マガジンのカバー画像

テニス関係者の法律相談室~弁護士の視点~

46
テニス関係者に損をして欲しくない!そんな思いから、テニスバカな法律関係者が、テニス関係者が遭遇する様々な場面を法律的な面から解説します!
運営しているクリエイター

#テニス

テニスにおけるオリンピック代表選手決定の方法③紛争事例の紹介

テニスにおけるオリンピック代表選手決定の方法③紛争事例の紹介

 前回の投稿で、オリンピックにおけるテニス競技の国別代表選手の決まり方について解説しました。

 今回は、実際に紛争になった2つの事例を紹介します。

 一つは、2008年の北京大会のものです。スポーツ仲裁裁判所(CAS。スイスのローザンヌにあるスポーツ紛争の解決組織です)のアドホックディヴィジョン(オリンピックの時だけ設置される特別部)の事例です。
 この事例は、シングルスのドイツ代表が誰になる

もっとみる
テニスにおけるオリンピック代表選手決定の方法②テニス競技の「決まり」を見てみる

テニスにおけるオリンピック代表選手決定の方法②テニス競技の「決まり」を見てみる

前回の投稿で、オリンピック代表選手の決定方法は、IF(国際競技連盟)が定めるOlympic Qualification System(以下、「OQS」といいます)によって決められているという話をさせていただきました。

では、テニスにおける代表選手決定の方法を見てみましょう。
東京五輪において、テニス競技のIFであるITFが策定したOQSは、こちらです。
まず、これを見ると、代表選考の方法は「(T

もっとみる
法律家ってどんな専門家?③テニスのルールを題材に

法律家ってどんな専門家?③テニスのルールを題材に

前々回↓
https://note.com/lawyeryamamoto/n/nb12fe3765daa
と、前回↓
https://note.com/lawyeryamamoto/n/n47d56c6fbd3b
の続きです。

事例のおさらいをしておきましょう。
私が、かみおひろみち@Kamy1126先生とテニスのシングルスのゲームをしていました。しかし、ゲームの途中、かみお先生が「山本がボール

もっとみる
法律家ってどんな専門家?②テニスのルールを題材に

法律家ってどんな専門家?②テニスのルールを題材に

前回↓の続きです。
https://note.com/lawyeryamamoto/n/nb12fe3765daa

前回は、テニスのルールを題材に、法律を事実に適用するというのはどういうことかを考えてみました。

今回も、同じようにテニスの事例を思い浮かべます。
私が、またかみおひろみち@Kamy1126先生とテニスのシングルスのゲームをしていました。しかし、かみお先生はなかなか本調子が出ない様

もっとみる
今更聞けない、スポーツ団体ガバナンスコードって何?の話(第2回/全8回)

今更聞けない、スポーツ団体ガバナンスコードって何?の話(第2回/全8回)

こんにちは。弁護士の紙尾浩道です。

今更聞けない、スポーツ団体ガバナンスコードって何?の話(第2回/全8回)をします。

第1回を読みたい方は、ぜひこちらをタップしてみてください!

前回、スポーツ団体ガバナンスコード(以下、「GC」と略しますね。)には、大きく2種類あり、①国内統括団体(NF)向けと、②一般スポーツ団体向けがあると説明しました。

本日は、②について見ていこうと思います。

もっとみる
今更聞けない、スポーツ団体ガバナンスコードって何?の話(第1回/全8回)

今更聞けない、スポーツ団体ガバナンスコードって何?の話(第1回/全8回)

こんにちは。弁護士の紙尾浩道です。

今日から、数回に分けて、いつもより少し真面目な企画を開始します。

今更聞けない、スポーツ団体ガバナンスコードって何?の話(第1回/全8回)です。

さて、なんか難しそうな言葉が出てきましたよねぇ。

でも大丈夫です。わかりやすく解説します。

少し込み入った話をしてる部分は網掛けがかかっていますので、難しいの嫌!という方は、網掛け部分を読み飛ばしてください。

もっとみる
法律家ってどんな専門家?①テニスのルールを題材に

法律家ってどんな専門家?①テニスのルールを題材に

裁判官、検察官、弁護士を総称して「法律家」といいます。

法律家というと、どんな専門家だと思いますか?
法律を全部知っていて、聞けば頭の中から法律が出てきて解決してくれる?
そういうイメージを持たれる方が多いのですが、さすがにそんなに万能ではありません(笑)。よく使う法律はそうできることもありますが、法律は無数にありますし、さすがに調べないとわからないこともあります。

