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SF×青春コメディ 森見登美彦の妄想炸裂【匣月世理のおすすめ小説 003】

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No.003 『四畳半神話大系』

著者は森見登美彦(もりみ・とみひこ)。
2003年に『太陽の塔』で第15回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、小説家デビュー。数多くの作品がアニメ化・映画化・舞台化され、直木賞や本屋大賞の候補にもなっている人気作家です。

私以外にもたくさんのファンが紹介されていると思うのですが、大学時代にハマって以来、ずっと追い続けている作家さんなので、二番煎じ(百番煎じくらいかも?)を承知で書かせていただきます!

今回おすすめする『四畳半神話大系』は2006年に出版され、第37回星雲賞日本長編部門参考候補に選ばれています。2010年にはフジテレビ系の「ノイタミナ」でアニメも放送されています。

あらすじ

入学前に想像していた薔薇色のキャンパスライフはいずこ、大学三回生の春を迎えた「私」は、同回生の悪友である「小津」に振り回され、恋人ができる気配もなければ、映画サークルを自主追放となり、大学と下宿を往復するだけの無意義な日々を送っている。

ある夜、下鴨神社の界隈に出没する屋台ラーメンを訪れた私は、同じ下宿の二階に住んでいる仙人じみた男に声を掛けられる。自らを神様と称する男が取りだした埃にまみれた帳面のページには、私と小津の名とともに、ある女性の名が記されていた。

「秋になれば、我々は出雲に集まって男女の縁を決める。君も知っているだろう。私が持って行く案件だけでも何百件にもなるが、そのうちの一つがこの問題だ。分かるね、どういうことか」
「分かりません」
「分からんか、思いのほか阿呆だな。つまり私は、君も知っているこの女性、明石さんの縁を誰かと結ぼうとしている」
 神様は言った。
「ようするに、貴君か、小津君かのどちらかだ」

森見登美彦『四畳半神話大系』角川文庫

「明石さん」は、私の一つ下の学年で、所属していた映画サークルの後輩にあたる。私と小津が二人で作った映画はサークル内で大いに不評を買ったが、唯一笑って「また阿呆なもの作りましたねえ」と言ってくれる稀有な人物である。

小津のような妖怪に騙されるわけがないと思いつつ、明石さんは妖怪でも面白がれるだけの懐の深さをもつ人物だとも思われた。私は人恋しさと理性の狭間で一夜と一日かけて思案に暮れた末、ついに意を決して、下宿の二階に暮らす神様のもとを訪ねるのだった。

「ふわあやい」
 間の抜けた声がして、神様がひょんと顔をだした。
「あ、貴君か。それで、どうする?」
 じつにあっさりと、彼はまるで週末の予定を繰り合わせるように気軽に言った。
「小津はいけません。私と明石さんにして下さい」

森見登美彦『四畳半神話大系』角川文庫

感想・コメント

森見登美彦の作品で初めて手に取ったのは『夜は短し歩けよ乙女』でした。大学入学直後に読んでどっぷりとハマり、単行本あるいは文庫になっている作品は全部読みましたし、現在も新刊が出たらすぐに買うくらいには好きな作家さんです。

001で紹介した夢野久作、002で紹介した小林泰三の小説はおどろおどろしい作品でしたので、少しテイストが変わるようですが、幻想怪奇やSFという要素でそれぞれ通ずるものがあります。

※『四畳半神話体系』が参考候補に選ばれた「星雲賞」は、優れたSF作品およびSF活動に贈られる賞ですので、通ずるも何も、まさしくSFとして高く評価されている作品ですね。

SFファンで森見作品を読んだことがない方には、ぜひこの機会に読んでみてほしいですし、森見ファンにはぜひSF小説を手に取ってみてほしいなと思います。きっとハマる作品が見つかるはずです!

さて、『四畳半神話体系』は四話で構成されていて、上記のあらすじは第一話のものです。各話はパラレルワールドになっており、世界線をまたいで伏線が散りばめられています。読むたびに新たな発見がある、1粒で2度どころか3度も4度もおいしい作品です。

もう一つ、森見登美彦の特徴であり魅力なのが、唯一無二の文体。やや古風な文語テイストでありながら、軽快でユーモアに溢れた文章が、読者を巧みに森見ワールドに誘います。私の文章ではどう足掻いても伝わらないので、こればかりは作品を読んでほしいとしか言えません…!

ちなみにアニメも傑作です。Amazonプライムで第一話を無料で視聴できますので、気になる方はぜひご覧になってみてください。

多くの作品が京都を舞台にしているので、旅行を兼ねた聖地巡礼もおすすめです。森見登美彦が描く異色の古都を旅してみてはいかがでしょうか?

*最終更新日 2024/10/22

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