磯野真穂氏の『ダイエット幻想』を読んで【書評もどき】
みなさん、こんばんは。今日は、文化人類学者である磯野真穂(いその・まほ)氏の著書『ダイエット幻想-やせること、愛されること』を読んで、思ったことを書きたいと思います。
私が、磯野真穂氏と出会った(実際にお会いした訳ではありません)きっかけとなったのが、noteの生湯葉 シホさんの記事『物語を内面化してしまうことの危険性について』でした。⇩
この記事の内容については、リンク先をお読みいただきたいと思いますが、その中での、
「摂食障害の当事者の語りを通して」
に、
「昨年読んだ『なぜふつうに食べられないのか』(磯野真穂)という本がある。」
という部分がありまして、そこで興味を持ったのです。
もちろん、『なぜふつうに食べられないのか』も読みましたので、その感想などは、また後日記事にしたいなぁ・・・とは思っています。
前置きが長くなりましたが、本題に入りたいと思います。
この本では、冒頭で
この本をあなたがいま開いているということは、きっとあなたが心のどこかで、「やせたい気持ちとうまく付き合えていないこと」に気づいているからだと思います。(以上『はじめに』より引用)
と述べています。そう・・・かつての私も、「やせたい」を追い求め、「やせたい」を完全に支配した、と思ったのも束の間、その先には、逆に「やせたい」に支配され、自分自身が乗っ取られてしまいました。
そして、『はじめに』の最後には
ダイエットに疲れたあなたが、あなたの中のやせたい気持ちと良い距離感を保ってくらせるようになるのなら、著者としてこんなに嬉しいことはありません。(以上『はじめに』より引用)
と述べています。著者は(おそらく)摂食障害経験者ではありません。ですが、多くの摂食障害当事者へのインタビューなどを通して、「食べる」と「やせる」について、研究を重ねていらっしゃいます。その中から紡ぎだされた「距離感」という言葉に、何というか、心が「通じた」気がします。
この本は、
「やせる」ことは、自分自身の欲求なのか、それとも自分の外側から「やせたいと思わされているのか」、に始まり
①女性として愛されることとやせることの関わり(第三章ー第五章)、②やせるために食べ物や身体を数字に変換することの危険性について(第六章ー第八章)段階的に考えてゆきます。(以上『第二章』より引用)
として、「やせたい気持ち」がどこからやってきて、どうして自分の中に居座ってしまうのか、文化人類学者ならではの多角的な視点から考察を重ねています。
そして、最後には
生きるとは、自分と異なる様々な存在と巡り会い、その出会いに乗り込みながら、互いを作り出すこと。そして、その現れを手がかりにし、次の一歩を踏み出し、進むこと。生きるとは、そんな出会い、現れ、歩みの連なりであるはずです。(以上『終章』より引用)
と述べています。
この本には、
「やせる」ことや、「やせたい気持ち」を否定するのではなく、それらとうまく折り合いをつけて、人との関わりの中で生きていくにはどうしたらいいのか、そのヒントがちりばめられています。
最後に、著者である磯野真穂氏のnoteの中で、この本に関する記事がありますので紹介させていただきます。
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