教科書の物語は、未来の自分のための扉 #教科書で出会った物語
すてきな企画を見つけたのは、数日前のこと。
国語の先生として働いている私。是非とも参加したい!と思ったものの、ひとつ懸念がありました。
それは……読んだ本の記憶がすぐに消えていってしまうということ……。
これは幼稚園、小学校のときからのことで、「思い出の絵本」だとか「教科書作品の懐かしトーク」だとか、周りとぜんっぜんできなかった大学時代……
そんな私ですか、これをキッカケに記憶の海に飛び込んで、なにか思い出を見つけてみたいな、と一念発起。
ようやく思い出したのは……
校庭で友達と手を繋いで、笑いながら「かげおくり」をした景色。
そうです、「ちいちゃんのかげおくり」です。
15年越しに感じる「平和への祈り」
とはいったものの、例の如く細かい内容は自分の中に残っておらず、「戦争の話」「悲しい話」「ちいちゃんが死んでしまう話」レベルのことしか覚えてない。まったくもう……
そこでなんとなく、隣にいた夫に「ちいちゃんのかげおくりってさ〜」と話しかけるとすぐさまこう返してきました。
「なぁんだ、みんな、こんなところにいたのね」
あっっっ。
なんか…なんとなく覚えている!気がする。
教科書の挿絵がぼやーっとだけど、私の中に広がります。
そして、私の中に残っていたわずかなピースと夫の一言で、ちいちゃんが会った「みんな」が誰なのか。「こんなところ」ってどこなのか。それが想像できてしまって、胸がぎゅっっっと締め付けられました。
いやいやいやいやいや
泣いちゃうんだが?????
(唐揚げ屋の店先で感極まる2児の母)
ちいちゃんがかげおくりをした同じ空の下で、笑い合いながらかげおくりをした私たち。
なににも囚われず、なにも恐れず、ただただ無邪気にかげおくりを楽しんだ小学生だった私たち。
それってなんて、幸せで、平和で、ありがたいことなんだろうと感じずにはいられません。
教科書のお話は、今と未来をつなげる道
私の記憶の中の「ちいちゃんのかげおくり」の授業は、「クラスのみんなで楽しくかげおくりをしたおはなし」として残っていました。
「いやそれってどうなの?」「授業ちゃんと聞けよ…」と最初は正直、自分で自分にツッコミを入れたけれど……笑
小学生なんて、それでもいいのかもなーって。
だってこうして、「かげおくりをした」という思い出は記憶喪失な私のなかにひっかかって残っていて、31歳の私の心をこうやって揺らすんだから。
教科書の作品って、そういうものな気がしたんです。心のどこかでひっかかって、芽が出て膨らんで、そのときがきたら、私になにかを訴えかけてくる。
教科書の作品って、その道筋を、たくさんたくさん、つけてくれるものなんじゃないかなって思うのです。
戦争教材と、2児の母と、小学生の私
わかりやすいところでていくと、2人の男の子の母になってから、中学校の戦争教材を涙なしには読めなくなってしまいました。これも露骨に、心境の変化ですよね。
全国のママ先生たち、どうやって範読してるの?私は読めない……
光村図書の中学国語に載っているところでいうと、「字のない葉書」「大人になれなかった弟たちへ」。「字のない葉書」も、家で泣いたし、「大人になれなかった弟たち」に至っては職員室でこっそり泣きました。
自分が男の子2人の母親なのもあって、本当に悲しくなってしまう。こどもは、ニコニコ笑ってお腹いっぱい食べて、なんの心配もなくたくさん眠って大きくなる以外のことないんだよ本当に。
そんな、「当たり前が当たり前としてそこにある」ことの尊さなんて、小中学生の私には到底理解できなかったでしょう。
頭では「わかる」し、読むこともできるけど、心で「わかる」のは、なかなか大変なことよ。
でも、それでいい。
ちょっとずつで、いいのよね。
教科書の物語って、なんて素敵なんだろう
「ちいちゃんのかげおくり」も、今読んだら、涙なしには読めないでしょう。
けれど、私がこれから「ちいちゃんのかげおくり」を再度手に取るとしたら、それは「教科書で読んだことがあるから」に他なりません。
私たちに種を蒔いて、いつでもそこで待っていてくれる。教科書のお話の、おもしろさ、たのしさです。
いま国語の教科書を使って勉強している人たちからしたら、もしかして「難しすぎる」とか「なんでこれ読まないといけないの?」「興味ない」と、思うようなものも、あるかもしれません。
本なら自分で選んで読むよ。そっちのほうが、面白い本に出会える!と思う子もいるかもしれません(私はそういうタイプでした)
今はよくわからなくても、いいのです。
未来の自分が再びその扉を開くときが来た時に、きっと違う自分に出会えると思うから。
余談
「思い出」を書かないといけないから!と思い、調べないまま最後まで記事を書いてから15年以上ぶりに「ちいちゃんのかげおくり」を読みました。
泣いた……笑
衝撃的だったのが、ラスト。
ちいちゃんがかげおくりをした場所が公園になっていて、子どもたちが青空の下でキャッキャと遊んでいる…というところ……。
小学生だった私たちが、青空の下でキャッキャとかげおくりした記憶とリンクして、余計に泣いてしまいました。
担任の先生、ここを踏まえて最後にかげおくりを校庭でやらせたのかな?!当時は楽しく遊んだ〜!って感覚で終わりだったけど、今思うとすごいな😭
そして、完全に忘れてたというか全く意識してなかったところとしては、作者があまんきみこさんだったということ!
教育実習で「きつねのおきゃくさま」をやったので覚えておりました😂(比較的新しい記憶なので、ちょっと考えたら内容も思い出せた!笑)
教科書の物語って素敵〜!なんて言っておきながらこんな調子ですみません。教科書は、日々のお仕事の相棒です。ほんとうです。
ぜひみなさんも、教科書の思い出を辿ってみてください☺️企画のリンクはこちらから💁🏻♀️❤️