【双裸玉】初夏の流眄。22.05.14.
初夏の流眄。
今回は双裸玉にしてはなかなか面白い序がみられる。
玉の狭い▲4四角か、角成の余地▲5三角か
初手2七に金駒を打つのでは左辺に逃げられて捕まらない。角を打つわけだが、▲4四角か角成の余地を残す▲5三角かで迷うところだ。実際、このナナメ一筋分の違いが天国と地獄を分ける。今回は角成よりも、玉の広狭が大きく作用するため▲4四角が限定打で正解。仮に▲5三角を選ぶと、以下の手順で九段目まで追い詰めることはできるものの、最後の最後で逆王手を食らってギリギリ詰まない。
▲5三角 ▽3七玉 ▲6四角成 ▽4六銀 ▲3八歩 ▽同 玉
▲6五馬 ▽4七銀打▲1六角 ▽4八玉 ▲6六馬 ▽5九玉
▲7七馬 ▽6八飛(逆王手)
その点、初手▲4四角を選べば九段目まで逃げても持駒の金駒で捕まえられる。このように、角は成れても利き一つ分だけ玉が広くなるために詰まなくなるのが詰将棋的で面白い。お次は▲4四角▽3七玉としてからの▲1五角の連続限定角打だ。▲2六角打だと▽4七玉と寄られて捨合の駒を拾えなくなるから離して打つ必要がある。▽2六歩のところ、▽4六玉と逃げる手は1五角が3三まで利いているために以下の手順で早詰となる。
▲1五角 ▽4六玉 ▲4七銀 ▽同 玉 ▲4八金 ▽5六玉
▲6六金 ▽4五玉 ▲5五金 ▽3六玉 ▲3七金 ▽2五玉
▲2六金 ▽1四玉 ▲2三銀 ▽同 玉 ▲3三角右成▽1三玉
▲1四歩 ▽同 玉 ▲1五金 ▽1三玉 ▲2二馬 まで25手早詰
この手順があるから作意手順のように捨合せざるを得ないのだ。では、▽2六歩の代わりに▽2六桂と逆王手するのはどうだろうか?しかし、これも最長25手の早詰となる。一例としては、
▲1五角 ▽2六桂 ▲同角右 ▽4六玉 ▲3五角上▽3七玉
▲2八銀 ▽4七玉 ▲4八歩 ▽同 玉 ▲6六角 ▽5七歩
▲同角左 ▽5八玉 ▲6八金 ▽4七玉 ▲4六金 ▽3八玉
▲3九歩 ▽4九玉 ▲5八銀 ▽5九玉 ▲6九金 まで25手早詰
この2つの手順から、4四角が意外と玉を狭めていることが分かる。
4四角の狭さ
初手▲4四角としたことがここ辺りできいてくる。作意9手目▲4八銀から▽5八玉と左辺へ逃げ出そうとしたとき、▲5九歩から▽6七玉は▲7七金で、▽6八玉は▲3五角上で、▽6九玉は▲5八銀以下それぞれ3~7手ほどの短い早詰になる。意外と4四角の守備力が強いのだ。残念ながら、玉は右辺へとお帰りいただこう。
詰将棋的な銀打からの二度の押し売り
作意15手目▲4三銀がいかにも詰将棋っぽい一手。▽同玉は▲3三金~▲5三角成以下の簡単な詰みなので▽2三玉と逃げるものの、▲3二銀不成と押し売りをはかる。これも▽同玉は▲3三金以下の簡単な詰みなので取ることはできない。
▲3五角上を挟んでから、再度銀の押し売り。成/不成に関わらず▽2一玉と逃げれば▲2二角成までの詰みなので、もうここは取るしかない。手順後半の面白いポイントは詰将棋的な銀打からの二度にわたる押し売りにある。
収束は歩を並べるだけで尻すぼみ的ではあるものの、序の捨合の歩が一歩千金となって最後に活きてくるのが良い。手順全体を振り返ってみよう。前半の連続限定角打、後半の銀打から二度にわたる押し売り、そして最後に捨合の歩が活きて収束する物語性を持った面白い双裸玉だったように思う。探索を続ければ、またこんな双裸玉に出合えるかもしれない。
スペシャルサンクス
窪田義行(空気から整えていく 環境派)峰王尊師:拙エレベーター詰に対して ”詐術的印象を与える” と迚も心温まる難癖を拝賜し、双裸玉を探索する契機を頂戴致しました