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ゆきのひ
「雪奈の誕生日はやっぱり沢山雪が降るね」
ママはリビングの外を眺めてニッコリと微笑む。
私が生まれた日はとんでもない吹雪で、パパは
出産に全く間に合わなかったらしい。
吹雪じゃない誕生日を迎えるのにも慣れてきた。
もう5回目らしいよ。早いもんだね。
23歳は、“温かさ”を分かち合える人になりたい。
この一年は本当に穏やかで、ぬくぬくした日々を過ごしていた気がする。
初めての大阪、初めての服飾、久しぶりの恋人。
馴染みの銭湯を訪れるたびに、おばちゃん達が、「こんばんは〜おさきに〜おやすみ」なんて声をかけてくれる。
初めて自分で選んだ土地が、大阪で正解だった。
服飾学校だってそう。
最初は、ついて行くのに精一杯。
「かわいいタッチのデザイン画だね」
「さっきのプレゼン惚れ惚れしたよ!」
何度も作品を完成させる中で、みんなが私の得意を力強く教えてくれたの。
もうすぐ、自分のお店をオープンする。
大学時代の大好きな同期と、夢だった雑貨屋。
23歳は、この温かな輪をもっと広げるんだ。
そして、私がこんなにも安定して暮らせたのは、なんて言ったって恋人のお陰で。
喧嘩もせず、すれ違いもせず、出会った頃から
変わらぬ愛を、ずっと供給し続けてくれている。
どんなに小さな出来事も、幸福に変えてくれて、
「ゆきのあったかいところが大好きだよ〜」
「ぶっとい芯のあるところに惹かれたんだよ〜」
なんて私を私のまま丸ごと包み込んでくれるから
この一年、私は自分のことを少し好きになれた。
君にもらった温かさ、全部ぎゅっと抱きしめて、
2人だけの温もりを一緒に築いていこうね。
ねぇ、知ってた?
晴れの日よりも、雪の日の方が温かいってこと。
それは、雪のおかげではなく、周りにいる雲たちが私を静かに包み込んでくれるからだ。
23歳の雪は、この雲達に恩返しがしたいのです。
みんな、ほんとうに大好きだよ〜