【読書】その時々で何者にでもなれる〜鎌倉うずまき案内所
先日「お探し物は図書室で」を読み、本著者2冊目にこの「鎌倉うずまき案内所」を選びました。
前回の「図書室で」と同じく、人生に何か行き詰まりを感じる人たちがオムニバス形式で登場する。
違うのは、SF要素があること。突如現れた案内所に引き込まれ、アンモナイトからテレパシーで言葉が伝授される。お土産の「困った時の渦巻きキャンディ」は、その後登場人物たちが何か行動を起こしかけた時に不思議な力を貸してくれる。
正直、私はSF要素が苦手だ…
惰性で読んでいたが、途中からこの本のとてつもない面白さに気づく。
章ごとに時間が巻き戻され、登場人物が絡み合っていき、それぞれの原点や繋がり、過去に気づいていくのだ。
平成では人気小説家が、昭和ではまだ文芸誌に応募を続ける下積みライターだったり、もっと前は1度の応募で賞を取った友人に嫉妬する少女だったり…
結婚に迷う女性を占い助言した占い師は、以前は小売商店の店主で、占いを勉強し始めた描写が後の章で出てきたり…
人は、今の自分が全てではなく、その時の興味によって何でもできるし何者にでもなれる、ということなのかな〜と思いました。
消費税がない時代、3%、5%、8%、10%と変化してきた時の社会の様子や、その時々の流行、「笑っていいとも!」が終わる頃…などなど、それぞれの時代のほんの一部に触れられるのもこの小説の面白さでした。