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「東京創元社 復刊フェア2025」Webアンケートのための未読感想文(前編) ルルーとクイーンとフィルポッツとバークリーと。

 面白い小説を見つけるとその作家の著書全て読みたいなと思ってしまいます。
 でも私が好きなものは古い海外小説ばかり。
 初期の作品の翻訳文庫などは絶版のことが多くて。

 古本屋さんを巡って見つけたり。
 図書館で探して書庫から出してもらったり(なにぶん古いので)。
 結構苦労して読んでます。まあそういうのも楽しいのですが。 

 でも古いとどうしても、文字が小さかったり、ページが褪せて読みずらかったり。
 結局手に入らないものもあって。

 なので「東京創元社 復刊フェア」。
 本当にありがたいです。

 しかも「あなたの復刊してほしい創元推理文庫」というアンケート企画でこちらの希望を伝える機会を設けてくださるとか。

 本当にありがたいです。(二回言いますね。)

 ということで、アンケート自体は先週終わってしまったのですが。
 復刊フェアアンケートのために試行錯誤した結果の未読感想文です。
 

 ちなみにバナーの画像は去年私が購入した創元推理文庫です。

 左から
① 「孔雀屋敷」(フィルポッツ傑作短編集) 
 イーデン・フィルポッツ著 武藤崇恵 訳
② 「悪魔のひじの家」
 ジョン・ディクスン・カー著 白須清美 訳
③ 「最上階の殺人」
 アントニイ・バークリー著 藤村裕美 訳
④ 「地下室の殺人」
 アントニイ・バークリー著 佐藤弓生 訳
⑤ 「ABC殺人事件」
 アガサ・クリスティ 深町眞理子 訳
⑥ 「ギリシャ棺の謎 」【新訳版】
 エラリー・クイーン 中村有希 訳

 ①から④は初読です。
 図書館でも古本屋さんでも見つけられなかったものなので嬉しくてすぐに購入して読了。(いつか感想文を書きたいです。)
 ⑤は堀内静子訳のハヤカワ文庫を持っていて実はもう何度も再読しています。(クリスティー。面白いです。)でも別の方の訳とか解説を読むのも好きで。カバーが美しかったのもあって購入。これから読みます。
 ⑥は越前敏弥訳の角川文庫「ギリシャ棺の秘密」も持っていて再読もしていますが、⑤と同様、別の訳とか解説を読んでみたいのと、ゆうきまさみ先生のカバーも気に入って購入して読みました。
 ギリシャ棺も何度か再読しているので犯人はわかっていますが、やっぱり面白かった。

 ということで。創元推理文庫には大変お世話になってます。

 それでは以下。
 アンケートのコメントに書いた順番で、作家ごとに復刊希望本を上げていきたいと思います、が。
 海外の推理小説ばかりでちょっとマイナーなものが多いかも。
(推理小説なのは仕方ないですね。創元推理文庫なので。)

 それと、長くなってしまったの前後編にします。
 よかったらお付き合いください。



1 ガストン・ルルーの

 まずは作家紹介を、東京創元社公式サイトから。

1868年、パリ生まれ。法律を学び、弁護士資格を取得した後、日刊紙《エコー・ド・パリ》に記事を寄せるようになり、その後、劇評や裁判記録を多く執筆。《ル・マタン》紙の特派員などもつとめた。代表作である『黄色い部屋の謎』は、1907年に《イリュストラシオン》紙の文芸付録に連載したもので、1908年に刊行され、現在も密室ミステリの古典として不動の地位を保っている。『黄色い部屋の謎』で活躍する青年新聞記者ルルタビーユのシリーズのほかに、映画化、舞台化されている『オペラ座の怪人』の著者としても知られている。1927年没。

東京創元社公式サイト

 ルルーは『オペラ座の怪人』の方が有名かもしれませんね。
 そちらは未読です。

 ちょっとしたきっかけで推理小説を読み始めることになり、その頃「密室ミステリの古典」と聞いて『黄色い部屋の謎』に興味を持ちました。

 探しましたとも!
 そして古本屋さんで見つけて読了です。

 フレンチ・ミステリーはホームズ的なイギリス推理小説と趣がちょっと異なっているような気がします。面白かったです。

 探偵役のルール・タビーユのキャラクターも良くて。

 
 「黄色い部屋」は、2015年に高野優監修・翻訳、竹若理衣翻訳でハヤワ文庫から新訳版が出てますし(購入して再読しました。字が大きくて嬉しいハヤカワ文庫です)、創元推理文庫でも平岡敦訳で2020年に新訳版が出ています。
 
 でも。その続編がありまして。
 それを復刊希望です。


 「黒衣婦人の香り」 石川湧 訳

忌まわしき『黄色い部屋の謎』の事件から2年ほどあと、青年記者ルールタビーユは再び悪夢のような事件に巻きこまれる。こたびの舞台は、南仏海岸に偉容を誇る古城〈ヘラクレス砦〉。相次いで事件を起こし、美しきマチルドをはじめ、砦の滞在客をおびやかすのは、神出鬼没のバルメイエなのか。前作で明かされなかった〈黒衣婦人の香り〉の秘密がヴェールを脱ぐ、ファン必読の書!

