立川談春は上級者向け
久しぶりに落語を観に行った。
評判の高い立川談春だ。
席に着くと、前の70代位の「オッサン」が隣の50代位の男性に落語通ぶった講釈を垂れていた。
講釈といっても「この名前は発音しにくい」等の何の為にもならない下らない話だ。
隣の男性は「はい、はい」と聞いていて、その隣の60代位の女性に通訳?みたいに話しかけていた。
どうやら3人で観に来たようだ。
年代もマチマチだし仲良さそうには見えなかった。
何の知り合いだろうか?
一通り話し終わると「こんなにいい席が取れたんだから、これ」
とチケットの写真を見せつけた。
(うわ!ここでそんな請求する⁉️)とビックリした。
他の二人には寝耳に水だったようだ。
恐らく「チケット取れたけど行く人いないからどう?」とタダのように誘い出したのだろう。
「え?今?」
「今じゃなくてもいいから、後でもいいよ。手数料もかかっているからよく見て」
それきり他の二人は黙り込んでスマホを見ていた。
タダだと思ったから、ウザイ「オッサン」の話を愛想で聞いていたのだ。
騙し討ちのようにここで料金を請求されるなら話したくもないよね。
ウザイ上にセコイ!
だから「オッサン」は嫌いなんだよ。
他人事だがムカムカした。
電車に乗っていると女性の近くに寄っていくタイプだろう。
前置きが長くなったが、幕が上がると談春の圧倒的な話術で魅了された。
時事ネタ、世相ネタ、内輪ネタ、落語とテンポ良く進んでいき笑いっぱなしだった。
「今の若いモノは〜」「今の女は〜」と老若男女にウケる鉄板ネタをやっていても、
「私のお爺ちゃんお婆ちゃんの代が戦ってくれて、まあ負けちゃったけど、
お父さんお母さんが戦後に頑張ってくれてジャパン・アズ・ナンバーワンとか言われて、私たちがそれを引き継いできたのに、今の若いもんは何も考えていないなんて情けない」
と深いのだ。
「ベ平連とか中ピ連とか上野千鶴子はその頃はいたと思うけど、セクハラパワハラ言われたら何も言えない」
私はフェミニストなので、ウーマンリブの歴史は知っているけど、
普通の良識あるほとんどの日本人は興味ないはずだ。
何でそんなに詳しいの⁉️あなただってその世代じゃないのに。
そんじょそこらのフェミニストよりよほど勉強してるじゃん!
と大笑いした。
スゴイ!
今まで観てきた落語の中で、一番だ。
スピードが速くて一瞬も飽きさせなかった。
しかし、観客は大笑いしているのが6割で4割はポカンとしていた。
落語好きでなおかつ時事や昔の言い回しを知らないと、何を言ってるかわからないだろう。
「笑点」のような分かりやすいアットホームな笑いはない。
事実、前の「オッサン」は途中で隣の男性にもたれかかって寝てしまった。
うえ、男性お気の毒。
さっきの講釈は何だったんだよ!
結局前の三人組はクスリとも笑わなかった。
18時半〜21時、途中15分の休憩を挟んで最高の時間を過ごせた。
面白いのも良いけど、料金が安い。
談春は幕が下りきるまで頭を下げて観客を見送っていた。
その人柄にまた感じ入った。
また来るね。
ありがとうございました。