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虐待サバイバー・プロジェクトチーム(第1回会議録)

【開催日時】令和3年6月19日(土)AM10時~12時

【参加者】※順不同
内田 信也・弁護士(日本弁護士連合会子どもの権利委員会/幹事・札幌弁護士会子どもの権利委員会/委員・NPO法人子どもシェルターレラピリカ/理事長・北海道子どもの虐待防止協会/副代表)

鈴木 三千恵(北海道里親会連合会 会長)

菊池 啓(虐待サバイバー自助グループ『ならてぃぶ』代表)

高橋 のぞみ(子ども虐待被害当事者の社会参加推進団体「しんか」代表)

羽馬 千恵(「わたし、虐待サバイバー(ブックマン社 2019)」著者

※以下の方は、本日、予定があり欠席となりました。

冨田 正美(ハーレーサンタCLUB NAGOYA 
代表/母子生活支援施設「愛知昭和荘」荘長
兼(福)愛知県母子寡婦福祉連合会 理事
/自立援助ホーム「のぞみ」設立メンバー 兼
(一社)あいち子ども・若者支援センター 理事
/(特非)陽和(ひより)副理事長
/(特非)あいち・子どもNPOセンター 理事
/(特非)いのちをバトンタッチする会 理事
/(特非)全国こども福祉センター 理事
/(一社)こども・女性ネット東海 理事
/(一社)知多娘地域活性化プロジェクト 理事)

※また、医学的見解についてのご意見は、以下の方に臨時的にプロジェクトチームに参加して頂くことになっています。

和田秀樹・精神科医(国際医療福祉大学・赤坂心理学科・教授)

会議で出た意見の要点

「虐待の後遺症」は、子ども時代よりむしろ、成人後に顕在化しやすく、虐待の後遺症が急性期の時期と、社会的自立を求められる時期が一致しているため、虐待を受けた被害者が成人してから、貧困や孤立(社会的資源のなさ)、虐待の後遺症が壊滅的であるために、自身も大変な人生になったり、子どもがいれば、貧困や虐待が連鎖しやすく、児童虐待の問題がいつまで経ってもなくならない。大人の虐待サバイバーへの公的支援(トラウマやカウンセリングの治療費の保険対象化など)が一切ないことが、児童虐待が解決しない一番の原因だと思う。

・児童虐待防止法が制定されたのは2000年なので、まだ20年しか歴史がない。今の親世代は、子ども時代にひどい虐待を受けていても、児童相談所の介入もなく子ども時代に支援がなかった世代。児童養護施設などへの保護歴がない虐待サバイバーの方が圧倒的に数が多いのに、児童養護施設の出身者のように解りやすい被害者ではなく、未発見サバイバー(潜在的児童虐待被害者)は、わかりにくい被害者として、世間で被害者だとも理解されずに、苦しい人生を歩んでいる。

・年代が高い被害者の方が、「虐待」という言葉も子ども時代になかったので、支援につながりにくい。今の支援が整ってきた子どもたちや、児童養護施設に保護された人が「いいよね。羨ましい」と思う感情は、人として当然の感情。自分の子どもに対してもこの「羨ましい」という陰性逆転移が起こりやすく、これが虐待が起こるメカニズムの1つ。「いいよね。羨ましい」を否定しないで、人間として自然な感情だと認めてあげることが大人も癒されるので大事だと思う。

・虐待を受けた大人が治療され、癒されて行かないといけないのに、日本はその「治療者」がいない。

虐待サバイバーの大人が10回でもいいから、無料でカウンセリングを受けられる券などがあるだけでも、随分と虐待の後遺症が違ってくると思う

大人の虐待サバイバーを何とかケア・支援しないと、日本はオワコン。
将来、国が潰れる今の子どもたちで虐待を受けている子は、将来、今の大人の虐待サバイバーのように壊滅的な「虐待の後遺症」を患い、適切な治療が受けられず、壮絶な人生になってしまう。同じ悲劇が繰り返されてしまう。大人が虐待の後遺症をケアされないがために、貧困も虐待も「再生産」され続けている。

・当事者がどうやったら、手をつないでいけるのか?
虐待サバイバーは全国に居るし、小さい自助グループは沢山あるから、「ゆるく」繋がり、LGBTのパレードのように、毎年11月に全国一斉で同時多発的にパレードができないか?そういう動いがあれば、マスコミも取り上げやすく、虐待サバイバーという棄民にされている透明人間のような被害者を世間に認知してもらいやすくなる。まずは、マスコミや世間に存在を認知してもらうことからしか始まらない。

・大人になっても虐待サバイバーは「よりどころ」がほしい。
「実家」がないし、あっても帰れない。「帰る場所がほしい」。

・現在、「トラウマ治療の保健対象を求める署名活動」を実施しており、約3000人近くが集まっているが、厚生労働省の児童担当の部署に提出するだけでなく、「障害者」の担当部署へも同時に提出し、「虐待の後遺症」を「障害認定」してもらって、既存の「障害者総合支援法」の中で、支援が受けられるように国に働きかけた方が、作戦としてはスムーズではないか?
「虐待の後遺症」専門で「障害認定」をしてもらうようにもっていってはどうか?

