【独学精神医学#6】感情障害とは?うつ病と双極性障害について徹底解説
今回は、統合失調症と並んで深刻な精神疾患ともいわれている「うつ病」、および「双極性障害」についてをまとめてみました。
特に「うつ病」は、精神疾患の中でも一番馴染み深い疾患なのではないでしょうか?
とはいっても、具体的にどんな病気?と聞かれると、詳しく答えられる方は少ないと思います。
このような基本的な部分をまとめていますので、どうぞご一読ください。
そもそも「うつ病・双極性障害」とは?
まず、「うつ病」と「双極性障害」は、どちらも「感情障害(気分障害)」に分類されます。
「感情障害」とは、感情や気分の調節に関連する精神疾患の総称で、異常に高揚した気分になり活動性が極端に高まる「躁状態」や、憂鬱感や無気力感が持続する「うつ状態」がみられることを特徴とします。
その躁状態とうつ状態のどちらがみられるかにより、「うつ病」と「双極性障害」が分類されるのです。
この記事では、世に広く知られている「うつ病」と「双極性障害」という言葉で説明していこうと思います。
基本情報
⋄うつ病
うつ病の生涯発症率は男性で16%、女性で22%と女性の方が高く、有病率は男女で10~15%と、6人に1人がうつ病と診断される可能性があるという非常に頻度の高い疾患です。(統合失調症は100人に1人弱)
また女性の方が1.5~2倍うつ病にかかりやすいということになりますが、この理由は以下のように考えられています。
初発年齢は20代半ばとされていますが、統計上は各年代に幅広く分布しています。また都市部移住者に多いとされています。
⋄双極性障害
一方双極性障害の発症率に関しては、診断の問題などにより、はっきりとした結果はまだ得られていません。
全体の95%が20代半ばで発症しており、うつ病と比べて遺伝的要因が大きく性差はないとされています。
発症の原因とされるもの
感情障害の病因は、はっきりとはわかっていないのが現状です。
というのも、遺伝的な要因や個人の脳機能の差、性格や心理的ストレスの度合いなどの要因が複雑に絡み合った結果、発症につながると考えられているためです。
しかし、脳や血管を調べてみると、うつ病とそうでない人で明らかな差があることが報告されています。うつ病の場合、海馬の委縮が確認され、神経細胞の傷害の可能性が示唆されています。また高齢者のうつ病では、前頭前野や帯状回の機能低下が報告されており、血管性変化が確認されていることから「血管性うつ病」と名付けられる症例も出てきました。
また、患者自身が持つ性格に関しては以下のような関係性が知られていますが、欧米圏では性格に関係はないとも言われています。
うつ状態・躁状態でみられる症状
⋄うつ状態
うつ状態では、以下のような気分の障害がみられます。
特にこの中の、「希死念慮」はなかなか厄介で、実際に自殺を遂行してしまう既遂率は15%にも及びます。これは全自殺者の60%をも占めるため、深刻な社会問題ともいえるでしょう。
また次のような身体症状も特徴です。
⋄躁状態
躁状態の特徴は以下の通りです。
また、双極性障害では多弁で興奮状態であるが気分は不快で不機嫌など、うつ状態と躁状態が両方みられる「混合状態」がみられることもあります。
次に、具体的にどんな条件が当てはまると「うつ病」、「双極性障害」またはその他の傷害と診断されるのかを見ていきましょう。
うつ病の種類とその診断
⋄うつ病(大うつ病)
うつ病の診断は、2000年にアメリカ精神医学会用語統計委員会により発表された「DSM-Ⅳ-TR」という基準によると以下のように判断されます。これらの基準を「大うつ病エピソード」と言います。
※わかりやすいよう多少文面を変更しています。
このうち、①~③を全て満たし、さらに①で当てはまる症状がほぼ一日中、2週間以上継続する場合にうつ病(大うつ病とも)と診断されます。
⋄気分変調性障害
これらの基準を満たさない「軽うつ」の状態が長く続く場合は、「気分変調性障害」と呼ばれます。
⋄非定方うつ病
うつ病の中でも、一般的にみられる症状と異なり次のような症状がみられる場合は、特に「非定方うつ病」と分類されます。
⋄双極性障害 ~双極Ⅰ型・Ⅱ型の違い~
また、双極性障害は「躁状態」の度合いによってⅠ型とⅡ型に分けられます。この時の診断基準に、「躁病エピソード」「軽躁病エピソード」といったものが使われますので以下にまとめます。
