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ママパパにも知ってほしい! 第2回(後半)「三大栄養素を知る―タンパク質の重要性」
こんにちは。医師の本間龍介です。
今回は、第2回のテーマ、「三大栄養素を知る」の後半です。
前半では、脂質と炭水化物の機能性や、その質と量に関する善し悪しを、具体的にお伝えしました。
後半では、三大栄養素のなかで最も重要なタンパク質のお話をします。
重要だけどアレルギーを起こしやすいタンパク質
私は常々、最も重要な栄養素はタンパク質だとお伝えしています。しかし、タンパク質は科学的にいうとアミノ基で構成されているので、非常にアレルギーを起こしやすい物質の一つです。偏りなく色々なタンパク質をローテーションして食べることをおすすめめします。
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タンパク質の代表的な食品といえば、肉、魚、豆です。
例えば豆は、日本であれば主に豆腐や納豆のような大豆食品が多く、どれも素晴らしいタンパク質ですが、近年アレルギーになる方が増えています。
意外なことに牛肉も、アレルギーを起こしやすいことが知られています。
アレルギーを起こしにくい鶏肉ですら、慢性のフードアレルギーに陥らないためにも、偏って食べ過ぎないようにしていただきたいです。
そもそも人間の体を構成する筋肉も骨も、タンパク質で構成されています。しっかりタンパク質をとる生活をしてください(実は骨も、タンパク質であるコラーゲンを主体に、カルシウムなどが付着して構成されています)。
最近、お子さんの朝食に菓子パンやおにぎりといった炭水化物だけを食べるケースがとても多いです。このように炭水化物だけを摂取すると、血糖値のアップダウンが激しくなって午前中の授業で眠くなってしまいます。可能なら、豆腐や鯵の開き、鮭の切り身を焼いて朝食にすることをおすすめします。
この魚のタンパク質は非常に有用です。フィッシュオイルにはオメガ3の油が豊富に含まれるので、ぜひ魚は食べていただきたいと思います(次回のテーマは油ですから、フィッシュオイルについてはその際に詳しくお話しします)。
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そもそも日本人は、他国に比べて魚をよく食べるおかげで、健康なのではないかといわれています。
40年ほど前、世界中の健康問題をアメリカの研究者らが調査した有名なレポートがあります。その一つに、なぜ日本人が長生きなのか、という報告がありました。当初研究者らは、日本の医療は素晴らしいのだろうと考えていましたが、調査してみると、当時の日本の医療は意外に遅れていると感じたそうです。
ではなぜ長生きなのかというと、日本人の魚を食べる食生活が理由だと報告しています。例えば、居酒屋でお刺身や焼き魚を食べる文化は、おそらく世界的に見てごく稀です。お酒の席ではビールとフライドチキンくらいしか食べない国が多いなか、日本人の魚を取り入れる食文化はとてもヘルシーだと思います。ぜひ、魚を食べる習慣は続けていただきたいと思います。
一つ問題なのは、水銀という水俣病に代表される有害重金属が魚に多いことです。ただし、すべての魚ではありません。マグロや鮫などの大型魚です。
なぜ問題なのかというと、水銀などの有害物質はエネルギー生産の場であるミトコンドリアのTCA回路を動きづらくするからです。ツナ缶を含むマグロは楽しむ程度にして、食べ過ぎないほうがいいと思います。
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大豆に関しては、アメリカ人には大豆アレルギーが多いので大豆を避けるようすすめる先生も多いです。しかし日本人は昔から、味噌、醤油、豆腐として食べているので、世界的に見ても大豆アレルギーを起こす人は少ないです。しかし、生の豆乳だけはアレルギーを起こしやすいので、加熱したほうがいいでしょう。
それから、アメリカの主流な大豆は遺伝子組み換えであるため、大豆のトラブルが多いと考える先生もいます。
NON-GMO(Genetically modified organism)というのは、遺伝子組み換え作物でないことを意味します。幸いにも日本では遺伝子組み換え表示制度があります。日本国内で生産される大豆は遺伝子組み換えではありません。