・障害者手帳、障害年金など、既存の制度をうまく活用していく方が早道。
しかし、虐待サバイバーは、親などサポートしてくれる人がいない中、虐待の後遺症が壊滅的なので、障害年金など書類が膨大で申請が大変な支援につながりにくい。
また、20歳になれば、国民年金を支払うことを知識として知らなかったり、経済的に支払えなかったりして、精神障害が重度の虐待の後遺症を患ってしまっているのに、障害年金が受けられないケースもよく聞く。

カウンセリングやトラウマ治療の無償化(もしくは保険対象化)→現在、実施している署名を引き続き続けて、厚労省の児童部門だけでなく障害者部門にも提出し、「虐待の後遺症」を「障害認定」してもらって、カウンセリングやトラウマ治療の無償化(もしくは保険対象化)にしてもらうよう国に要請する。

民間の「寄付」も、児童養護施設にしかいかないという現状がある。
虐待がひどくても、児童養護施設など社会的養護からもれた被害者もたくさんいることを世間に認知してほしいし、民間の「寄付」なども、施設保護されなかった被害者にもくるようにしないといけない。
そのために、受け皿となる団体の設立もしくは、未発見サバイバーの認知度を上げていく工夫がいる(11月の全国一斉パレードなど

「虐待」という問題がこの30年で社会問題として認知されてきた。
2000年の児童虐待防止法の制定以前の児相介入すらなかった世代の大人のサバイバーたちも、今も子ども達への虐待問題がこれだけ社会的に話題になっているからこそ、大人のサバイバーの存在も、啓発しやすくなっている。
「子どもと大人」はどちらも地続きな存在だし、相互に関係しあっている。
どちらの支援も必要だし、相互に波及効果がある。

今までは、虐待といえば、「個人の特殊な問題」とされてきたが、「社会全体の損失につながる問題」だということを社会につたえていかないといけない。
「虐待の後遺症」は、日本を滅ぼすよ、くらいの声をあげていかないといけない。

大人の虐待サバイバーを専門に診る専門家はいないのか?→精神科医の杉山登志郎先生は、大人のサバイバーも診てらっしゃる。今後、連絡を取りたいと考えている。
また、虐待サバイバーを専門に診る病院が日本に1つはあってもいいのに。

虐待サバイバーは「棄民」にされている。被害者として「透明人間」にされてしまっている。
そのくらい「透明人間」にされてしまっている潜在的児童虐待被害者がどのくらいの人数がいるか?というデータが必要。

#Me too運動のように、日本中に未発見サバイバー(潜在的児童虐待被害者)が沢山いることを知ってもらう動きがいる。
名乗れないサバイバーもいるが、一人でも声をあげる当事者が多ければ多いほど、国は動かざるを得なくなる。

・オレンジリボンネットは、児相のダイヤル189の啓発をメインにしているが、それだけでは不十分。オレンジリボンネットのような啓発の予算を「虐待サバイバー基金」として、虐待の後遺症のトラウマ治療やカウンセリングに回せないか?その方が、効果があるのではないか?

児童虐待に関しては、「当事者が専門家」である。
しかし、当事者でも回復のらせん階段の下のサバイバーもいれば、ある程度、回復したサバイバーもいて、まだ回復の下にいるサバイバーは、建設的な社会活動が難しい。
当事者みんなで一致団結することが難しく、心的外傷を負った虐待サバイバー同士が関わると、トラブルにも発展しやすいので、当事者だけの活動は難しい。専門家の協力も必要。

今年度11月(児童虐待防止月間)に、第1回、全国同時多発パレードを小規模からでもいいのでやってみたい。LGBTのパレードも最初は、少人数からスタートし大規模になり、政策に反映された経緯がある。11月は児童虐待防止月間なので、マスコミも虐待テーマの記事を取り上げてもらいやすい。
最初は小規模から始め、少しずつパレードを大きくしていく。

・とにかく当事者が「声をあげないといけない!!」。
そして、虐待サバイバーに限定しなくても、社会で起きている「対人暴力」の問題、「人権侵害」の問題は多いので、性被害、パワハラなど対人暴力で苦しんでいる人がみんなで声をあげる方が、ムーブメントとしては大きく発展するのでは?

・羽馬が3年前に虐待サバイバーの活動を始めた頃は、マスコミは虐待の被害者といえば、「子どもだけ」という認識しかなく、「大人の後遺症」を訴えても、取り上げてくれなかった。
しかし3年、言い続けていたら、今は、「大人の支援」や「成人後の虐待の後遺症」が治療されないと、次世代の子ども達も救えないことを理解した上でのマスコミ取材が増えてきた。当事者が声をあげ続けることが大事。

精神科医など治療者からの「二次被害」もとても多い。二次被害は虐待の後遺症への「無知」から起きる。精神科医療には、もっと虐待の成人後の後遺症を知ってもらいたい。

・今回の会で、当事者である虐待サバイバーの話は、興味深く面白い。このテーマは世間にうけると思う。「虐待の後遺症が、日本を滅ぼす」みたいな声の上げ方をしていって注目してもらうと、現状が伝わりやすいと思う。世間の関心は強くひきやすいテーマだと思う。

キャッチフレーズを作るといい。「私たちは、ここにいる」「私たちを、透明人間にしないで!」「虐待サバイバーから社会に伝える。人権問題は、国を滅ぼす」

※現在、虐待の被害者(虐待サバイバー)の「虐待の後遺症」を保険対象内でトラウマ治療する署名活動を実施しています。ご賛同、拡散を宜しくお願い致します。


虐待の被害当事者として、社会に虐待問題がなぜ起きるのか?また、大人になって虐待の後遺症(複雑性PTSD、解離性同一性障害、愛着障害など多数の精神障害)に苦しむ当事者が多い実態を世の中に啓発していきます!活動資金として、サポートして頂ければありがたいです!!