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君を知るための衣服

君を、知るため。君の世界を教えてほしいの。

君と生きる温かな未来を、共に創るための衣服。

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多様性が認められつつある現代社会。

けれど、その実態は?

多様性という言葉が一人歩きして、私たちの意識は何も変わっていない。

相変わらず戦争や搾取は起こり続けているし、
毎日どこかで争いが起こっている。

自分の中の善悪を押し付け合った諍いは、一向になくなる気配が無いじゃないか。

他者理解を追い求める学問。人類学。

こんな現代社会だからこそ、人類学のように、
「他者」を「他者」として歩み寄ろうとする
その姿勢が、必要不可欠なんだ。

服を纏うという行為を通して、「他者」の存在を何度も何度も再認識できる仕組みを、私達の最も肌に近い所から、伝えていこうではないか。

シーズンテーマは「microbes waltz」

幼い頃、父から貰った粘菌の本。

目も鼻も口も無いのに、複雑な迷路をスルスルと抜けて行ったり、環境変化を予知したり、地下鉄の路線の最短距離を予測したり。

こんなに容姿が違うのに、脳みそだって見当たらないのに、彼らは手を取り合って、私よりもずっと難しいことを成し遂げている。

人生ではじめて「圧倒的な他者」を認識した瞬間だった。

ヤコウチュウ
水面に合わせて幻想的に煌めくの。

ワルツは3拍子。

常に「オルタナティブ」を重要視する人類学に
とって「3」という数字は何よりも特別で。

そして彼らは、我々と同じように音楽を聴くと、活性化するという特性があるらしい。

ワルツを通して我々は繋がっている。
彼らと共にあらゆる二項対立を超越していこう。

躍るような水面

知らない世界、新しい価値観。

私達は「他者」らしさを実感した時に心が躍る。

他者の世界に触れ、対話した時に感じる胸の弾みや高鳴りを、肌触りを通して、何度も何度も想起させたい。

0から生地をデザインし、昇華プリントを使った
ツヤツヤのオーガンジー。

微生物の姿をモチーフに、ボールやビー玉、ビーズ、海岸で拾った小石など、およそ400個もの絞り加工を加えた。

1つ1つは些細な行動だとしても、少しずつ連なることで大きな波へと変わるのだ。


人類学には「通過儀礼」という概念がある。

それは今いる世界から、もう一つの世界へ足を踏み込むための、背中を押す儀式。

バンジージャンプなんかが一般的だけど、私は「毎朝の着替え」こそ、一番の通過儀礼なんじゃ無いかって思う。

胸を張って堂々と生きるためのランジェリー
一歩踏み出す時に羽織るジャケット
大切な本番の時に着るワンピース
疲れた私を丸ごと包み込んでくれるパジャマ

どれも別の世界へ飛び込むための大切な儀式だ。

一方で、最近の衣服は、合理化が進み、あらゆる装飾が、とことん排除され、シンプルでミニマムになってきている。

衣服への愛着の希薄化が進む現代だからこそ、
どんな時も「服を纏っているのだ」と最大限に実感し続けられる衣服を作りたい。

リボンを1つ結ぶたび、ビーズにそっと触れるたび、小さな小さな彼らの存在を意識して、日々の通過儀礼が、もっともっと有意義なものになりますように。

君を知るための衣服。

それは、社会をほんの少し温める魔法だ。

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