北国のひと/連載エッセイ vol.2
※初出:知事認可・岩手県カイロプラクティック協同組合発行、「ほねっこくらぶ通信 vol.4 (2001年4月)」掲載(原文ママ)。
この文章が活字になる頃には、もうその姿を消しているのだろうか。
あんなにもわたしを包み込み、そして振り回した。
ときには滲み出す汗を拭うことすらできないほどに熱くさせ、ときには心の震えをを止められないほど芯から冷たくされた。
思えばこの冬わたしは、身も心もすっかり染められてしまっていた……。
とまあ、ここまで書くと聡明な皆さんなら何についてぼやいているのかおわかりであろう。
そう、恐らく皆さんも上に書いたような体験をこの冬されていることと思う。
車の運転中、視界が遮られるほど「包み込まれ」、ハンドルを取られるほど「振り回され」、その処理にはミニダンプを手にして「熱くなり」、その汗が引く頃には「芯から冷やされる」……。
そう、「雪」である。
それにしても今年はすごかった。
どれくらい降れば気が済むのか、空に本気で聞きたくなるくらいすごかった。
私自身、これだけの雪の量を体験するのは、必死こいて完成させた「かまくら」に、翌朝犬のお絵かき(つまり「マーキング」というやつ)がされていたのを発見して泣いていた小学校低学年まで遡るので、「何十年ぶりの大雪」という言葉に嘘はないのだろう。
特に、わたしたちのなかには研修などで頻繁に岩手を離れて関東や関西に出向く機会のある者も多く、北国の人間としてその心中は複雑である。
西日本、とくに温暖な瀬戸内の日差しを浴びていると、「嗚呼、あのグレーの空の下にはもう戻りたくない」などと、地元の患者さんが聞いたら怒りそうなことをついつい考えてしまったりもする。
それでいて、新幹線で岩手に帰ってくるとき、意外に天気がよかったりすると、何故か落ち着かない。
そして徐々に空の光度が落ち、白いものが舞い始め、北上あたりのトンネルを抜けた頃には吹雪きだすと妙に安心してしまったりするのである。
やっぱり自分たちは北国の人間なんだなぁ、と色々な意味で感じてしまう冬だった。
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