『虹』【匣月世理の創作小説 001】
大学生のころに書いた短編小説を少し手直ししたものです。
恥ずかしさもありますが、供養も兼ねてnoteに公開したいと思います。
『虹』(約4,300字)
――本がお好きなんですか?
思いがけなく話しかけられて、口から心臓が飛び出しそうになりました。幸いにも心臓は飛び出さなかったのですが、「はわあっ」というような間抜けな悲鳴をあげていました。
声のしたほうに振り向きますと、目の前に若いお姉さんが立っていて、優しそうな笑顔を浮かべています。本に夢中になっていた私は、すぐ