今週の読書録
お菓子の船
職人さんのお仕事小説が多い上野歩さんの作品。
今回の主人公は女性和菓子職人。
和食も和菓子も職人さんは男性が多い業界です。
技術はもちろん、体力が必要な工程も多く、調理器具一つ運んだり洗ったりするだけで結構な重労働。
という紹介文にも書かれたフレーズからはじまる『お菓子の船』は、女性職人がまだ少ない和菓子業界をテーマにしています。
男性が大多数であることに加えて年功序列の世界に飛び込んだ主人公。
思い出の風景が浮かぶ味を求めて、修行を続ける日々。
作中では一年があっという間に過ぎていき、新卒時代から独り立ちした後までが描かれています。
和菓子の和に餡子の子、この仕事にピッタリ!と言われるお名前のワコさん。
好きこそものの上手なれか、才能か、同期に嫉妬されるほどの成長ぶりをみせ、周囲にも認められていきます。
五感を組み合わせた作品作りの描写、生涯一職人であることにこだわる先輩など見所も多々あり、テンポよく読み進めることができました。
大戦末期の様子と現代の描写が行き来しますが、読んでいて混乱しないきれいなまとまり。
目標に向かって試行錯誤してハッピーエンドで落ち着くのは安心感があります。
はらぺこ
美味しい作品×時代物という好物の組み合わせであれば読まなくては!
帯の内容にひかれて手に取った一冊です。
朝井まかてさん、近藤史恵さんなどの江戸時代を舞台にした食べ物にまつわる短編が集まっています。
個人的に印象に残っているのは朝井まかてさんの「福袋」。
離縁した乾物屋の主人の姉が実家に出戻り、活路を見出したのはまさかの大食い大会。
短所のはずの大食いが大金を稼ぐ手段となるとは…
結末は教訓めいたものを感じますが、読了感は悪くない。
五十嵐佳子さんの「桜ほろほろ」は、武家での長年の勤めを経て、お茶屋をはじめる主人公。
現代でいう退職金や遺産もありFIREできるはずが、お茶とお団子だけのメニューで飲食店経営を開始。
旧知の人物はもう孫も大きくなる年齢で、仕事中心の生活だった主人公は第二の人生を歩み出す。
美味しそうな料理の描写とほろりとする展開に「福袋」とは違う意味で印象的な作品。
各作品は50-100P程度なので移動の合間や休憩時間にも読みやすいのもよいところです。
まだ出会っていないあなたへ
メフィスト賞受賞作家・柾木政宗さんの『まだ出会っていないあなたへ』は、4人の主人公の視点と時間軸が入り混じる作品です。
1.経験者採用面接での不合格者が自殺をしてしまった人事課長。
2.デビューしたものの2作目が出ずブラック企業で働く小説家。
3.SNSで「死にたい」と呟き続けるコンビニ店員。
4.取り立て先の子どもに好かれてしまったヤクザ者。
読み始めは気づかず不思議な感覚を覚えましたが、登場人物たちのエピソードの時系列が分かれば特段変わったところはなく…
人物像が見る人によって変わることもよくあること。
あまり明るい気持ちになる作品ではないので、落ち込み気味のときやまだ見ぬ刺激が欲しいときには不向きかもしれません。
人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの
G検定を受験しようか迷い、受験者の方の体験談で紹介されていた書籍を読んでみることにしました。
Kindle版であれば無料で閲覧できるようなので、まずは気軽に人工知能の概要を知りたいという場合にはよさそうです。
ネットニュースの助詞や言い回しが時々不自然な内容はもしかするとAIが執筆しているのかもしれない。
ニュース内容のダイジェストは今や人工知能の得意な分野らしいです。
その他にもパラリーガルの業務も人工知能が活躍しているのだとか。
人工知能という専門知識がなければ理解できないと想像していた内容を比較的分かりやすく説明してくれる一冊です。
ちょっと勇気が湧いてきたので、G検定の問題集を買ってみることにしました。
いま、台湾で隠居しています
『なるべく働きたくない人のためのお金の本』という、一度は想像しつつもなかなか言いにくい願望をそのまま本にしたタイトル。
同じ著者の方の台湾生活編がこちらです。
一カ月五万円生活?!
格安物件に住み、ほどほどに食にこだわり、ガイドブックの取材や編集を時々受けながら隠居生活を送る著者。
台湾に移住しても特に語学の習得に励まず、人脈形成も頑張らず、観光名所にも積極的には行かない。
気づけば三年住み続けているとは…
もう一つの才能です。
自分にはできないけれど、ちょっと憧れる。
そんな不思議な日常を描いたノンフィクション。
読むと頑張ろうのハードルが下がる一冊です。
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