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お金の話〜七宝焼業界に入って思ったこと

こんにちは。
七宝焼窯元・太田七宝六代目satsuki*です。

ゲスいタイトルですみません(笑)

この話を書きたいなと思ったきっかけは私の推しYouTube「ロザンの楽屋


話が逸れちゃうんですけど、私が初めて会話した芸能人がロザンです。
中学生の頃、友達と宝塚に行く途中、ちょっとでも安く行こうとJR大阪駅で阪急の梅田駅に乗り換えしようとしたらあの短距離で迷子になり…
困ってるところを、ロケしていたロザンのおふたりに助けてもらいました。放送されてたとしたら、これが私のテレビデビュー(笑)
関西ローカルらしくて愛知では見れなかったけど。

それからずーっとロザンのファン!ってわけじゃないけど、なんとなく気になる存在になってしまって、YouTubeもたぶんほぼ全部見てる(笑)
もうファンなのかもしれない…

価格=需要×供給×技術力

本題です。
そもそも七宝焼ってどうやって値段決めてるの?

春のブローチ「sakura」

他の職人さんはわかりませんが、私は主に制作にかかった時間を元に決めています。

例えば今作っている作品たちが年末から取り掛かって2ヶ月経ち、ようやく全て完成しようとしています。
作業効率を上げるために、複数点を一緒に作っていくことが多く、今回は10点。

時給をざっくり1000円、1日8時間実働、週休2日として
1000×8×40(日)=320000円
1点あたり32000円
製造業の平均人件費率が10〜50%なので、最大の50%計算で
32000÷0.5=64000円

ただ、私の作品たちを見てもらうと分かるように、そのままこの値段はつけません。というかつけられません…

実際には人件費の他にも材料費、設備費がかかるし、売るためのコスト、ネットショップの準備や販売手数料、ラッピング代などなど…
他にもたくさんのコストがかかるのに、人件費すら出ない値段になってしまうのはなぜなのか。

まず第一に、私の技術がまだまだ発展途上であると私自身が感じていること。

施釉の途中



もちろん今の私にできる精一杯を注ぎ込んだ作品たちです。自信を持って世に出してる。
でもきっと、1年後、5年後の私が今の作品を見たら、未熟だと感じるでしょう。
実際、今の私が5年前の作品を見てもそう思うし、そうでないと今後成長もできない。

でもこれは私自身の伸びしろです。
一人前になるのに10年かかると言われる世界。
これからもっと技術が伸びて、もっといいものが作れるようになった時、きちんと利益が出る値段をつけられるようになる。
そうなるまでは、先生と相談しながら技術に見合う値段をつけるつもりです。


第二に、そこまでの値段を出して買いたい!と思って貰えるほどの需要がない。

春のブローチ「mimosa」



私自身の知名度、七宝焼の知名度、その七宝焼を求める人(需要)を鑑みると、そこまでの値段がつけられない。

買う人がいなければ、作る意味が無い、とまでは言いませんが、作っても売れなければ、収入にはなりません。収入がないと材料も買えない。

作りたいものが作れない。それがクリエイターにとっていちばん苦しいことです。
作りたいものを作り続けるために、売れるものを作る。売れたら好きなものを作る。その繰り返しで生きています。

ハンドメイド作品の価格設定


七宝焼は芸術であると同時に、私にとっては稼業です。生活がかかってる。
これは七宝焼に限らず、多くのハンドメイド作家さんにも言えることですが、趣味としての作品作りと仕事としての作品作りのバランスがすごく難しい。

厄介なのは、本当に趣味でハンドメイドを楽しんでいる層が一定数いて、どう見ても技術は素晴らしいのに材料費に色をつけたような値段で売る人がいる。
かく言う私も本業は七宝焼の職人ですが、実は七宝焼を始める前から趣味でハンドメイド作家をしています。

趣味の方よく出ているマルシェ



20年前、まだハンドメイドマルシェも一般的でない頃、安くていいものが近所のフリマで売られてる程度ならそんなに影響はなかったと思います。

しかし今はフリマアプリやハンドメイド専門サイトも多く、誰でも簡単に売り買いができるから、より顕著に影響が出てしまいます。

趣味でやってる人が安く売る気持ちも分かる。趣味なら売れた方が楽しいから。でもクオリティが高いのに、安く売ってしまってはその人の自身の首も他の人の首も同時に絞めることになる。
だからこそ、趣味であっても仕事であっても、作品の値段は慎重につけています。

手間がかかる分だけ、きちんと評価されて正しい価格で流通する
そういう業界になるように、私が流れを作るぞ!くらいの気持ちで取り組んでいきたいです。

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