僕なりの解釈ですが、法律家

もっとみる
アスリートの盗撮と法的責任

アスリートの盗撮と法的責任

近時、JOC(公益財団法人日本オリンピック委員会)が、アスリートへの写真・動画による性的ハラスメント防止の取り組みを強化することを発表しました。
これは、アスリートの競技中に性的目的を想起させる構図で写真撮影したり、撮影した写真をSNSに性的文脈でアップするなどの悪用が、アスリートの尊厳を害し、社会問題となっていることから、個々のスポーツ団体や競技会単位による対応ではなく、スポーツ界全体として対応

もっとみる
テニス中の事故と法的責任 4/4「過失が認められた事例」

テニス中の事故と法的責任 4/4「過失が認められた事例」

テニス事故の法的責任の記事の最後は、法的責任が認められた事例です。
事案は、球拾い中に起こった事故の事例です(横浜地判昭和58年8月24日判時1091号120頁)。

【事案の概要】
 本件の原告は,初級者クラスに在籍するテニススクールの生徒でした。当該レッスンでは,コーチが球出しを行い,ベースラインに立った生徒2名がバックハンドを打つという基本的な練習をしていました。ただこの時,コーチは残りの生

もっとみる

テニス部顧問の体罰と法的責任(その1)

こんにちは。弁護士の紙尾浩道です。

今回は、テニス部の顧問の先生が、体罰を加えてきたらどうなるかを見ていきたいと思います。

顧問の先生が体罰を加えてきた場合、①刑事責任、②民事責任、③学校に対する責任の3つの責任が生じますが、今回は①刑事責任を見てみます。

刑事事件とは、国が、とある人の財産や自由に制限を加える「刑罰」を与えることを目的とする手続です。

なぜそんなことが必要かと言えば、ほか

もっとみる
規約のコピーは適法?

規約のコピーは適法?

こんにちは。名古屋の元テニスコーチ弁護士の柳川豊です。

ATPはいよいよ最終戦のNitto ATP ファイナルズがイギリスで行われていますね。

私は、昨年度の同大会に優勝したチチパス選手に注目しています。昨日は、全米オープンの覇者ドミニク・ティエム選手に惜しくも負けてしまいましたが、あの力強いフォアハンドストロークと片手のシングルハンドストロークは魅力的ですよね。

何はともあれ、上位8名しか

もっとみる

複数のスクールで働く行為は禁止?

本日はテニスコーチに関わる法律問題のうち、複数のテニスクラブを掛け持ちしたり、退職後新たなテニススクールで働くことが禁止され、その違反に対して損害賠償請求をされるなど恐ろしいことにもなりうる、という点をお話したいと思います。

・競業避止義務

テニスコーチが他のスクールでも働くこと、自らプライベートレッスンを行うことや、独立してテニススクールを経営することは、よくあることと思います。しかし、スク

もっとみる
テニス中の事故と法的責任 2/4「過失」

テニス中の事故と法的責任 2/4「過失」

前回の記事では、テニスのプレー中に生じた事故によって法的責任を負う場合の、責任の根拠について記載しました。
そこにおいて、しばしば「過失」という言葉が出てきました。
今日はこの「過失」という概念についてお話ししたいと思います。

「過失」というのは、一般的な用語だと、ミスです。
もちろん法律用語というのは一般的な用語に即して作られているので、ざっくりいうと、「ミス」と理解していただいたいいのですが

もっとみる

コロナで合宿がキャンセルになってしまったら、合宿費は払わなければならない?(後編)

こんにちは、弁護士の紙尾です。

前回は、宿と学校の契約書がある場合のことを解説しました。

今回は、契約書なんてないよ!という場合です。むしろ、毎年決まった宿にお願いしている場合などは、この方が多いのではないかと思います。合宿に行った際に、顧問の先生や、代表者が、「来年もまたよろしくお願いします。日時は、令和3年8月17日から8月23日で」などとやっているのではないでしょうか。

原則として、契

もっとみる