もちろん今後、遺伝子組み換え大豆が皆さんの食卓に上がってくる可能性は高いです。どんなかたちで注意すべき商品が出回るかわかりません。そんなときに、こうした可能性を知っていれば食品選びに役立つでしょう。つまり、自分の身は自分で守らなくてはいけないということです。
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体の調子がよくなければ、タンパク質は消化吸収できない
さて、タンパク質の吸収は、胃や小腸で沢山の消化酵素を必要とするので大変です。
その工程ですが、まず胃でペプシンと胃酸に触れ、そして小腸で膵液からのトリプシンに触れ、最後に、ペプチダーゼによってアミノ酸に分解されて初めて吸収されます。ところが乳糖やショ糖は、たった1種類の消化酵素だけで吸収されてしまいます。
このように比較すると、タンパク質の吸収がいかに大変であるかがわかります。
しかも、このペプシンやトリプシンといった消化酵素は、胃酸のpH値が最適でないとタンパク質を吸収できません。
よく体調の悪いときに、おかゆやうどんやプリンのような甘いものを食べたくなるのは、 吸収が簡単でエネルギーとして血中に入れやすいからです。
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つまりタンパク質は、まずよく噛んでペプシンと胃酸とを混ぜ、pH値が最適な状態のトリプシン、ペプチダーゼの順に触れることによって初めて吸収できるのです。
このように、私が特に一番大事な栄養素はタンパク質だと表現する理由は、ほかの栄養素よりも吸収しづらいことにあります。
そして、体の状態がよくなければ、タンパク質を体の材料となるアミノ酸としてしっかり吸収できないということです。
もし、肉や魚のタンパク質を食べたくないときは、体調や消化機能が芳しくない可能性が非常に高いということです。
ですから、朝からステーキをおいしく食べられる人は、しっかり消化酵素が出ていて、腸の動き、蠕動(ぜんどう)運動もいい状態にあるでしょう。
逆に、朝はあまり食べられないからパンだけ、ご飯だけという方は、
腸が炭水化物しか受け付けない状態か、何かしら問題がある可能性を知っていただきたいです。
そもそも日本人を含むアジア人は全般に、胃液が出にくい上に、胃酸に弱い民族です。外来でも安易に胃薬を出されますし、薬局でも様々な胃の市販薬が売られているのは、老若男女、胃薬の必要な人が多いからです。
しかし、胃薬を飲むほど胃酸は抑えられて、タンパク質の吸収は悪くなります。本当に必要なときは飲むべきでしょうが、必要のない胃薬は飲むべきではないと思います。
逆にアメリカでは、お腹が痛かったり、お腹の調子が悪くて食欲がないと、塩酸のタブレットを処方するドクターもいます。要は胃酸が適切に出ない代わりに塩酸を処方するから、早くタンパク質を吸収できるようにして元気になりましょうというのです。日本の医療では理解し難いですが、むしろ合理的なのかもしれません。
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肉を食べることは精神の健康にも効果的
肉を食べる重要性として、筋肉や骨をつくることはお話ししましたが、
もう一つの肉を食べる重要性として、セロトニンの分泌があります。
セロトニンは、脳をハッピーにする神経伝達物質で、タンパク質が分解されてアミノ酸になると生成されます。
その工程ですが、まず肉が消化酵素で分解されるとトリプトファンというアミノ酸になります。トリプトファンは必須アミノ酸の一つですが、肉類に多く含まれます。
このトリプトファンから生成されるセロトニンは、精神を安定させてくれます。ですから、脳の状態をよく保つために、ちゃんと肉を食べて、分解し、吸収することの重要性を知っていただきたいです。
さらにセロトニンは、メラトニンという睡眠に関わるホルモンの原料となりますから、メラトニンが脳でつくられている方は夜しっかり眠れるのです。
20代や30代の方で眠れない、不眠という場合には、肉を食べていないせいでトリプトファンがとれず、セロトニン、メラトニンがつくられていないのかもしれません。
もしくは、メラトニンが光で分解されているのかもしれません。
メラトニンがつくられていても、夜スマートフォンでyoutube動画を見ると、メラトニンが光で分解されて、眠れなくなってしまうこともあります。
ですから、脳や体がいい状態であるために、タンパク質を偏りなくとりながら、その吸収のされ方や機能をよく理解することが大切です。
次回は、「乳製品とカゼインフリー/小麦とグルテンフリー」がテーマです。どうぞお楽しみに!