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アスリートの盗撮と法的責任

近時、JOC(公益財団法人日本オリンピック委員会)が、アスリートへの写真・動画による性的ハラスメント防止の取り組みを強化することを発表しました。
これは、アスリートの競技中に性的目的を想起させる構図で写真撮影したり、撮影した写真をSNSに性的文脈でアップするなどの悪用が、アスリートの尊厳を害し、社会問題となっていることから、個々のスポーツ団体や競技会単位による対応ではなく、スポーツ界全体として対応を強化しようとするものです。

問題の発端は陸上競技のアスリートからの被害申告のようですが、テニスももちろん例外ではありません。また、選手だけでなく、ボールパーソンなども被害者になりうるでしょう。
今日は、こうした行為を行った場合の法的責任について考えたいと思います。
まず盗撮については、当然、被害者から加害者に対する損害賠償請求が考えられます。人には、その肖像をみだりに利用されない(撮影されない、使用されない)権利があります。いわゆる肖像権です。こうした権利の侵害により、加害者は不法行為による損害賠償責任を負う可能性が高いです。
刑事責任も考えられます。各都道府県の条例では、一般に、公共の場で人に対する卑わいな言動をすることが禁止されています。通常、盗撮というと衣服の中を撮影する行為などを思い浮かべがちですが(これは条例で直接禁じられている場合が多いです)、そうではない服の上からの姿の撮影も、その方法や内容によっては「卑わいな言動」に該当するとして処罰の対象になる場合があります(検挙例あり)。

バレなければ大丈夫では・・・?と思ってはいけません。
たとえば東京2020大会では、おととい、同大会会場での禁止行為に「性的ハラスメント目的の疑いがある選手の写真や映像の撮影」を追加し、入場者の順守事項に、「主催者から撮影画像の確認を求められた際には応じること」との項目を追加したとの報道がありました。こうした規定は、オリンピックやパラリンピックに限らず、様々な競技大会で導入されていくことでしょう。こうした確認により発覚し、法的責任を問われるケースが想定されます。

もっとも、これを読むと、加害者から「いや、そんな目的はなかったんだ!」と言い逃れが可能では?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、法の局面では、内心を直接証明することは難しいので、客観的な状況から推認するという方法がよくとられます。そうすると、写真の構図やアングルが性的なものを推認させるものであったりすれば、内心の性的目的がそこから推測されることもありうるのです。
「えん罪」にならないように注意する必要はありますが、対策が強化されている以上、疑わしい行為は避けなければいけません。

SNS等による画像の投稿も法的問題をはらみます。
SNSへの性的文脈での画像投稿などは、被害者の名誉を害するでしょう。民事上の不法行為による損害賠償責任を負う可能性がありますし、刑事上も名誉棄損罪等に問われる可能性があります。
投稿だけでなく、こうした意図を感じるツイートなどを目にしたら、絶対にリツイートなどもしてはいけません(同罪になります)。
匿名であってもその出所を調べることは可能ですから、これも、バレなければ大丈夫、という理屈は通用しません。

アスリートに対する、卑劣な行為がなくなることを切に願います。

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