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【将棋】プロ棋士の強さは相対的に数値化して表記した方が分かりやすいと思う件

藤井二冠、最速なら2023年に名人位挑戦か

藤井二冠の登場によって将棋界に再び光が当てられた。ただ若年というだけでなく、他の追随を許さない読みの速さに裏付けされた強さを兼ね備えていたからだ。自分が見るに、いまや藤井二冠と五分五分かそれ以上の勝負ができるプロ棋士は数えられるほどしかいないように思う。有力候補としては、豊島竜王や永瀬王座といったタイトルホルダーが犇めいている名人戦・順位戦の頂点たるA級棋士10名、そして渡辺名人くらいだろう。

デビュー当初こそ「いつプロの壁にぶち当たるのだろう?」と思っていたけれども、その勢いはとどまる所を知らない。タイトルを2つ獲得し、2021年3月、第79期名人戦・順位戦B級2組を10戦全勝し、B級1組に昇級した。B級1組を昇級するとA級となり、そこで名人への挑戦権を巡って死のリーグ戦を戦うことになる。早ければ2023年に時の名人に挑戦する姿が見られるだろう。ひとまず5月13日に行われる第80期名人戦・順位戦B級1組開幕戦、藤井二冠vs三浦九段戦に注目だ。

段位では現時点の棋力が分からないので、プロはイロレーティングも併記して欲しい

しかしながら、気になることがある。4年連続で年間勝率8割超えを達成した藤井二冠に白星を献上している先輩プロ棋士の現状を見るに、藤井二冠が現れるまで彼らは本当に質の高いプロの将棋を指していたのか?手抜きをしていたのではないか?と疑問に思えてくるのだ。

プロ棋士は一定の勝ち星を積み上げると昇段していくのに対して、降段するというシステムがない。言い換えれば、いくら勝率が悪かろうとも長年プロ棋士を続けていればいつかは昇段に手が届くという積算的な評価方法を採っている。加齢による衰えを加味すれば、高段ベテランプロ棋士は段位と棋力がより離れていく傾向にある。

棋譜を買っている客の立場からすれば、できれば強い者同士が激突する勝負を重点的に見たい。でも、段位がそれ相応の棋力を表しておらず、対戦カードを見ても良い勝負になりそうかどうか判断がつかない。これが段位制の難点だ。将棋に興味を持っていない人なら尚更分からないだろう。

だからこそ、インターネット将棋でよく導入されているイロレーティングを公式で採用し、段位と直近の棋力を数値化した ”レート” を併記して欲しいと個人的には思っている。イロレーティングは、簡単に言えば1500を基準点として一戦ごとに勝利すれば加点、敗北すれば減点していく変動システムだ。変動するレートは対戦する両者のレート差⊿Rによって決まり、これによって相対的な棋力の評価がなされる。以下に具体例を示そう。

レートが高い方を上位者、低い方を下位者と呼ぶことにすると

勝率の指標(レート差⊿R)

⊿R=  0 ⇒ 勝率は両者共に50%
⊿R=100 ⇒ 勝率は上位者64%・下位者36%
⊿R=200 ⇒ 勝率は上位者76%・下位者24%
⊿R=300 ⇒ 勝率は上位者85%・下位者15%
⊿R=400 ⇒ 勝率は上位者91%・下位者 9%

オンライン将棋対局場でのレート変動は以下の通り
⊿R=  0 ⇒ 勝者+16、敗者-16

⊿R=200 ⇒ 上位者勝利+ 8、下位者敗北- 8
         上位者敗北-24、下位者勝利+24

⊿R≧400 ⇒ 上位者勝利+ 1、下位者敗北- 1
         上位者敗北-31、下位者勝利+31

さて、非公式ではあるが順位戦別のプロ棋士のレートを算出しているサイトがあるので興味があれば、下記リンクを参照されたい。

レートが1750を超えている棋士は安定してハイクオリティな将棋を指しているものと自分は見ている。藤井二冠のレートはぶっちぎりの1位で2021年4月29日現在で2024と唯一人2000の大台に乗っている。本来ならA級に在籍していない方がおかしいレートであることからして、来期のB級1組で昇級することが期待される。2位の渡辺名人は1943と80ほど差をつけられている。

このデータを全面的に信用するとしよう。藤井二冠と渡辺名人が対戦した場合の勝率は上記の指標からすると60%対40%くらいになるし、それ以上にレート差⊿Rがある棋士との対戦では藤井二冠の勝率は更に上がるものと予想される。実際に数値通りの勝敗になるとは限らないが、現時点におけるプロ棋士の強さを相対的に数値化したレートを見比べた方が一般人にとっては分かりやすい気がする。

このままのレートで推移したとすると、レートの数値通り2024年頃には藤井二冠はタイトルの独占に挑戦しているかもしれない……。

タイトル独占にまつわる将棋界のドラマとか

タイトル独占で思い出すのは第44期王将戦だろう。1995年1月17日、阪神大震災が発生した。神戸出身で被災した谷川王将は時の羽生六冠の挑戦を受けて立つこととなり、世間は「羽生、初の七冠独占なるか!?」と大いに注目した。プロ棋士からすれば、自分以外がタイトルを独占するのは面白くないし、屈辱でもある。そういった背景もありつつ、谷川王将は羽生六冠との王将防衛戦に臨んだのであった。

勝負は両者3勝3敗とお互いに譲らず、最終第7局までもつれた。千日手指直しが入った激闘の末、最後の最後に谷川王将が勝って見事 ”王将” を防衛し、被災地・神戸を勇気づけたのはとてもドラマティックであった(翌年、羽生六冠は保持したタイトルを全て防衛し、王将を奪取して七冠を達成した)。

ちなみに「がんばろうKOBE」を合言葉に戦ったイチローを擁するオリックスもこの年優勝している。戦う理由、勝ちたい理由が明確にある時、人やチームには別次元の力が宿るのかもしれない。

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