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【化学】ノーベル化学賞候補?「光触媒」——酸化チタンって何なん?

光触媒の代表的存在に酸化チタン(TiO2)というものがある。例えば、日焼け止めや白い絵の具、白粉(おしろい)、FRISKガムの着色剤など日常生活を支える意外と身近な物質で、陶芸ショップ等で数百円程度で手に入る。

基本的に人体に対して無害とは言われているものの、水中毒と同じように大量に体内に入れないことが前提だ。

さて、酸化チタンの特性「光触媒」というのは非常に都合が良いもので、光をエネルギー源にしてそれを太陽電池や自然防汚などに役立てられるのだ。

太陽電池への応用

まず最初は、太陽電池の材料として使う方法が考えられた。実はシリコン型太陽電池のシリコンのように、酸化チタンも太陽光を電気に変換することができる半導体の1つだ。しかし残念なことに、酸化チタン単体だと太陽光の(紫外領域の)ほんの一部しかエネルギーとして取り出せない。ロスが大きすぎて発電目的には向かないのだ。加えて、酸化チタンはアナターゼ型の結晶構造を持つものでないと光触媒機能が上手く働かない縛りもある。

とはいえ、酸化チタンは太陽電池に全然使えないわけではない。1991年に発表された有機色素を使った太陽電池(グレッツェルセル)では電子キャッチャー材料として使用されている。ここでの酸化チタンは太陽光によって発生した電子をキャッチし、回路を一周させて電気を得る整流を促す役目を担っている。こうなると、もはや光触媒として使っているわけではなくなるのだが……適材適所と言うヤツだろう。

自然防汚としての応用

酸化チタンの太陽電池以外の使い道として、壁やガラス等にこびりついた汚れ(主に有機物)を分解するのに使えないか?と考えられた。雨☔が降ればその分解した汚れを勝手に洗い流してくれるし、殺菌や消臭など様々な効果も見込める。要は、掃除する必要が無いのだ。しかも、酸化チタン自身は変化も劣化もしないから、半永久的に効果が持続する。

水と太陽光と光触媒を使って水素を生産するのが理想

実は、冒頭のニュースに登場している藤嶋氏は、酸化チタンに光を当てると水を酸素と水素とに分解することができる「本多-藤嶋効果」を1972年に発見・報告している凄い方だ。この場合は、光を水の分解エネルギーとして使っている。

一見すると、光と水だけで酸素と水素を生みだす夢のような研究成果だろう。しかし、それから50年近く経過した現在、トヨタや大阪ガスが先陣を切る形で水素を自動車のエネルギー源に使おうという世の中になっても、酸化チタンは水素を生産するためのメジャーな材料として使われていない。

先述したように、酸化チタンは太陽光だけでは水を分解する能力が弱い。だからと言って、わざわざ高エネルギー光のブラックライトを使って無理やり光触媒効果を狙っても、エネルギー・環境・コスト面で負担がかかってしまって割に合わないのだろう。飽くまで理想は太陽光エネルギーだけで水素を生産することだし、酸化チタン以外でそれを実現する光触媒物質を作ったり発見すればノーベル賞も夢ではないだろう。

今は大したことはないかもしれないが、酸化チタンは安くて、ほぼ無害であるにもかかわらず、光触媒として様々な用途がある。エネルギーや環境問題の一助になりうる存在というのは確かなので、良かったら ”酸化チタンはすげぇぞ” っていうくらいの認識でいて頂けると幸いだ。

まとめ

酸化チタンは日常生活で知らず知らずのうちに使っているような物質でありながら一般的な認知度は意外と低い。科学分野では光触媒効果を利用して水素エネルギーや環境面で貢献することが大いに期待されている。「本多-藤嶋効果」が発見されて早くも半世紀ほど経ってしまったが、ノーベル化学賞は本当に受賞できるのだろうか?

( 'ω' ).。oO( ぶっちゃけリチウムイオン電池みたいに世界を一変させるような目に見える貢献をしてないと受賞は厳しい気がするんだけどもねぇ

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