マガジンのカバー画像

映画回想録

16
運営しているクリエイター

記事一覧

「ノスタルジア」観てきました

昨日からBunkamuraル・シネマの仮移転先の渋谷宮下で始まりました。 下の階の電器店の喧騒とは裏腹に落ち着いた内装で東急本店の隣にあった 文化村の雰囲気がそのままで安心しました。 館内も広々としていて名画座とは一線を画した感じで何よりも座席の前後の間隔が広くとってあって、通りやすいのはよかったです。 と前置きはこのくらいにして、映画の方は想像以上に分かりにくかったです。難解な芸術映画という感じでした。 タルコフスキーの映画を観るのは初めてで、何の知識もないままだったの

アキ・カウリスマキ「枯葉」を観て

お待ちかねの映画「枯葉」をやっと観る事ができました。 どれ程お待ちかねだったかというと↑に書いた通りです。 ユーロスペースは平日にも拘らず、料金が安いサービスデイのせいもあってか私の席の両隣も埋まりコロナ前の盛況を取り戻したかのようでした。 これから先はネタバレありますので、まだご覧になっていない方はスルーしてください。   まず、主人公の女性がかけるラジオからは日本語の演歌のようなものが流れてきます。監督の日本へのオマージュなのかどうかは分かりませんが、少なくとも私が知

アキ・カウリスマキ いっき観

今年は、新作映画をほとんど見なかった代わりにnoterさんたちのおかげで見逃していた1980、90年代のインディペンデント映画を沢山観る事ができました。 暑かったので、殆どをサブスクで視聴しました。便利な世の中になって、ありがたいです。 そして今回はアキ・カウリスマキ、ご紹介くださったムーンサイクルさんありがとう!でもこの監督は最近読んだ「インディペンデントの栄光 ユーロスペースから世界へ」にも載っていたし、「ル・アーブルの靴みがき」という映画は昔見たことがあるけど地味な映

ミニシアターの草分け

ずっと読んでみたかった本をやっと図書館から借りてくることができました。2022年に刊行されたばかりですが、人気があってなかなか順番が回ってこず、この度やっと読む事ができました。 1970年代から日本のミニシアターブームを牽引して来られた、ユーロスペースのオーナー堀越謙三さんの一代記です。私も観る側の端くれとして気になる部分も多く夢中で読ませていただきました。 ヨーロッパのインディペンデント映画を日本に配給した先駆けとしては、その前に秦早穂子さんがいらっしゃいます。

ジョン・カサヴェテス 作品一挙上映

noteを始めて2年経ちました。相変らず試行錯誤を繰り返していますが、フォローしてくださる方も増えてやりがいも感じています。というよりはもはや生き甲斐となっています。そして当初予想していなかった嬉しい驚きは海外在住の方の記事を拝読できて交流できる事です。日本とは違う暮らしを興味深く読ませて、また見させて聴かせていただいています。 その中のお一人である森野しゑにさんの最近の記事に目が止まりました。 映画通を自負する私が全然知らない監督で、しかも だって⁉そこにタイミングよく

トリコロール三部作

毎日暑い日が続きますね☀️ 炎天下に出かけるだけで死にそうになります❗️ 去年は、上半期に観た映画ベスト3なんて記事をアップしていたのに今年は家庭の事情もあって、まだほとんど映画館に行けていません。 こんなんじゃ、ベスト3をあげるなんてとても無理と思っていたところ親切なnoterさんが、サブスクで見れる映画を紹介してくださいました。 1990年代の映画なんですが、出かけずに家で観られるのでお薦めです。 Yukitaka Sawamatsuさん、ありがとう❗️ クシシュトフ

今年観た上半期映画ベスト3(2022年)

今年はもう映画館に行く予定がないので、独断と偏見のベスト3を発表させていただきます。今年映画館で初めて公開された映画を対象とさせていただきます。 訃報 ジャン・リュック・ゴダールが亡くなりました。思えば私の映画遍歴の原点のような「気狂いピエロ」に出会わなければ、難解映画路線には進まなかったような気がします。今年有楽町のヒューマントラストシネマで久しぶりにアンコール上映を観ましたが、なんと途中で寝てしまった! もはや青春時代の多感だった自分ではない事を実感しました。ゴダール

