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はるばる高知県に行ったわけ
高知県四万十町への旅
釜戸に薪をくべて灯をともし、米を蒸して大豆を茹でる。
そんな昔ながらの製法で麹と味噌を作り続けている、創業180年以上の歴史ある「井上糀店」。
現在は、7代目の井上雅恵さんが後を継がれています。
以前私は、どうしても7代目のこの方にお会いしたくて、はるばる東京から高知県まで行ったことがあります。ちょうど今頃の季節でした。
「井上糀店」がある四万十町六反地は、旧道を挟んで住宅がまばらに並び、山に川、そして田畑に囲まれたのどかな地域です。
人通りの少ない静かな道を車で進んで行くと、割烹着を身に着けた女性たちが、建物に出入りするのが見えてきました。
そこには「井上糀店」の看板が。
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ちょうど7代目の雅恵さんが外にいらっしゃって、笑顔で出迎えて下さいました。
雅恵さんは、理系の大学を卒業後、大手半導体会社でエンジニアとして勤務されていました。
しかし、ご実家の事情で20年務めた会社を早期退職し、2011年4月に帰郷。その後7代目としてご実家の家業を継がれました。継ぐにあたり、生産の効率化を計ろうと、新しい設備の導入を進めていた雅恵さんですが、矢先に東日本大震災が発生。
電気やガスに頼り切った、現代生活の弱さを思い知ったそうです。
その経験から、電気やガスでの効率化よりも、災害時に直ぐに対応できる昔ながらの製法の継続を決意。
災害時には釜戸による炊き出しでご近所の方々を助ける事ができると、発酵器や圧力釜を用いず効率化もしない選択をされたそうです。
そんな雅恵さんの想いを伺う事ができ、「井上糀店」の麹や麹室、釜戸も見せていただきました。
![](https://assets.st-note.com/img/1678642984810-fFhMQoY0k4.png)
![](https://assets.st-note.com/img/1678643819903-eGyd1yddQ3.png)
・非効率的で面倒な手作業
・求められる経験値
・加工に時間と労力がかかる発酵食品
合理的で効率性を求められる世の中においては、時代に逆行するとも思える製法です。
それでも私は、
・手作業により磨かれる五感
・昔ながらの製法で素材を加工し保存食をつくれる安心感
・時間をかけて醸すおいしい発酵食品
・微生物との共生
・コミュニティーの力強さ
に魅力を感じ、高知県まで尋ねに行って良かったと思いました。
天職と転職
天職だと思いながら、20年以上照明設計士として働いてきた私が、震災を機に全く違うフィールドに飛び込んでキャリア変え。
(第一回目のnote投稿に経緯を書きました)
現在、「発酵と食と健康」をテーマにワークショップを主宰していますが、本当に転職して良かったのかと不安に思うこともありました。
でもこの日、背中を押されたような気がしました。
味噌などの発酵食品について学んでいるので、お話を聞かせていただきたいと事前にお電話をしたけれど、今思えば、ホームページを読んで、ストーリーは違うものの勝手に自分のキャリア変えと重ねて、背中を押してもらいに行ったのでしょうね。
そして震災から12年、2023年の3月11日には味噌仕込みのワークショップを開催しました。
色々あっても「醸すを楽しむ」人生を。
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