宇宙アサガオの栽培 | 莉琴
大人になって初めてアサガオを育てている。
「宇宙アサガオの種」を旅先でいただいたことがきっかけで、
「宇宙飛行士の山崎直子さんがスペースシャトル公式記念品として宇宙に持って行き、地球を238周=15日2時間47分10秒の旅をして帰還した生命力のある貴重な種子です」と説明が添えられていた。”宇宙”と名が付くと途端に興味が湧き、育てることに決めた。
植木鉢や土を買いに行くところから始まった。
お店の方に尋ねると「みなさん小学校で育てたイメージがあるので小さめの鉢を選びがちなんですけどね、このくらいあった方がいいです」と直径25センチほどの鉢を渡され、合わせて土もたっぷり買って帰った。
家族と一緒に”種まきの儀”を終え、毎日水をあげていると数日で芽が出てきた。
芽が出た後の説明には「元気そうな芽を残して間引いてください」とあった。
間引く…わたしはこれが本当に苦手だ。
文字通り可能性の芽を摘んでしまうから(この芽も本当は大きく育って花になれたのに)と申し訳ない気持ちになってしまう。間引いたものを植え替えられる鉢もない。そのため、ひとつの穴にひとつの種を埋めていた。
複数の芽からの選抜チームではないが、どの芽も元気そうで安心した。さすが「宇宙から帰還した生命力あるアサガオ」だ。
毎日水をあげる度にぐんぐん育ち、蔓も支柱を探して勢いよく絡みついてゆく。暑い中でも葉から蔓からエネルギーがほとばしり、全身に生命力がみなぎっているように見える。
比較対象となる経験や他のアサガオがないため、なにかあると二言目には「さすが宇宙アサガオ」と喜んでしまう。
そうこうするうちに、畳んだコウモリ傘のようにキュッと先端が尖った蕾ができた。
「これは明日咲きそうだね」
家族と話しながら眠りについた。
翌朝、きれいな青色の花が咲いていた。濃くも薄くもなく、青空そのものを映したような色だった。あの黒くて小さな種がきれいな花を咲かせて…と感慨深い。
夕方になり洗濯物を取り込む際に見ると、
花は赤みがかった濃い紫色に変わっていた。(え、宇宙だから…?)
驚きつつ調べてみると、
「アサガオの花は朝は細胞液のpHがアルカリ性寄りで花は青色ですが、細胞内のpHが酸性に傾く夕方には花の色は赤みがかることがあります」と書いてあった。宇宙は関係ないらしい。
それでも小学生の頃の細かな栽培記憶がないわたしにはとても新鮮だった。
人間も朝と夕方で顔つきや体調が変わるが、別人のように色を変化させてしまうアサガオに思い切りのよさを感じた。
夏も終わりに近づき、たくさんの花が枯れた後に種が出来始めた。宇宙アサガオの子?となる、宇宙成分を含んでいる(かもしれない)種がたくさんとれそうだから、実家などへお裾分けするつもりだ。色が変わった花を見て「宇宙だから?!」と驚く姿を想像してニヤリとしながら渡すだろう。