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40円の大冒険/連載エッセイ vol.83

※初出:知事認可・岩手県カイロプラクティック協同組合発行、「ほねっこくらぶ通信 vol.85(2014年・第6号)」掲載(原文ママ)。

毎度お馴染み『海外ネタ』である。今年は、ここ数年に比べると、『海外渡航3回』という、少々寂しい状況だった為、『舶来ハプニング』好きな読者の方には物足りなかったかもしれないが、そこは全て仕事絡みの機会しか有さない故、平にご容赦願いたい。

さて、今回のネタの舞台は、毎度おなじみ『韓国』である。

『カイロプラクティック理学修士課程』在籍時代から数えると、今回が10回目の訪韓。
既に慣れたもので、出発の数時間前まで店舗でお客様に対応し、『明日の今頃は…ソウルっすよ!! 実感が湧きませんね~♪』と余裕をかましつつ、帰宅後、約1時間で荷物をまとめ、高速深夜バスにて岩手を出発。

『明日の朝は、上野でナニ食べようか…??』などと考えながら、シートに深くもたれ、眠りに就いた…。

そして…最初に異変を感じたのは、午前5時前の事だった。

いつもであれば、6時前に上野駅周辺に到着するので、その時間帯、バスは高層ビル群を縫うように、高速道を爆走しているはず。

しかし…やたら…不自然に…急発停車が多いのである!! 

恐る恐るカーテンの隙間から外を伺うと…車窓の間際まで迫る樹木の枝と葉が…?? 
ココ…ドコの山中じゃぁぁぁ~!?

カーテン越しの運転席の様子を伺っても、なんら『公式発表』はない。
しかし…百戦錬磨の『マスター・オブ・高速深夜バス』である私は瞬時に状況を理解した……こりゃ…何らかの事情で高速道が閉鎖されたな…挙句……とんでもない迂回路を走っているな…!! 

そしてその約30分後、高速道が濃霧の為、広域で閉鎖され、一般道を走行しているコト、加えて到着が大幅に遅れるコトなどが、車内のスピーカー越しに乗客へ伝えられた…。

あぁ…コレ…想定しうる中でも、最悪の部類のパターンじゃん…!!

私はすぐさま運転席へコッソリ詰め寄り、乗務員に状況を確認する。

曰く、高速道を下ろされたトラックの群れ共々、大渋滞にハマっており、全く見通しがつかないとの事。
途中、最寄り駅周辺で降ろしてもらえないか交渉するも、肝心の鉄道すら走っていない山道を走行中で、それも不可能だという…。
まさに、『打つ手なし』である。

あぁ…意識がはっきりしながらも、蛇にのまれていく蛙って…こんな心境なんだろうなぁ…ゲロゲ~ロ…。

そうこうするうちに、チェックイン期限まで、2時間を切った…。
車体は未だ埼玉の奥地。
上野から乗る予定だった成田空港行きの鉄道は、間もなく発車する時刻である…。

あぁ…コレは…完全に『搭乗不可能』だな……あぁ…理不尽、ココに極まれり……秋の空と女心よ…バッキャロ~!!!!

すっかり意気消沈した私は、どうしようもなく、再びシートに身を預けた…。
完全に『ふて寝』の体勢である。

しかしながら、そんな『マイナスの感情』が湧き上がると同時に、いざ間に合わない事が決まってしまうと、それはそれで、『このシチュエーション…仮に乗り切れたら…いい「ネタ」になるかもなぁ…』という相反する感情が、胸中奥深くで湧きあがり始めているのも感じていた。

すると…その感情の揺らぎに呼応するように、私の右鼠蹊部で、ナニヤラ存在をアピールする『物体』が…?? 

そっとポケットに手を入れて探ると…そこには約1ヶ月前に、ようやくガラケーから切り替えたばかりのスマホが!!

そうだ…まだ韓国へ今日中に行けないと決まった訳じゃない!!
『諦めたらそこで終わりですよ』…とドコゾの白髪メタボなバスケ監督も言っていたじゃあないか!! 
とりあえず…ダメ元で動けるだけ動いてみよう!!

未だ慣れない手つきでタッチ画面を操り、成田空港の航空会社デスクの連絡先を探し当てる。
チェックインカウンターは、まだ開いていない時間ではあったが、そんな事は気にしていられない。

私は他の乗客に迷惑が掛からないように、カーテンに頭ごと突っ込み、極力、周囲への音漏れが抑えられる状況にしてから、スマホの発信マークを軽く触れた。

プルルル…プルルル…。
暫く鳴り続ける呼び出し音…。
プルルル…プルルル…。
やはり、こんな早い時間になんか対応できないか…。
プルルル…プルッ……はい…大変お待たせ致しました、○○航空・成田空港デスクです。

……繋がったぁぁぁ~!!!!

しかし、ココで喜ぶのは、まだまだ時期尚早。
私は、我が身に降りかかった悲劇を一通り説明し、予約していたフライトには間に合わない事と、その他の本日発フライトの空席状況を恐る恐る尋ねた。

というのも、今回の訪韓と同期間、ソウルで経済関係の大きなイベントがあるらしく、飛行機も現地ホテルも、なかなか手配しにくい状態である事を、以前に聞いていたからだ。

少々お待ちください…との言葉を残して、スピーカーからは延々と待ち受けのオルゴール音が流れ続ける…。
その瞬間も、バスは何処ともわからない山道を、『牛歩戦術』の如く進み続ける…。
そして、そのある意味『牧歌的』な状況と反比例するように、私の鼓動は高鳴り続ける…。

3分…いや、実質は2分ほど経過した頃だろうか…。

『大変お待たせ致しました』…との言葉に続いて恭しく発せられたのは……『今であれば、なんとか昼過ぎの便を手配する事は可能です!!』…という、私にとっては福音にも似た力強い言葉であった!!

『但し…その場合、「変更手数料」と「チケットの差額」だけは頂戴する形になりますが、それで宜しいで…』『おぉ~願いしばす!!!!』…と食い気味に返答したワタクシ。

嬉しさのあまり声の音量が高くならないよう気遣いながら、必要事項を先方へ伝え、無事に『手続き完了』と相成った…。
朝っぱらから…心の消費カロリー、高いなぁ…。

その後…バスは予定時間に3時間ほど遅れて到着し、無駄にしてしまった鉄道の特急券を買い直し、空港到着後カウンターへ直行してチケットを交換し、振り替えられたフライトへ搭乗し…そして今、滞在1日目を終えた私は、ソウルのホテルにて、このエッセイを書いている。

いやはや我ながら…少々の(!?)アクシデントには動じないくらい、なかなか逞しくなったものである。

ちなみに…チケットの変更手数料は『6000円』。

そして差額が…最初のフライトよりも、変更後のフライトの方が『6000円』安かったとの事で…。

結局、空港デスクで財布より旅立った金額は、税金などの諸経費分の『40円』だけであった…。

このドキドキ感…まさに『プライスレス』!!
そんなワケで…明日からのモロモロも…頑張りまっす!!(…っていうか、厳密には『海外ネタ』じゃねぇぇぇ~!!)


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