PLAN75と安楽死について

「PLAN75」YouTubeにも感想が沢山上がっていますね。 凱旋舞台挨拶で早川千絵監督がおっしゃっているように余白を残している映画なので観た方によって、それぞれ違う感想が出ると思います。 以下ネタバレがありますので、まだ観てない方はスルーをお願いします。 私は最後のシーンで主人公のミチが安楽死から逃れて夕日を眺める場面にそれ程希望が感じられなかったというか、アパートを引き払って来ているわけだから、その晩から住む所に困るんでないの?とか余計な心配をしてしまいました。仕事もま

国立映画アーカイブ 現在

うん十年ぶりに、京橋の国立映画アーカイブに行って来ました。 昔行った時の回想は以前書きましたが↓今回はなんとご招待されて行ったのです。 何でも古い磁気テープの映画をデジタルファイル化する資金を集めるのにクラウドファンディングを立ち上げて、それに一万円寄付しただけなのに展示室の年間パスポートは送られてくるわ、今回のご招待はあるわの高待遇の返礼を受けたのです。磁気テープの映画というのが過去の日本の映画監督をインタビューした「わが映画人生」というドキュメンタリー映画で、その中でも

今年観た映画ベスト3(2021)

皆様お久しぶりです。前回9月から更新をサボっている間に年末になってしまいました。時が過ぎるのが早すぎますね。 ベスト10が好きな私ですので、ネタに困ったらこれで行けば書けそうな気がしてきました。今年映画館で公開された作品は10本も観ていないので、先ずは印象に残った3作を上げます。でも観る前にかなりリサーチして厳選していますから自信を持ってお薦めできる3本です。 春江水暖         中国映画     2月公開 MINAMATAーミナマター アメリカ映画   9月公開

私の映画遍歴 最終回&ベスト10

最後に私の日本映画遍歴について語りたいのですが、これがお恥ずかしい事にあまりないのです。それでも一押しはやはり黒澤 明監督の「七人の侍」ですね。小学生の時に親に「赤ひげ」を観に連れて行かれました。若大将が出ていたので喜んで観ていた記憶があります。その後ひと通り黒沢映画を観ましたが、その中でも「わが青春に悔いなし」「天国と地獄」「生きる」などはまだ若かった自分の生き方にも影響を与えてくれた作品たちです。 その後、小津 安二郎、山田 洋次ときて、その後がないのです。強いて言えば岩

韓国ドラマ(私の映画遍歴 No.5)

忘れもしない2003年、巷では「冬のソナタ」という韓国ドラマが話題になっていました。今までの映画遍歴から観る目には自信を持っていたので NHKの年末集中放送を観る事にしました。正直、得体の知れない韓国のドラマに期待はしていませんでした。ところが、出だしからクロード・ルルーシュ顔負けの映像美、フランシス・レイに勝るとも劣らない音楽に引き込まれてドラマが完結するころには、完全ノックダウン、ヨン様の虜と化していました。当時は慣れないパソコンでペ・ヨンジュンの情報を集めているうちに、

男と女(私の映画遍歴 No4)

気狂いピエロと時を同じくして当時印象に残った映画があります。 それはクロード・ルルーシュ監督の「男と女」、中学生にして初めてベッドシーンに遭遇したという点でも記念すべき映画でしたが、あまりにも美しい映像美の中ではリアルさはそれ程感じずに済みました。ご覧になられた方も多いと思うので、これ以上の言及は差し控えさせていただきますが、一つだけ思い出深いのは、主人公の女性の元夫でスタントマン役をやったピエール・バルーについてです。この映画の音楽もフランシス・レイと共に担当していますが、

気狂いピエロ(私の映画遍歴No.3)

いよいよ佳境に入ってきます。前々回でお話ししたように1960年代の映画館は「ニュー・シネマ・パラダイス」に描かれたイタリア、シチリア島の映画館と同じような活況を呈していました。ジュゼッペ・トルナトーレ監督のこの映画は、私のもっとも好きな映画の一つです。 この映画産業がテレビやビデオの普及によって、陰りを見せ始めたのは中学生の頃からでしょうか?中学三年のある時、ビルの一角にあった映画館の前に奇妙なポスターが貼ってありました。顔を赤いペンキで塗りたくった男の画像と「気狂いピエロ