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脳の名医が教える最高の脳活大全【遠藤英俊】


著者:遠藤英俊 認知症専門医

一言で言うと:認知症にならない方法について教えてくれる本

「人の名前が出てこない。買い忘れや家事の失敗が増えた」そういう症状がある人は脳の機能が衰えてきている証拠

そうやって脳の機能がどんどん低下していくと、将来的に認知症になってしまう恐れがある。そうならないために脳をトレーニングする。
つまり「脳活」をすることで認知症になるリスクはかなり防ぐことができる

この本では脳の専門家である著者が、世界中の研究で実証された様々な脳活について詳しく解説してくれている

今回の授業を受ければ、そんな「脳活」を知ることで、将来認知症になるのを防ぐことができるようになるだろう

認知症は防げる

「認知症」とは正確には病名ではなく、脳の神経細胞が痛んで記憶や学習判断などの機能が低下し、日常生活に支障が出てきた状態のことを指す

つまり脳の機能が低下していて忘れっぽくなったりしていても、日常生活に支障がないのであれば認知症とは診断されないということ

一方日常生活に支障をきたすほどではなくても、同じ質問を何度も繰り返す・物を置いた場所がしょっちゅうわからなくなっていつも探し物をしているという、正常な状態と認知症の間の段階にある場合を「軽度認知障害」という

これまでの研究で「軽度認知障害」の人は1年間で10%、5年間で約50%が認知症に進行することが報告されている。その一方で軽度の段階であれば、正常な状態に回復可能なことが複数の研究から明らかになっていて「軽度認知障害」と診断された人の約半数は正常に戻っている

✅「軽度認知障害」から認知症になるか正常な状態に戻れるかは半々

だが近年「どういう対策が認知症予防に有効なのか」についての論文が世界中で数多く発表され始めている。つまりそれらの有効な予防法を実行して脳の機能を低下させないようにすれば、認知症は予防することができるということ

有酸素運動で認知症を防ぐ

では早速、認知症予防に有効な脳を鍛える「脳活」について紹介

まずは「運動」

運動が認知症予防に有効だという研究は、国内でも海外でも数多く報告されている

例えば高齢者約5000人を5年間追跡調査した結果、

  • 有酸素運動を週3回以上行っていたグループ

  • そうでないグループ

を比較すると、軽度認知障害やアルツハイマーなど、全種類の認知症を発症するリスクが低かったという報告がある

有酸素運動で酸素が継続的に体内に取り込まれると、脳内で「BDNF」というタンパク質の分泌が盛んになることがわかっている

BDNF:わかりやすく言うと、脳の神経細胞の栄養特に記憶を司る「海馬」の大切な栄養源

脳の神経細胞については長い間「減ることはあっても増えることはない」と考えられていたが、1998年ピッツバーグ大学の研究によって「脳の中でも海馬だけはBDNFによって新しい神経細胞を生み出すことができる」ということが発見された

そして新しい神経細胞ができれば、脳内の神経回路も強くなっていく。つまり年を取るとともに衰えた記憶に関する機能も、有酸素運動をすることによって復活強化できるということ

✅具体的には1日20分程度、早歩きくらいの有酸素運動を毎日行うのがおすすめ

握力が低いと認知症になりやすい

「握力や筋力の弱い人は認知力も衰えやすい」という調査結果がある

「瓶の蓋を開けられなくなった・重い荷物を長時間持てなくなった」という人は握力や筋力が低下している可能性があり、それが将来認知症になりやすいかどうかのサインになることが分かってきた

実際「東京都健康長寿医療センター研究所」で行われた研究では、握力などの身体機能が低下していたグループの認知症リスクは、そうでないグループと比べて2.1倍も高かったという結果が出ている

また握力と認知症の関連を調べた「久山町研究」でも同様の結果が出ている

久山町研究:福岡市の隣にある久山町で地域住民を対象に60年以上にわたり実施されている、脳卒中や認知症などについての調査
のこと

それによると40歳以降に握力が大幅に低下した人は握力が増加、または変化していない人と比べて認知症に1.51倍なりやすく、アルツハイマーでは1.62倍増加した。つまり、

✅有酸素運動に加えて筋トレすることも脳活には重要

運動は健康のためにも脳のためにも大事

魚を食べると認知症のリスクが低くなる

脳は水分を除いて考えると「タンパク質1:脂質2」くらいの割合でできていて、脳の約65%は脂質でできていると言える

だからこそ脳のためには脂質を取るのも重要。中でも脳の健康維持に特に良いと注目されているのがDHAEPA

DHA・EPA:イワシやサバなどの青魚やマグロに多く含まれる

住民約1万3000人を対象に行った東北大学の研究では、魚をほぼ毎日食べるというグループは、そうでないグループに比べて認知症の発症リスクが16%低いという結果が得られている

またうつ病の人は、そうでない人と比べて記憶を司る海馬が縮んで小さくなる傾向が見られ、アルツハイマー病を合併しやすい

国立がんセンターと慶応義塾大学の研究では、魚を多く食べるグループと少ししか食べないグループを比べた結果、魚を多く食べるグループではうつ病の発症リスクが半分以下に減っていることがわかった

