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【読書】絶望的な自分の現状を言語化しておくということ『生きづらさについて考える/内田樹著』

先日、とてもいい読書時間となった下記本の中に登場していた、内田樹さんという人物が気になって仕方がなくなった。

ので、図書館に行って、はじめて著者の本を手に取ってみた。

もちろん著者の本は他にもたくさんあって、気になるものもいくつかあったのだけれど、一番このタイトルに惹かれてしまって、借りてしまった私の無職の心境は察してほしい。

一気に読み切ってしまって、そこには絶望的なほどに、絶望的な日本社会の現状が、主に政治、教育、社会の歴史的観点から絶望的に考察されていて、もちろん、考察することによって、ただでさえ絶望的な現状であることは表面上から、この素人の私でも理解していたのに、著者の考察によって、さらに、なんだかどんなに奥深く掘ったとしても、どこもかしこも絶望的で、もはや絶望的すぎて面白くなってきてしまった一冊だった。

最終的に
「こんなにもあたりそこらじゅう絶望的な状況の中で、生きづらさ感じるのあたりまえだし、絶望的に生きづらいのに、その中で絶望的に頑張って生きている自分って、えらくない?」

ってもはや自分自身が愛おしくなってしまうほどに、日本社会が絶望的に考察された一冊だった。

再三、絶望的な日本社会について綴った著者が、「ではそんな世の中の中でどう生きていったらよいのか?」問いに答える形で述べている言葉を下記に引用しておきたい。

「自分が機嫌よくいられる場所」を見つけること。機嫌がよいというのはある事態の感情的な現れであって、「機嫌がよくなる場所」には条件があります。それは、そこにいると、次の動きについての選択肢が多く、可動域が広い場所であるということなのです。・・・・・若い人たちが感じている「生きづらさ」は「正しい位置」にいないことで生じた心身の歪みがもたらす詰まりや痛みです。自分が機嫌よくいられる場所はどこにあるのか、心身のどこにも詰まりやこわばりや痛みが生じないような姿勢はどうやったら見つかるのか、何よりもそれを求めて行ってほしいと思います。

本書より引用

僕から皆さんにお勧めすることはとりあえず一つだけです。「それは学びたいことを学ぶ。身に付けたい技術を身に付ける」ということです。「やりたくはないけれど、やると食えそうだから」といった小賢しい算盤を弾かない。「やりたいこと」だけにフォーカスする。それは自分がしたいことをしているときに、人間のパフォーマンスは最も高まるからです。生きる知恵と力を最大化しておかないと生き延びることが難しい時代に皆さんは踏み込むのです。ご健闘を祈ります。

本書より引用

私的に上記の言葉たちも大切にしていきたいと思ったけれど、それと同時にもう一つ、この本を読んで、これからも大切にしていきたいと思った思考回路を下記に綴っておく。

タイトルにもあるように著者は、この本の中で

「生きづらさについて考えている」

たぶん、私含め世の中の多くの人たちも「生きづらさ」は感じているのだと思うのだけれど、捉え方が少し違う気がしていて、どちらかというと多くの人々は

「生きづらさについて悩んでいる」

よく「考える」と「悩む」はまったく別物だ。と言われているけれど、私的に、前者は「生きづらさ」について「言語化」できていて、後者はそうでない。みたいな感じにも言い換えられるのではないかと思った。

つまり、著者はこの本の中で、社会の背景や歴史から、政治や教育などさまざまな観点から、「生きづらさ」について「言語化」している。

けれど私たちは、例えば会話の中で

「生きづらいってどういうことですか?言語化してください」

と言われると果たして何人が、自分自身の解をロジカルに正確に答えることができるのだろうか。と思ってしまう。別に言語化できないことを批判しているわけでもなんでもなくって、私自身も絶対に答えられない。言葉に詰まってしまうと思う。

それに、言語化できたところで、そう簡単に目の前の「生きづらさ」がいとも簡単に解消されるわけでは決してない。

ということを考えると、別に言語化することがすべてというわけでもない。

けれど

例えば、自分自身が生きづらくてどうしようもなかったとして

私は何に今生きづらさを感じていて
その背景にはおそらくこの歴史や出来事や要因があって
だからそれを解決するためにはおそらくこの選択肢を選んだ方がいいことはわかっていて、けれど、それには優先順位的にまず、この材料が必要になるのだけれど、私には今手持ちがなくて、あなたはこれを持っていたりしませんか?
というかそもそもこの選択肢に進むことってどう思いますか?

そうやって言語化したことを、身の回りの誰かに伝えてみるというその一歩からしか、その生きづらさを解決する道は、はじまらないのかもしれない。とそんなことを思った。

「言語化すること」は難しい。
ただでさえ、人々の価値観はネットやSNSによって多様化し、細分化されている。そもそもコミュニケーションをとるときに持っている前提が相手と違うことは、割と結構本気でしんどいと思う。10言っても1伝わるか伝わらないかの確率の世の中なのだ。

それに「言語化すること」には時間がかかる。自分自身に身体と心の余裕がなければ、さらにこの作業は難しくなっていってしまう。いわゆるタイパがくそほど悪いのだ。

それでも、そうやって言語化することで見えてくる新しい選択肢や、新しい仲間や、新しい価値観や、そういったものに柔軟でありたいと思うので、私はこの本を読んで、「考えて言語化する」という思考回路をこれから大切にしていこうと思った。

別に「生きづらさ」だけじゃない。「お金の不安」「老後の不安」「税金問題」などなど私たちには頭を痛めつける悩みがたくさんある。そんな問題たちに、悩むだけじゃなくて、考えて、言語化しておく。そうやって少しずつ練習していこうと思った。

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