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『幸福寿命』 <第2部>幸福はどこにある?
介護のチームリーダーやマネジャーにお勧めの本を紹介します。
『幸福革命 ホルモンと腸内細菌が導く100年人生』(伊藤裕 著・朝日新聞出版)
今回の記事では、介護のチームリーダー向けに、本書の転用方法について、三部構成で考察しています。今回は第2部「幸福はどこにある?」
2部:幸福はどこにある?
3部:医療アプローチと生活アプローチ
前回は、”幸福寿命”の概念を使って、「死ぬまで健康に」から「死ぬまでしあわせに」へパラダイムシフトししようと書きました。
#まだ読んでない方は、先に読んで〜
第2部では、『幸福寿命』を読み解きながら、幸福はどこにあるのか?を考察します。
”幸福”は”あいだ”にある
いきなり、結論です。
幸福は”あいだ”にあります。
これが、この本の中心概念です。
世の中は、決して”ひと塊”ではできていない。別々のものがたくさんある。そして、別々の二つがあるから、そこに「あいだ」がある。この「あいだ」を埋めようとする境地が「不二」であり、そこからは「遊び」の軽やかな気持ち、すなわち「幸福」が生まれるのです。
生と死
生と死は、全く別のものです。
しかし、生と死は連続したものであり、完全に別のものとは言い切れないという意味では、一体であると言えます。
このように、ふたつに見えるけれども、対立関係ではなく、絶対的には一つであることを仏教用語で「不二(ふに)」と言います。
もしも死が存在しないとしたら、私たちは幸福を感じることができるでしょうか。
死があるから、生を楽しむ、幸福を追求するのです。
よく「一生に一度は○○したい」と言いますね。
これは、生の先にある死を意識しているからこそ、生まれる希望です。
もしも死がなければ、私たちが○○したいという希望を持つこともないのかもしれません。
生と死があるからこそ、その”あいだ”に、幸福を見出すのです。
時間
”時”でも意味は通じますが、私たちは”時間”という言葉を使います。
時と時の“あいだ”
“今”は過去と未来の”あいだ”にあります。
「今を大切に」とよく言いますが、過去と未来の間を”今”とするならば、”今”とはとても短い瞬間です。
幸福は”あいだ”にあります。
つまり、過去と未来の”あいだ”の”今”にこそ、幸福は存在するのです。
逆説的になりますが、今を実感するには過去と未来が必要ということになります。
お年寄りが、過去を懐かしみつつ、未来への不安を忘れて、幸福感に浸るのも”今”
結婚式前夜に、今日までの過去から、明日からはじまる未来の新しい生活を思い浮かべ、幸福を感じるのも”今”
このように、幸福を感じるのは”今”です。
時間軸において、「幸福」は”過去”と”未来”の「あいだ」に存在します。
短期記憶の低下した認知症のある人が、幸福を感じるためにも、”過去”と”未来”が必要です。
短期記憶が低下すると、直近の過去を思い出しにくくなります。
過去の記憶がなければ、幸福を感じることができません。
そこで、その人が保持している過去にまで遡るのです。
人によっては、10年前の記憶かもしれないし、学生時代まで遡るかもしれません。
過去を取り戻すことができれば、未来との”あいだ”をつくることができます。
そして、その”あいだ”に「幸福」を見出すのです。
認知症のある人にとって、回想法などで、過去を想起することは、見失った過去を取り戻し、未来との”あいだ”を作り出して、幸福を生み出すプロセスといえます。
人間
時間と同じく、「人」でも意味は通じるのに「人間」という言葉があります。
一人の人間は、一つ一つの小さな細胞の集合体です。
細胞が集まって臓器を作り、さまざまな臓器や器官が集まって、一人の人間を形成しています。
このように、一人の人間にも、細胞と細胞の”あいだ”、器官と器官の”あいだ”が存在しています。
医療の世界では、人間を細胞レベルで分析し、病気の治療や薬の開発に当たっています。
今回のnoteでは、一人の人間を形作る細胞や器官の”あいだ”へ作用して、人間の幸福を追求することを”医療アプローチ”と呼ぶことにします。
細胞の集まりが、一人の人間を作っています。
さらに、その人間が集まって形成されるのを社会・コミュニティといいます。
人間はひとりでは生きていけません。
人間同士が集まって「社会」を形成し、お互いに協力しあって、今日まで生きのびてきました。
社会は、人と人との集まりであり、そこに「あいだ」が存在します。
もし、社会すなわち”あいだ”が存在せず、一人で他の生物との関わりがないまま生きているとしたら、人間が「幸福」を感じることはないでしょう。
「幸福」は「あいだ」に存在するからです。
確かに、人間関係はトラブルや不安の温床になることがあります。
たまには「一人になりたい」と思うこともあるでしょう。
この「一人になりたい」という感情も、人同士の「あいだ」(=社会)を意識した発想です。
一人になったときに、ホッとして幸福を感じるのも、人との”あいだ”を意識しているからなのです。
幸福は人と人との「あいだ」に存在しますが、このように、「幸福」を感じるのは、必ずしも誰かと一緒にいるときとは限りません。一人でいても、他者の存在を感じ、”あいだ”を実感するからこそ、幸福を感じるのです。
この記事では、人と人との”あいだ”に作用し、幸福を追求することを、”生活アプローチ”と呼ぶことにします。
本書の著者は、内科学が専門の伊藤裕さんです。
サブタイトル「ホルモンと腸内細菌が導く100年人生」にあるように本書の後半では、幸福寿命を伸ばすための医療アプローチがたくさん紹介されています。
ホルモンや腸内細菌の働きを、丁寧にわかりやすく解説してあり、私にとってはじめて知ることばかりで、大変勉強になりました。自身の幸福感を満たすためにも、ぜひ本書を手にとっていただきたいと思います。
次回の<第3部>では、幸福寿命を伸ばすための医療アプローチを簡単に紹介したうえで(詳細は本を読んでください!)、ケアの視点で、どのように生活アプローチを実践すると幸福寿命に影響するのか、考察していきます。
それでは、次回の更新をお楽しみに。
ありがとうございました。
立崎直樹
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