同上

「美しきマチルド」も「神出鬼没のバルメイエ」も『黄色い部屋』に出ています。 
 謎めいた〈黒衣婦人の香り〉もチラチラ出てきました。
 でも明かされないまま、その答えは続編に持ち越しで。

 どうやら主人公の出生の秘密に関わりそうな?

 気になります。

 ということで復刊希望です。


2 エラリー・クイーンの

アメリカの作家。フレデリック・ダネイ(1905‐82)とマンフレッド・B・リー(1905‐71)の、いとこ同士による合同ペンネーム。1929年、出版社のコンテストに投じた長編『ローマ帽子の謎』でデビュー。同書を第一作とする〈国名シリーズ〉と、当初はバーナビー・ロス名義で発表されたドルリー・レーン四部作でミステリ界に不動の地位を得る。その後も作者と同名の名探偵が活躍する傑作をいくつも著し、ダネイは雑誌〈エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン〉で多数の作家を世に送り出したほか、ミステリ研究者、アンソロジストとしても功績を残した。「アメリカの推理小説そのもの」と評された、巨匠中の巨匠である。

同上

 クイーンはカドカワ文庫とハヤカワ文庫の越前俊哉氏訳でほとんど読んでしまっているのですが。
(その辺りは以前書いた記事、「『境界の扉 日本カシドリの秘密』初読感想文」と「越前敏弥著『訳者あとがき選集 』初読感想文」で詳しくお話ししています。よかったら。)

 創元推理文庫でも近年クイーンの新訳版が続々出版されているのであえてリクエストしなくても。と思ったのですが。

 一冊だけ。


 「間違いの悲劇」 飯城勇三 訳

『オセロー』をミステリ風に脚色すべく、ハリウッドでシェークスピア漬けの毎日を送っていたエラリーは、ロス警察のペルツ警部補を訪ねた折、モーナ・リッチモンドの訃報に接する。死の現場は『ハムレット』の舞台と同じ名で呼ばれるエルシノア城。サイレント時代に一世を風靡し巨富を築いた女優モーナの、隠棲の地であった。この怪死事件に幕を開けた城を繞る悲劇に翻弄され、シェークスピアの呪縛に苦悩する名探偵。終幕に待ち受ける、本格ミステリの精神に満ちた真相とは?――巨匠エラリー・クイーンが遺した精細なシノプシス「間違いの悲劇」に、単行本未収録の7編を併せ収める。巻末エッセイ=有栖川有栖/訳者あとがき=飯城勇三

同上

 ホームズやポアロと並ぶ名探偵エラリー・クイーン。
 彼の名前は、推理小説を読まない人でもきっと一度は耳にしたことがあるのでは? 
 特に彼の活躍する国名シリーズが有名で、とても面白いのですが。
(デビュー作『ローマ帽子の秘密』とか、バナーの写真の『ギリシャ棺の謎』とか。「秘密」か「謎」かは訳者によるのかな?)

 後にライツヴィルという架空の町が舞台のシリーズがあります。
 それもかなり好きで。
 そのライツヴィルものが一つ、この短編集に入っているらしいです。

 気に入ったものは全部読みたい面倒な性格なので。

 ぜひ復刊を。


3 イーデン・フィルポッツの

 1862年インド生まれ。イギリス本国で教育をうけ、事務員などを経て文筆の道に入る。数多くの推理小説、田園小説、戯曲、詩作を発表。わけても『赤毛のレドメイン家』は、江戸川乱歩がその読書体験を「万華鏡」に譬えて絶賛し、探偵小説ベスト10の第1位に選ばれたことで名高い傑作である。その他の作品に『闇からの声』、『溺死人』など。1960年没。

同上

 フィルポッツは。
 創作を始めたばかりのクリスティに、助言をした人だとか。
 それを聞いて読んでみたいなと。

 例によって探しましたとも。

『赤毛のレドメイン家』『だれがコマドリを殺したのか?』『闇からの声』あたりは古本屋さんと図書館で見つけて読みました。
(最近復刊してますね。嬉しいです。)

 イギリス本国では推理小説よりも田園小説で知られていると聞きました。
 そのせいでしょうか。不思議な味わいがあるというか。単純に謎解きだけではない魅力を持っていて。
 犯人の性格とか考え方もなかなか複雑で興味深く、一筋縄ではいかない面白さがあります。

