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【詩】都会の星

躊躇うという感情。こんなにも鍵穴の形をじっと見ていたことなんて、いままでなら、ありえなかったかもしれない。煤けたみたいな色をした新宿駅に夜がやってくるように、公団住宅にも、白夜じゃない夜がやってくる。僕がこうして昼間中、ずっと仕事をして、燃料を補充するように食事をして、夜、魂を一旦放棄するように眠りにつく以前、それは僕が、人間じゃなかったころのことだけれど、僕は瞬いても瞬いても消えない星で、けれどもいつの間にか落下して、肌色の肉体を持っていた。礫みたいに転がって腰を打って、初めて痛さを知った。神、、、。(って言っても一度もそれを実際に見たことはないけれど)。そんな仕打ちをしなくても僕はよく知っているんだ。僕にこれといった居場所なんてないこと。開いた扉の先に、今日もきみがいた。あの頃と同じ、胎児のように丸まったまま眠っていて、それでも夜の数だけ、僕たちは、一度人間になったのに、ふたたび、少しずつ、人間から遠退いてゆく。

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