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【読書】お金の呪縛から解き放たれたい(その1)『貯金ゼロでも幸せに生きる方法/田中靖浩著』

無職になってから約2か月の月日が過ぎた今日。
最初は、見失っていた自分を探しに、いわゆる自分探しの旅をしていたはずだったのだけれど、意外にも「自分」という存在は、目を背けていただけでいつだって自分自身のそばにあって、嫌と言うほどに離れてはくれないくらいに自分自身は、自分自身によって束縛されているということに気づいてからというもの、自分自身を「探す」というよりは、目を背けていた部分に「向き合う」という形でうまいことときが流れきたように感じている今日この頃だ。

そういう「向き合う」という作業の段階で、否が応でも思わず目を背けたくなってしまうのが「お金」という呪縛な気がしている。

私は「お金」が嫌いだ。
何なら、資本主義という世の中が嫌いだ。
嫌いなのに、それについて考えて考えて、そういう世の中で生きていかないといけない状況に立たされている自分の立ち位置がもっともっと嫌いなのだ。

そうやってずっと目を背けてきていたのだけれど
そうも言ってはいられない世の中で生きていることには変わりないので
とりあえず、本を読むことでそこに少しずつでいいから向き合っていこうと思って手に取ったのが本書である。

誰に紹介されたわけでもなく、タイトルを見て思わず「私に今必要な本だ!」と運命を感じて手にとってしまった私のお財布事情を察してほしい。

読んでみて、きっと私と同じ状況である人なら誰しもが、勇気づけられる本だと私は思った。この本を読んで、自分に刺さった部分を、自分と向き合い、お金の呪縛から解放されるためにもここに綴っておこうと思う。

お金に対する価値観は、多種多様だとは思うけれど、私が思うに、人が生きてきた人生で関わった人たちの価値観に大きく左右されるような気がしている。

私の場合、その中でも一番長く、深く関わっているのは、家族とか親になるのではないかと思っていて、それがゆえに、私のお金への価値観は、家庭環境でより深く醸成され、定義づけられてきたように思う。

比較的裕福な家庭で育った私。親戚一同どこを見渡しても公務員しかいない、完全公務員家系で生きてきたので、そんな中で醸成されてきた価値観は書くまでもない気がしているが一応書いておく。

お金=貯めるもの
仕事=固定給をもらう、長く勤めることが大切
貯金=必ずしておくべきもの
貯金がなくなる=貧乏になる=社会的評価が落ちる=だからその状況にならないよう日々節約をしておくこと

簡単に書くとこんな感じだろうか。
だからこそ、無職になるときは本当に怖かった。

無職=貧乏=社会的価値なし

みたいな方程式が、長い年月をかけて醸成されてきた価値観によって容易に頭の中に妄想されて、本当に本当に怖かった。

今でもその恐怖がゼロになったかというとそうではない。
そんな私に本書では、バサッと切り口を替えて下記のような提示をしてくれた。

日本が「時代の変わり目」に差し掛かった今、まず私たちのやるべきことは「新しい時代」のやり方を学ぶことではありません。その前にやることがあります。それは「これまでの時代」に学んだ知識や経験など、すべてを含む先入観を捨てること。これがとにかく重要です。ただし、捨てるべき先入観とは「今の給料がずっともらえるとは限らない」ということではありません。それは先入観でもなんでもなく、事実だからです。捨てるべき先入観とは「金持ちは幸せで、貧乏は不幸である」という思い込みです。

本書より引用

昨今の世の中、キャリアアップとか、副業とか、投資とか、「お金を増やす」「収入を増やす」という観点でのコンテンツが溢れている背景には、結局のところ「金持ち=幸せ、貧乏=不幸」の方程式が必ずある気がしていて、だからこそ、そこに私はたぶんずっと行き詰まりを感じてしまっていたのだけれど、そもそもその発想自体を見直した方がいいんじゃない?という提案は、たしかに私にはとても新しく映ってすごく救われたような気がした。

たしかに、こうやって記載された論点をもとに、自分の頭の中で出会った人たちの記憶をたどってみると、全然お金はないのに、幸せそうに世の中を生きていた友人たちの笑顔がありありと思い浮かぶ。

出会ったときは、ほんと不思議な人たちだなと思って、自分とは違う世界を生きている人みたいに認識していたけれど、よくよく考えれば同じ世界の中で、ただ、根本の方程式が違うだけで、こんなにも生き方が変わってくるのだと、著者が指摘している観点に合点がいった。

世の中の人たちがこぞって貯金したがる今の世の中。「貯金」そのものは悪くないにしても、貯金したい心理に潜む「自分に対する自信のなさ」は大きな問題です。これだけは消してしまわないと、いくら貯金をしても不安感が消えません。人は自分に自信がなくなればなくなるほど、「将来の収入」に不安を感じるようになります。すると人は「目先の支出」を削って貯金しようとします。

