【詩】満月

布団のなかでひとり蹲って、丸くなっていることしかできない、できないけれど、そのあいだだけ、欠けることのない満月にだってなれるんだと思った、月と違ってわたし自身が光ることなんてないけれど、月だって本当は月自身が光っているわけではないから、わたしはわたし以外の誰かが、わたしを照らしてくれることをどうしようもなく望んでいて、胎児のように丸まっている、いきなりすべてが浄化されたみたいに透明感を増して、綺麗になりたい、そうずっと願っていて、けれども、布団を被って、埃で目から涙が出て、目元を擦ると赤くなって、からだの中心から侵食されるように腐っていくみたいなわたしは、きっとどこも綺麗なんかじゃなかった、きっとどこも詩的なんかじゃなかった。
でも、人間は尊くて美しいものなのだと相場が決まっているから、多くの人が真面目な顔をしてそう言い張るから、ねえ、ただ見惚れるようにわたしのことだけをじっと見つめていてよ、月を眺めるみたいに。夜、咽び泣くようにずっと丸まっているから、日が昇るまでのあいだ、きみは永遠に欠けない満月なんだ、ってわたしの目の前で、誰かに言って欲しかった。


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