【読書】ひきこもりは問題じゃなくて答え『ルポひきこもり未満/池上正樹著』
ちょうど先日、「0.5の男」というひきこもりを主人公としたドラマを観たことがきっかけで、こちらのタイトルにひっかかって図書館で本書を手に取ってみた。
こういった現場の声をダイレクトに書いたルポを読むのは割としんどいので、本当に久々に手に取ったけれど、やっぱり、しんどくても、社会の実情を知る手がかりとして、定期的に読んでいきたいなと改めて思えた、がっつりと現場からの声を拾い上げたルポだった。
本書内に紹介されていた、ひきこもり支援を精力的に行っている方の言葉に、なんだか心が動かされてしまった。
「ひきこもり問題」と聞いたとき、世間からはネガティブなイメージを全面的に受けがちで、身近に該当者がいなければ、出会う機会も少ないので、自分とは縁のないことのように思えてしまいがちだ。
けれど、上記のような視点から考えると、社会に生きる生きづらさを抱えた同志のように思えてくるし、私でいうところのその生きづらさに対して、脳死ではたらく、とか、一旦無職になって海外に逃げてみる、とか、はたまた自分の好きなことに熱中してみる、とか、それとおんなじで、生きづらさを解決するための選択肢のひとつにしか過ぎないのだと考えると、なんだか見え方が変わった気がした。
さまざまな方の背景を本書で読み進めながら、なんだか違和感を感じたのが、上記に書いたような観点だった。
「ひきこもり支援のゴールは、就労か、結婚」
ここに私はめちゃくちゃ違和感を抱いてしまった。
その違和感について下記に書いておこうと思うのだけれど、ここからは、自分自身のめちゃくちゃ偏見と個人的な解釈になるので、あくまでただの意見として読んでほしい。
私自身も無職になってしばらく、実家にひきこもっていた。短期間ではあったけれど、それなりに自己責任論的なものに苛まれたことをよく覚えている。
ハロワに失業保険をもらいに行ったときなんかもそう。あくまで就職活動を前提に支給されるのが、失業保険なのであって、ありがたいことではあったけれど、そのあくまで就労が前提、みたいな概念に、結構グサッとしんどさを覚えてしまったこともあった。
就労しない、お金を稼がないことは悪であって、人は生きるためには働いて、お金を稼がなければならない。そうできない人間は脱落して当然。全部それは自己責任。
資本主義社会に生きている限り、たしかにお金を稼がなければ生きていけないことは当然だ。
けれど、その資本主義社会が継続していく背景には、何らかの犠牲、排除という概念が必ず存在しているのであって、そこを問題点として、人々は遠い昔から、その問題について、公共、行政、福祉の観点で補おうと努力していた背景がある。
私的に、実際そのボトムを支える観点があったからこそ、いまだ資本主義社会が継続できているのかもと思ったりもする。賛否両論あれど、今ある公共や行政、福祉の仕組みが全部消えてなくなってしまったら、その資本主義社会は成立せず、破綻して、戦争だらけになってしまうのではないか。と思ったりしている。
そういう見方からさらに深く掘っていけば、そもそも資本主義社会の仕組みを支えるための、福祉や行政の在り方って、その原理とは、少し距離を置いた、ときにまったくもって反対のルールのもとで運営されなければ意味がないのではないか。と勝手だけれど私は思ったりしている。
つまり、何が言いたいかというと
上記に記した、「ひきこもり支援のゴールを、就労か結婚」にいわゆる福祉が設定をして、強要してしまうって、なんだか違和感じゃないですか。
そもそもそのゴールを設定している時点で、前提が、できれば早期の資本主義社会への復帰、経済活動を行う、お金を稼ぐことしか選択肢として取れないという点において、めちゃくちゃ資本主義の原理だ。
これでは、その資本主義社会で犠牲になった、排除された人々にとって、とてもとても酷な現実を突きつけられて、さらにしんどくなってしまうだけな気がしている。
あくまで個人的な解釈にすぎないけれど、、、。
だからどうしろって、当事者でもないので、簡単には言えないけれど、私的に、ひきこもりを、資本主義社会に生きているからって、その原理で、できるだけ早く、コスパを意識して、社会復帰させよう。みたいなルールだけを適応させないことが大切なんじゃないかと私は本書を読んで思った。
時間をかけてもいい。最初は就労とか、結婚とか、そんなこと考えなくてもいい。まずは誰かと話してみることから、、、。関わってみることから、、、。
そういう意味では、この本書に出会うきっかけをつくった「0.5の男」というドラマは、めちゃくちゃ本書の主張と重なる部分が多いような気がしている。
ひきこもりの主人公に、あえてすぐすぐ働け、とか、そういったことを迫るのではなくて、関わりを持ちはじめるところから。
そんな両親の配慮には、きっと多くの人が感動し、共感を呼んでいるのではないだろうか。
いろいろ考えさせられた一冊だった。