 先日読んだ短編集『孔雀屋敷』は。
 幻想的な物語とか、異常な執着心からの奇妙な犯罪とか、物語の内容もバラエティに富んでいました。中には乱歩やクイーンが編集した短編集に選ばれたものなどもあってもちろん謎解きも素晴らしく。


 私の復刊希望は以下の二冊。

 『灰色の部屋』 橋本福夫 訳

 過去に二人の人間が不可解な死を遂げていた「灰色の部屋」。そしてまた、部屋の謎に挑戦しようと一夜を過ごす者が……。『赤毛のレドメイン家』の巨匠が描く、戦慄の謎!

同上

 『溺死人』 橋本福夫 訳

海岸で発見された男の溺死体。その死因に疑問を抱いた医師メレディスは、友人の警察署長の許しを得て独自の捜査に乗り出す。『赤毛のレドメイン家』の巨匠が贈る傑作長編。

同上

 どちらも面白そうなのですが。
 特に傑作長編と言われる『溺死人』を。

 でもやっぱり両方を。
 復刊お願いします。


4 アントニイ・バークリーの

1893年イギリスのハートフォードシャー生まれ。第一次世界大戦に従軍後、ユーモア作家として〈パンチ〉誌で活躍。「?」名義で『レイトン・コートの謎』を著して以降、『毒入りチョコレート事件』『第二の銃声』『ジャンピング・ジェニイ』など、従来の探偵小説に対する批判を織り交ぜた実験精神あふれる作品を発表。英国本格ミステリ黄金期を代表する作家としてその地位を不動のものとした。他の作品に、フランシス・アイルズ名義で発表したサスペンス『殺意』『レディに捧げる殺人物語』などがある。1971年没。

同上

 一つの事件に対し、複数人の推理が展開されることで有名な『毒入りチョコレート事件』の作者です。
 こちらは比較的(あくまでも比較的)早く入手して読了済み。
 幾通りもの推理が展開されるのですが、後の推理が前の推理を否定し続けるスタイルだったはず。(かなり昔に読んだのでちょっと記憶が曖昧です。再読しようかな。)
 推理小説に対する強烈な皮肉になっていてとても面白かったです。

 そんなところもあって。
 バークリーは物語に対してちょっと斜に構えたような感じがしますが、迷探偵(迷ですよね)ロジャー・シェリンガムのキャラクターが明るくて、カラッとした読後感。たまにそれはちょっとどうかなと思うお話もありますが。面白いです。


 ロジャー・シェリンガムのシリーズは結構復刊してきていますが。
 私はアンブローズ・チタウィック氏が推理するお話も好きなので、そちらを復刊希望です。

 「試行錯誤」 鮎川信夫訳

 余命数か月と宣告されたトッドハンター氏は、残された期間に有益な殺人を犯そうという結論に達した。だが、生と死に関し異常な見解をもつ編集者や素人犯罪研究家……

同上

 「ピカデリーの殺人 」 真野明裕訳

 伯母と犯罪学と切手蒐集から成る人生に安住していたチタウィック氏が、たまさか訪れた午後のホテルで毒殺の現場に遭遇する。なんとも伯母さんというほかない被害者、そして……

同上


「ピカデリーの殺人 」は図書館の書庫から出してもらって読みました。
 とても面白かった記憶が。
 再読したいので復刊希望です。

「試行錯誤」は未読です。
 チタウイックシリーズとなっているのですが、あらすじからは彼がどんなふうに関係するのかわからないので気になります。
 良作の評判も聞くので。

 なんとか復刊を。

 ちなみにフランシス・アイルズ名義のものも読んでみたいなとは思っているのですが。
 怖そうで。
 でも読んで面白かったら(面白いとは思うのですが。)また全作品読みたくなってしまうでしょうし。

 まだ手を出せずにいます。
 


 以上。前編です。
 思いのほか長くなってしまったので後編は次回に。
 ジョン・ディクスン・カー(カーター・ディクスン)とS・S・ヴァン・ダインとドロシー・L・セイヤーズとF・W・クロフツを予定しています。

 海外物ばかりで、しかも古くてすみません。


 次回。
「東京創元社 復刊フェア2025」恒例Webアンケートのための未読感想文(後編)ジョン・ディクスン・カー(カーター・ディクスン)とS・S・ヴァン・ダインとドロシー・L・セイヤーズとF・W・クロフツと。

 2025年2月4日公開予定。

 本当は2月からクリスティー再読感想文を始めるつもりだったのですが。
 一週遅れの予定です。たぶん。




#海外文学のススメ

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