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【詩】手を伸ばす

流れを眺め

手にするのは

上手くない


表面が滑らかなせせらぎ

心地の良い笹の葉で出来た舟は

穏かなわたしの胸の内を

乗せて心は穏やかに


小さな渦で笹の葉は

くるくると水中で上へ下へ


次にくる渦は小さくない

わかっているのに

そのまま大きな渦に巻き込まれる


誰かと誰かが衝突した音

叫び散らす声

捏造を流布する手紙


そんなものはいらない


水中で目をあけたまま

渦の中でここがどこかわからない人

どっちに行っていいかも見えない


わたしはその人を助けるために

流れも見えないまま

ただただ手を伸ばす


手を伸ばした瞬間に

わたしは渦の中心にいて

流れなど見えない

体は自由に動かすことが出来ない

このまま

何の渦かどうなる渦かわからない


わたしはその渦を見ているはずなのに

気が付けばその中にいる


光のある方へ両手を出し

必死に水上に出る


渦の中から出るのも

上手くない


それでも

出られないわけではない


思い切り息をする







 

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久住ハル
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