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前田エッセイ
2021年5月7日 23:41
スパイスとアナタこのキッチンに立つのは何年振りだろう。 調理器具の在処も分からないし、冷蔵庫の食材も勝手に使っていいものか。悩んだ結果スーパーに向かうことにした。鍵をポケットに入れ「行ってくるよ」と呟いて玄関を出る。 車を走らせながらクーラーを入れるか窓を開けるかを悩みつつ。ガソリンメーターに目をやると半分を切っていた。帰りに入れなければならないなと考えていると、目的地に到着。 スーパー山城
2021年4月27日 20:23
命降る白服 サン・エステル号は嵐に飲まれて遥か宙天に舞い上がった。遠くには真っ赤な森が見え、近くにはさっきまで焼いていたソーセージと白いコック帽が舞っている。その異様な景色をはっきりと覚えている。 「ト、アスリコリャタンドル」 「メルテ、ィカタンエ」 聞いたことがない言語に目を覚ますと、周りの木々は白く凍りつき、見慣れぬ者達に囲まれていた。背は低く耳は狼のようで、全身が真っ白な毛に覆
2021年4月26日 19:42
夢虫夜(ゆめちゅや)黒い海に体を覆われていると思っていた。 波にしてはサワサワと毛のような感触。無数の蟻が体を這っていると分かった時には動けなかった。 蟻の波に口を塞がれた瞬間、ぶわっと目が覚めた。 同じ夢を七夜も超えたとき、家族が虫になった。 トノサマバッタの父は珈琲を片手に新聞を読む。ご飯を運ぶ母はミツバチで、遅れて起きてきた弟はカナブンだった。 私はまだ自分の姿がわ