君を知るための衣服
君を、知るため。君の世界を教えてほしいの。
君と生きる温かな未来を、共に創るための衣服。
❄︎ ❄︎ ❄︎
多様性が認められつつある現代社会。
けれど、その実態は?
多様性という言葉が一人歩きして、私たちの意識は何も変わっていない。
相変わらず戦争や搾取は起こり続けているし、
毎日どこかで争いが起こっている。
自分の中の善悪を押し付け合った諍いは、一向になくなる気配が無いじゃないか。
他者理解を追い求める学問。人類学。
こんな現代社会だからこそ、人類学のように、
「他者」を「他者」として歩み寄ろうとする
その姿勢が、必要不可欠なんだ。
服を纏うという行為を通して、「他者」の存在を何度も何度も再認識できる仕組みを、私達の最も肌に近い所から、伝えていこうではないか。
シーズンテーマは「microbes waltz」
幼い頃、父から貰った粘菌の本。
目も鼻も口も無いのに、複雑な迷路をスルスルと抜けて行ったり、環境変化を予知したり、地下鉄の路線の最短距離を予測したり。
こんなに容姿が違うのに、脳みそだって見当たらないのに、彼らは手を取り合って、私よりもずっと難しいことを成し遂げている。
人生ではじめて「圧倒的な他者」を認識した瞬間だった。
ワルツは3拍子。
常に「オルタナティブ」を重要視する人類学に
とって「3」という数字は何よりも特別で。
そして彼らは、我々と同じように音楽を聴くと、活性化するという特性があるらしい。
ワルツを通して我々は繋がっている。
彼らと共にあらゆる二項対立を超越していこう。
知らない世界、新しい価値観。
私達は「他者」らしさを実感した時に心が躍る。
他者の世界に触れ、対話した時に感じる胸の弾みや高鳴りを、肌触りを通して、何度も何度も想起させたい。
0から生地をデザインし、昇華プリントを使った
ツヤツヤのオーガンジー。
微生物の姿をモチーフに、ボールやビー玉、ビーズ、海岸で拾った小石など、およそ400個もの絞り加工を加えた。
1つ1つは些細な行動だとしても、少しずつ連なることで大きな波へと変わるのだ。
人類学には「通過儀礼」という概念がある。
それは今いる世界から、もう一つの世界へ足を踏み込むための、背中を押す儀式。
バンジージャンプなんかが一般的だけど、私は「毎朝の着替え」こそ、一番の通過儀礼なんじゃ無いかって思う。
胸を張って堂々と生きるためのランジェリー
一歩踏み出す時に羽織るジャケット
大切な本番の時に着るワンピース
疲れた私を丸ごと包み込んでくれるパジャマ
どれも別の世界へ飛び込むための大切な儀式だ。
一方で、最近の衣服は、合理化が進み、あらゆる装飾が、とことん排除され、シンプルでミニマムになってきている。
衣服への愛着の希薄化が進む現代だからこそ、
どんな時も「服を纏っているのだ」と最大限に実感し続けられる衣服を作りたい。
リボンを1つ結ぶたび、ビーズにそっと触れるたび、小さな小さな彼らの存在を意識して、日々の通過儀礼が、もっともっと有意義なものになりますように。
君を知るための衣服。
それは、社会をほんの少し温める魔法だ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?