う刑事コンビが、ここにはいました。最終章では2人の関係が明かされます。横関大には「チェインギャングは忘れない」で俄然興味を持ってしまいました。




オミクロンが市中に蔓延しているようです。水際では食い止められなかったことは明白。いつも思うのですが、事態は最悪を想定しておかねば、いざというときには役立たないのに、またまた後手に回ってしまったのです。3度目のワクチン接種も二転三転、前線の市町村は困惑です。かつての同僚たちの奮闘に、遠くからねぎらいの気持ちを届けたいと思っています。

拙い書評にお付き合いいただきありがとうございました。勝手な読書ノートでしかありません。著者達が膨大な資料に当たり、額に汗を浮かべて苦吟の上刻んだ文章を、200字で評そうなどとは勘違いも甚だしいこととは自覚しています。その労作がストンと胸に落ちることも、行間を読み切れず何度か行き来することもありました。いつの間にかそれは300を超えてしまいました。満足できる書評はいくつあったのでしょう。すんなりと書ける時、長々と書いてしまい削るのに悩むとき、大事なことが秘められているはずなのに著者の真意が読み取れなくて考え込んでしまう時など、読書の楽しみと苦渋を味わいます。雑文を読み直すたびに菲才を嘆くばかりです。これに懲りずに、しばしお付き合いくだされば幸いです。

来年こそは良き年となるよう願っております。どうぞお元気でお過ごしください。


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