「聖地の二人 ローマ編」・・・あっという間に読める超ショートショート
今回は、ちょっとほのぼの。少し前のこと、仲の良い女友達二人が、旅行に出かけた時の出来事。怪談でもホラーでもない。旅のワンシーンだけど、 じっくりとその言葉の向こうを考えると、じわっと何かが迫ってくる。
「聖地の二人 ローマ編」
一昨年、ちょっと長い休みが取れたから、旅行に行こうっていうことになって、
丁度、安いツアーがあったから申し込んだの。
幼馴染の裕子が前から行きたがっていたローマ。
もちろん、裕子の大好きな「ローマの休日」の舞台を二人で回るためよ。
まさに聖地巡礼ね。
トレビの泉でコインを投げて。
真実の口に手を食べられて。
最後に回ったのが、スペイン広場。
「ジェラート買って来るね」
当然のように、裕子は嬉しそうに駆けて行った。
ヘプバーンのように、ジェラートを食べるのが夢だったんだって。
この日の為に、わざわざ美容院でそっくりにセットしてもらって。
あの情熱には恐れ入るわ。
ところがね、
話はそう簡単じゃなかったのよ。
ウキウキステップで走って行った裕子は、
しばらくして泣きながら帰ってきたの。
「どうしたの?」
と聞くと・・・
「映画のせいで人がたくさん来すぎて、一時ゴミがひどかったんだって、
だから今では、環境美化の為にスペイン広場の周りは飲食禁止になってるんだって、
そんな事ってあるぅぅぅぅ。え~ん」
なにも泣くことは無いと思うでしょ。
でも、裕子ったら、
まるで長年付き合ってきた彼氏に振られたみたいに
しょんぼりしてたのよね。
ちょっとヤキモチ焼いたみたいな変な気分になっちゃった。
でも、そのまま放っても置けないから、仕方なく慰めてあげようと、
裕子の肩に腕を回そうとしたらね。
「ねえ! 次のナポリは、ピザがと~ても美味しいらしいよ。知ってた?」
・・・なんて、突然裕子は明るく言い放ったのよ。
台詞のおしまいに、ハートマークを20個くらい付けて!
バスに描かれていたピザの宣伝を思い出したらしいんだって。
私は「ジェラートはもう良いの?」
と言いかけた言葉を飲み込んで
幸せそうな裕子の笑顔をじっと見つめたわ。
美味しいものと、裕子がいれば・・・私は幸せ。
そう・・・本当に、本当に他には何にも、要らないのよ。
おわり
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