※わかりやすいよう多少文面を変更しています。
このうち、躁病エピソードに当てはまり、入院が必要なほど重症である場合は「双極Ⅰ型障害」に、躁病エピソードには当てはまらないが「大うつ病エピソード」と「軽躁病エピソード」にそれぞれ1回ずつ当てはまる場合は「双極Ⅱ型障害」に当てはまります。
⋄気分循環症障害
これらの基準を満たさない程度の軽い躁・うつ状態が長く続く場合は、「気分循環症障害」と呼ばれます。
⋄新型うつ病
また、趣味など好きなことをやっているときにはうつ症状がみられないが、会社などへの出社のことを考える時に発症するケースは「新型うつ病」と呼ばれているが、これは医学用語ではないとされています。
症状の進行過程
⋄うつ病
未治療の場合は6~12か月続き、適切な治療法を受けると3~6か月で治るとされていますが、再発(確率60%)を繰り返すとさらに長引いてしまいます。
うち10%が双極性障害に移行するとされており、1年後に症状がある程度収まる確率も50%に満たないとされています。
⋄双極性障害
うつ状態の症状から始まることが多く、期間は3~6か月ほどといわれていますが、若くして発症した場合はより期間が短くなり「躁⇔うつ」の反復が多くなります。
ある程度長期的に症状が続く場合、約30%の患者がその後も慢性化してしまうといわれています。
治療法
薬物療法と精神療法が主に行われます。
特に、「双極性障害」には薬物療法が有効とされていますが、「うつ病」には精神療法も非常に有効とされています。
⋄うつ状態への薬物療法
先ほど診断基準の部分で紹介した「大うつ病エピソード」に当てはまる場合は、以下の薬を2週間以上服用することが推奨されます。
それでも症状が改善されない場合は、さらに強い薬へと変更していきます。
⋄躁状態への薬物療法
一方「躁病エピソード」に当てはまる場合は、以下の薬が有効とされています。
特に、双極性障害を過去に2回以上経験している場合は、これらの薬の永続的な服用が推奨されます。
⋄精神療法
一般的に活用される精神療法は以下の通りです。薬物療法と併用した持続的な実施が必要とされます。
⋄実際に精神科医さんが気を付けていること
様々な精神療法をたくさん紹介しましたが、それ以前に担当の精神科医の先生とのコミュニケーションが大切になってきます。
そこで、特にうつ病の患者さんに接するときに精神科医の先生方が気を付けていることをまとめてみました。
このような対応は、私たちの周りの方がうつ病にかかってしまった時も参考にできそうですね。
まとめ
今回は「うつ病」と「双極性障害」について、基本情報から症例、具体的な判断基準、治療法などをまとめてみましたが、いかがでしたでしょうか?
文中でも触れましたが、「うつ病」や「双極性障害」で非常に恐ろしいとされるのは、自殺を誘導してしまうという点です。
また、以前ご紹介した「統合失調症」のように具体的な病因が分かっているわけではないのも恐ろしいところです。
※統合失調症についてはこちらから↓
うつ病・双極性障害の引き金になるような要因を避けるためにも、日ごろからの適度なストレス発散や周りとの良好な人間関係づくりを心がけましょう。
どうか一人でも多く、うつ病や双極性障害に縁のない生活が送れますように。
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ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
今回も本やネットで情報を調べながら記事をまとめたのですが、個人的にはうつ病として診断されるときの診断基準が思っていた以上に深刻で驚きました。
(「うつ病」という言葉をあまりにも多く耳にするので、症状はさすがにもう少し軽いものだと思っていました…。)
うつ病に当てはまる人数もただでさえ多いのに、それに加えて「基準には達しないがうつ病の傾向」がある、という人もかなりいるだろうと考えると何とも言えない気持ちになりますね。
… …
そんな方を今よりももっと救える日が来ると信じて、うつ病の改善に有効性がみられた治療法の最新論文なども見つけたら随時共有していきたいと思っています!
ぜひ他の記事も覗きに来ていただけると嬉しいです。それではまた👋
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