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【詩】おん

蛇がお札を持ちながら

近寄ってくる

手などないのに


見通しの良い丘に立って

一人手を広げて

景色を眺める

ここにいるわたし


蛇が涙を流しながら

お可哀そうにと近づいて

お札を置く

お気持ちはよくわかります

これで少しでも

心が楽になりますように

気にしないでください

私の勝手にやってることですからと

蛇の口上は滑らか


可哀そうではなく

爽快な気持ちで

風を感じていたのに

蛇はそれを

哀れに見えたのかと

首をひねる


座り込んで笛を吹いていると

蛇は悲しい音色が

聴こえて来たので来ました

お札を黙って置いて

お辞儀をして帰っていく


散歩をしていると

急にわたしの前に立つ蛇


さっきからずっと

その足音がうるさいと

大声で叫ぶ

お札をあげたのに

私に嫌がらせばかりすると


恩を仇で返すとはあなたのことと

わたしに指をさす



それを見ていた猫が

蛇の恩は恩着せがましいの

恩だと一言いって

壁を乗り越えて行った


もう一度前を見ると

蛇はすでに消えていた










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久住ハル
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