本書より引用

あぁ、まさに、、、。私のことだと読んでいて思った。
そう「貯金すること」それ自体は本来、悪いことではないのだ。
だから別に、人生で深く醸成されてきた価値観のすべてを否定する必要はない。ただ、問題はその見方を変えること。

貯金=不安を消してくれるもの

と考えるだけでは、一生不安は消えない。
そうではなくて、最低限の貯金を持った上で、貯金以外に自分自身が自信をもてるものを見つけることに、とても意味があるような気がした。

だから、その自信をつけるために必要な投資に関しては、財布のひもを締めすぎない。適度にゆるめて、どんどん自分の自信をつけていくことが大切なのだと主張する著者の考え方に共感した。

西洋医学では病気を「ネガティブな状態」と捉えたうえで治療を行いますが、チベット医学をはじめ東洋医学では、病気をむしろ「成長のために必要な刺激」と捉えて体調改善の道を探っていきます。病気を「正常でない状態」として、何らかの方法・手段をもって退治・治療すべしという西洋医学的な発想に対して、病気を「成長のために必要な刺激」と捉えるチベット医学や東洋医学的な発想。東洋医学では、病気になったり衰えたりした身体を受け入れて、それと上手く付き合っていく方法を探っていくわけです。
「貧乏」についても同じことが言えます。世のマネー本をみると、そのほとんどが「貧乏」を悪い状態とみなし、「貧乏にならない方法」あるいは「貧乏から抜け出す方法」を説いています。それは「病気は正常でないから治療する」という西洋医学的な発想であるといえましょう。たしかに貧乏を「神の充分な恵みを欠いたネガティブな状態」と捉えれば、薬を飲んだりして治さねばなりません。しかし貧乏を「成長のために必要な刺激」と見れば、すこし話が違ってきます。どうして貧乏に至ったのか、その原因を直視し、目先のコスト削減に頼ることなく貧乏と上手く付き合いつつ直していく・・・・そんなアプローチがありそうです。

本書より引用

著者が記載している通り、「貧乏=悪」「貧乏=不幸」みたいなことをどうやって治していくかって、超絶今生きている世の中において大前提になっていると思う。

貧乏とはまた違うかもしれないけれど、私の現在の「無職」という立ち位置だってそう。

「無職=悪」「無職=不幸」みたいな方程式を、他者との対話の中でまじまじと感じてしまうときがある。ある意味、それを治療するための就職活動だったり、ハロワでの求職窓口だったりがある。

要は、無職を治療するための新しい仕事探し、みたいな立ち位置。そういうアクセスがあることはありがたいと思いながら、違和感を感じることも多かったので、著者の言葉によってその違和感が解消されたような気がした。

そういうお金の大前提みたいなところを見直せたという点で、本書から私はとてもよい学びを得ることができたように思う。

そして、ちょっと上記とは論点が変わるかもしれないけれど、著者は本書において、現代の日本企業の課題的な部分にも随所に触れていて、下記がめちゃくちゃその通りだなと、ぶっ刺さったので引用しておく。

ビジネスの長期的な繁栄を考える余裕はなくなり、もはや短期的な、目先の数字を追いかけるだけで精一杯の日本企業。日本の商売の良さでもあった「まずお客さんのことを考えて」「長い目でみて信用を得るサービスを」といった考え方が失われています。みんなバカじゃありません。出版社の人は、目先に追われて安易な本を出すことが自分たちのクビを絞めるとわかっているのです。またスーパーの人も、売り場それぞれの売り上げアップより、「店全体」の売り上げアップを考えるべきだとわかっているのです。ただ、わかっていても、会社が自分を「目先の数字」で評価する以上、それに従わざるをえません。また会社の中で争いごとやもめ事が起こると、経営者はほとんどの場合、数字で結果を出しているほうの方をもちます。「文句は数字を出してから言え!」ーこれが大企業の合い言葉。いわれたマネージャーは怒りに燃えて「自分の担当部門の数字を短絡的に」上げようとします。そのためには他部門を犠牲にすることも厭いません。大切な情報でも他部門に隠すし、足を引っ張ることさえしかねない。こうしてエネルギーが内側ばかりに向いてしまうと、外側のライバルと戦う態勢がつくれなくなります。

本書より引用

私も今までいろいろと仕事をしてきたけれど、気づいたらこういう内側の闘争にやっけになっていることって、もはや笑えるジョークを通り越して、あたりまえみたいな常識になりつつあるのではないかと思ってしまう。

またこれからどこかの組織や企業で働くとしても、そもそも本来の組織の意義とか、企業の理念的なものって、やっぱり忘れちゃいけないなと思ったし、大切な観点として、ちゃんと頭に入れておこうと思った。

とはいえとはいえ
まだまだ、私のお金の呪縛はそう簡単に解けてはくれないけれど
こうやって、さまざまな人の、さまざまなお金の価値観に触れることで
少しずつ、本当に少しずつアップデートしていこうと思った。


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