- 運営しているクリエイター
記事一覧
原民喜からみる死と文芸
キリストのように美しく、静謐に満ちた文章を原民喜は綴る。甘美と荘重の夢幻(これは夢幻であるに違いないのだが、形而上の幻であり、その意味で非現実では無いのだ。)は代償としての死が伴う。原民喜は妻の死以降の作品は遺書の如きものであったとのべ、壮烈な最期を迎える。
こうしたパラダイムシフトには病気、死がある。柳田邦男は病気や死により社会から爪弾きを余儀無くされた者達を異邦人とよび、異邦人だけが創造でき
『カラマーゾフの兄弟』1
『カラマーゾフの兄弟』
ドストエフスキー畢生の大作。古今東西幾多の賢人がこの作品に感銘を受け崇めてきた。かのウィトゲンシュタインはこれを50回読んだという逸話は有名である。
「カラマーゾフ」という言葉はトルコ語及びロシア語の合成語であり、その意味するところは「黒く塗られたもの」。すると、「黒く塗られた兄弟」の物語となるが、ここで「兄弟」は同胞たる人類を暗示している。人間は清濁併せもつ存在であ
自殺は悪か-対話篇-
「昨今ちょっと有名になって、自分は繊細で常にプレッシャーと戦い続けてると勝手に勘違いし自殺するアホな芸能人が増えてきたが勘違いしてはいけない。世の中に自殺を美化させた彼らとメディアは糾弾されるべきと俺は思う。
昨日も受け持ちの障害者が急変して生死を彷徨ったがなんとか今は持ちこたえている。彼が死んでも社会の生産性にも死という概念にも何も影響を与えない。
まぁ俺たちからすれば自殺をするやつはアホ
『中国現代文学珠玉選 -小説02』
表題の書は文字通り中国現代文学の名編を収載したものである。ここでは、その中から王魯彦『秋夜』という作品を紹介したく思う。
死に彩られた小説。それがまず印象された。死は作品世界に於いて円環を形成し、その楔は主人公に常に纏わりついて離れない。謂わば、主人公は死の世界に包囲されている。彼は幽界の中で現実との結合を消失し死と地続きの特殊な場所にいる。そしてそれは内面化された主人公の精神である。
ドストエフスキー『白痴』
「無条件に美しい人間を創造しようとした」
上記ドストエフスキーの言葉が有名な『白痴』の主題は、現代ロシア社会に無条件に美しいイエスキリストのような存在が登場したとしたら、(その存在は「白痴」の主人公ムイシュキン公爵。白痴であり「ユローディヴィな存在」。注:『罪と罰』ソーニャの存在はロシアの言葉でいうところのいわゆる「ユローディヴィ」(痴愚者。狂信的、陶酔的、白痴的な神がかり的な存在。ドストエフス