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キャスティングの妙〜光る君へ

「光る君へ」12話を終え、まひろと道長の人生がひとつの節目を迎えました。

今回はほかのドラマや出演作を主な比較対象とし、キャスティングや出演者について言及します。

(今回からカッコ内で補足する出演者名は敬称略にします)

知っておくとちょっといいコト

光る君へを観始めた頃気づいたのが、かつてまひろ役の吉高由里子さんと、道長役の柄本佑さんがドラマで共演していたことでした。

2020年頃日テレ系で放送されていたドラマ「知らなくていいコト」。
このドラマ、実は脚本も光る君への大石静さんだったのです。

設定としては、吉高さんの元カレが柄本佑さん。
本編は全く観ていませんでしたが、CMでたまたま観た2人のキスシーンが妙に印象に残っていました。

最終的に2人は結ばれなかったそうで、大石さんはそういった熱烈な恋愛関係を書くのが好きなのかな、と感じたのです。

なぜかというと、90年代に大石さんが脚本を書いた朝ドラ「ふたりっ子」「オードリー」も、最終話の段階でヒロインが相手役と婚姻、あるいは恋人関係を絶っていたためです。

それまでの過程はドラマチックだったのに、ヒロインが自分の進みたい道を取るために別れていったのです。

10〜12話のまひろと道長の恋愛模様を観ていると、過去の懐かしい朝ドラの展開が思い起こされました。
NHKがそれらを意識して依頼したのか、大石さんの作風なのかは定かではありません。

確かなのは、大石さんは安定した恋愛関係に収まらない男女を描くのが非常に巧みなこと。
今後のまひろと道長の関係にも目が離せません。

添い遂げる黒木華

一方、道長への「ガチ恋」を叶えた倫子。
倫子は生涯道長の北の方として添い遂げるようです。

倫子役の黒木華さんといえば、「真田丸」「西郷どん」でも主人公の相手役として出演したものの、死別もしくは数人いるうちの最後の妻でした。

特に真田丸の三谷幸喜さんの脚本は、あくまで淡々としていながら悲壮感を漂わせてきます。
その演出が好きなだけに、堺雅人さん演じる信繁との死別シーンは辛かったです。

まひろの恋心や2人の友情を思うと複雑な心境ではありますが、黒木華さんが大河で意中の相手と一生を通して添い遂げる役は初めて。

倫子と道長が一緒にいるのを観るのは、正直本意ではありません。
けれど黒木華さんファンとしては道長のよき妻であり続けて欲しいですし、将来は倫子の母・穆子(石野真子)と赤染衛門(凰稀かなめ)みたいなやりとりが倫子とまひろにもあるかもしれません。

そして倫子といえば小麻呂ちゃん。
小麻呂ちゃんは猫というだけで視聴者を幸せにしてくれます。

子育て世代が見覚えのある一条天皇

11話で即位した一条天皇。
詮子(吉田羊)と会話するシーンを観て、「あれ? この子、見覚えがある……」と録画を停止しました。

一条天皇は回によって年齢が異なるため、その都度子役も変わります。

11話の時点で7歳だった一条天皇を演じたのは、高木波瑠くん。
Eテレで放送している子ども向け料理番組「キッチン戦隊クックルン」に今期まで出ていた子です。

我が家は平日の6〜7時台、息子がEテレを観るため、見慣れた子が出ているとさすがに分かってしまいます。
スポット出演ではありますが、可愛らしく整った顔立ちなので一条天皇にはぴったりでした。

道綱はただのゆるキャラではない

道長の腹違いの兄弟・道綱(上地雄輔)の出番が増えてきました。

12話では「どこへ行っても相手にされぬのだ」と、平成からタイムスリップしてきたノリで道長に絡みます。
お前はとっとこハム太郎か。ゆるキャラか。ツッコミせざるを得ません。

しかし夜に道長と語らう道綱の一言、「妾(しょう)は常につらいのだ」の対比は画面の前で唸りました。
上地雄輔さんの穏やかな雰囲気と、歳を重ねたから出せる自然な重みがありました。

マザコンの気があるものの、道綱は兼家ファミリーの良心といっても過言ではないでしょう。

さわと惟規がいて良かった

12話で道長が倫子に婿入りすると知り、本心をひた隠しにして「やはり私と道長様が歩む道は別のようですね」と告げたまひろ。

お前はまた自分の気持ちを我慢して……。
道兼(玉置玲央)とのシーンを思い出し、目元が潤みました。
私はまひろが賢くて、悲しい。

しかし、傷心のまひろを迎え入れるさわ(野村麻純)と惟規(高杉真宙)の温かさに救われます。
まさか為時(岸谷五朗)が通っていた「高倉の女」の娘がまひろの友人になるとは思いませんでした。

直秀(毎熊克哉)との別れ、まひろと道長の道ならぬ恋に胸を痛めてきた視聴者としては、朗らかで心優しい登場人物たちの存在に癒されます。
まひろの家族愛が強いのはもちろん、「紫式部集」に友人へ宛てた和歌が多いことから、さわや惟規がいかに大切な存在だったかうかがわせる回でした。

定子と清少納言の絆を観たい

13話からはいよいよ、道隆(井浦新)の娘であり後の中宮・定子役の高畑充希さんが登場します。

まだ先ではありますが、ききょうこと清少納言(ファーストサマーウイカ)とのやりとりはエピソードを鑑みて、女同士の気持ちの良い絆が描かれるでしょう。
まひろの道のりがまだまだ長い分、ドラマとしてもそちらに力を入れるはずです。

13話は4年後の話になるとのこと。
兼家(段田安則)から道隆の時代になり、まひろも道長も衣が変わります。

最後に正直な話をすると、私は柄本佑さんがタイプではありませんでした。また「柄本明さんの息子」のイメージが強かったです。

だけど冒頭でふれた「知らなくていいコト」から男性俳優として魅力が増し、細やかなグラデーションで闇が深くなる道長の演技を目の当たりにして、今作で最も注目している役者さんとなりました。

まひろや倫子ではなく、平安京の壁になって「紫式部と藤原道長」をこれからも見つめ続けたい所存です。

小麻呂ちゃんも世代交代していくのでしょうか。

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おおやまはじめ/手帳と暮らしのライター
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