つまり魚を積極的に取ることはうつ病の予防に加え、認知症のリスクを減らすのにも役立つ

✅DHAやEPAなどの「オメガ3系脂肪酸」は体内でほとんど作ることができないため、食事から取る必要がある

魚の苦手な人は、オメガ3系脂肪酸を多く含むアマニ油やエゴマ油をサラダやヨーグルトにかけて食べるといいだろう

カレーで認知症を予防できる

インド人にはアルツハイマー病の発症が少ないことが以前から指摘されていた。そしてその理由は、インド人がよく食べるカレーにあることが研究でわかった

✅「カレーの有効成分がアルツハイマー病発症の原因となる『アミロイドβ』の脳への蓄積を減らす」という実験データが報告されている

正確にはカレーに使われるスパイスの「ターメリック」日本語でいう「ウコン」に含まれている「クルクミン」という成分に抗酸化作用や抗炎症作用などが認められており、それらの作用が認知症の発症リスクを下げる働きをするのではないかと考えられている

ターメリック:カレーの黄色の元になっているスパイスでポリフェノールの一種

2006年にシンガポールで行われた研究でも、カレーをほとんど食べない人に比べ、カレーをよく食べる人は認知症の発症リスクが約50%も低くなることが報告されている

アミロイドβの脳への蓄積は、アルツハイマー病が発症する10年から20年前に始まると言われている。そしてアルツハイマー病は70歳で発症することが多いため、50代から溜まり始める可能性がある

だから「特に50歳を過ぎたら、アミロイドβが溜まり始める」ということを意識して、クルクミンを多く含むカレーを週に2,3回食べるようにするといいだろう

認知症予防には「短い」昼寝

認知症予防には30分未満の昼寝習慣が有効で、それだけでなんと認知症リスクは6分の1になると言われている

ちなみに体内時計による眠気のピークは1日に2回ある

  • 午前2時~4時

  • 午後2時~4時

その午後の眠くなるタイミングに合わせて短い昼寝をすると、脳がすっきりして午後も元気に活動できるようになる。そしてさっきも言った通り、30分未満の昼寝をする習慣のある人は認知症のリスクが6分の1になることがわかっている

だが逆に1時間以上の昼寝をしている人は、認知症のリスクが昼寝をしていない人と比べて2倍以上増加する

長時間昼寝をすると夜の寝つきが悪くなったり、夜の眠りが浅くなる原因になる。午後3時以降の昼寝も同じように夜の睡眠の質を悪くする。そういう習慣を続けていると認知症のリスクは高まる

✅昼寝は午後3時までに30分以内

ちなみにコーヒーなどのカフェインには「覚醒効果」つまり目覚ましの効果があり、飲んだ後30分でその効果がピークに達するので、昼寝前に一杯のコーヒーを飲んでおくと寝過ぎを防いですっきり目覚めることができるだろう

対戦ゲームで楽しみながら脳活

脳の健康寿命を伸ばして認知症を防ぐためには、遊び感覚で取り組める知的なゲームが大いに有効

アメリカのアルバート・アインシュタイン医科大学では、認知症を発症していない75歳以上の高齢者469人を、5年間に渡り様々な知的活動と認知症の発症の関係について追跡調査した

その結果チェスやトランプなどの知的ゲームを週2回以上行う人は、週1回以上・1回以下の人に比べて認知症の発症率が3分の1以下と非常に低くなることが確認された

チェスやトランプのように相手がいるゲームというのは、勝つために先読みをしながら最善の一手を考えたり、相手の手の内を想像したりすることで思考力や想像力集中力が使われて、脳の司令塔である前頭葉や記憶に関する側頭葉が活性化する

また対戦相手とおしゃべりしながら楽しめるというのも、脳の活性化につながる

✅日本では麻雀や将棋、囲碁などのゲームがおすすめ

一緒に遊んでくれる友達がいなくても、今はスマホのアプリでオンライン対戦なんかも簡単にできる

実際パソコンでのオンライン麻雀でも、注意力や記憶力が向上したという研究結果もある

学ぶことが最高の脳活

運動・生活習慣・食べ物など脳活にはいろいろあるが、最強はやはり「学ぶこと」

2017年世界で最も権威性の高い医学雑誌「ランセット」で認知症リスクとなる原因の一つとして「低学歴」が挙げられている

ここでいう「低学歴」というのは、大学のレベルとかそういうことではなく「小学校までしか行っていない・12歳くらいまでしか教育を受けていない」といったケースのこと。つまり「頭を使って学んでいる期間が短い」というのが問題

日本でも65歳以上の高齢者5万2000人を対象に、6年間追跡した結果「教育を受けた年数が短い人は認知症の発生率が高い」ことが確認された

✅大事なのは「学校に行く」ということではなく「学ぶ」ということ

たとえ高齢者になってからでも、本を読んだり歴史について調べたり、美術館や博物館に行って知識を深めるなどいくらでも脳に知的刺激を与える機会はある

脳に刺激を与えられればいい。「知的好奇心の高い人ほど認知症のリスクが低い」という統計があるので、何歳になっても学ぶ意欲を持つというのが脳を若く保つ秘訣と言える

その意味ではフェルミ漫画大学で学ぶことも、最高の脳活と言えるだろう

まとめ

認知症はちゃんと脳のトレーニングをしておけば防げる。もちろん100%はないが、今日紹介した脳活をいくつかでもやっていけば、将来認知症になるリスクは大きく減らせるはず

感想

認知症専門医の著者による、認知症にならない方法「脳活」について教えてくれる本。本書の予防法を実行して脳の機能を低下させないようにすれば、認知症は予防することができます。

「運動・筋トレ・青魚・カレー・短い昼寝・対戦ゲーム・学び」といった、今日からできる方法が満載な内容でした。「青魚好きじゃない」って人、私の周りにもいるんですけど、将来大丈夫なのか心配になってきました。


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