”北海道の地酒”を目指すブランドの立ち上げ。
きっかけは学生時代から感じていた違和感
筆者は大学は東京農業大学を卒業し、日本酒製造の道に入った。日本酒業界に長く携わっているが、日本酒を扱うサイト、日本酒特集の雑誌、どこを見ても”北海道”の文字がない。まるで日本酒は東北までしか造られていないかのよう。実際に「北海道で酒を造っている」と言うと「北海道でも日本酒が造れるの!?」と驚かれたこともある。それほど”北海道の酒”の認知度は低い。だからと言ってマイナスではない。イメージが無いなら自分たちの酒を”北海道の酒”として認知してもらえるチャンス。
とはいえ、今すぐにではない。100年かけて私たちはこれからの北海道の地酒のブランドになるべく、新たなブランドを立ち上げました。それが『五色彩雲(ごしきのくも)」。ブランドの立ち上げに当たり、様々なこだわりを詰め込んでいます。
『五色』(私たちは略称をそう呼んでいる)を飲みながら読んでもらえると嬉しいです。
ブランドネーム
五色彩雲(ごしきのくも)由来
このネーミングはいくつかの由来から構成されています。
① 北海道の神話より
北海道の先住民族アイヌの神話【天地開闢(てんちかいびゃく)】の中で五色の雲による世界の構築が語られているのが由来です。私たちが造るブランドが新たな世界を創るきっかけになればという想いを込めています。
② 日本文化では阿弥陀如来との関り
北海道だけではなく、日本の文化との関りとして阿弥陀如来が天上から降りてくる際にのってくる雲が五色雲と言われています。
③ 酒蔵のある地域そのものがブランドの世界観
五色彩雲を造る福司酒造は北海道の釧路市にあります。釧路市はインドネシアのバリ島、フィリピンのマニラと並ぶ世界三大夕日の街として知られており、ハイシーズンには街の中心にある幣舞橋が観光客であふれるほどです。その橋から眺める夕日が雲に映り多色な色彩を生み出す様子が由来となっています。
④ ファーストブランドとの関り
釧路の地酒として地元で愛され続けているファーストブランドは「福司(ふくつかさ)」という銘柄です。”福をつかさ(司)どる酒”として縁起の良い銘柄として親しまれています。セカンドブランドもファーストブランドの志を引継ぎ縁起の良いネーミングをと付けられました。
五色雲は別名、彩雲(さいうん)や瑞雲(ずいうん)とも呼ばれ吉兆のしるしとも言われています。
ブランドページ
2024年2月9日 ブランドページを公開いたしました。
ブランドページは私たちが考えるブランドの世界観を伝えるページです。これまでの日本酒は裏ラベルに十分な情報を記載することで消費者にお酒のことを伝えてきましたが、それ以上先のことを伝えるまでの導線がありませんでした。今回、五色彩雲では裏ラベルでの情報を記載義務以上はあえて載せず、情報を必要とする方にはブランドページへ誘導し、ブランドの世界観や造られている地域の情報を見ていただく流れを作るのが狙いです。
デザインテーマ
デザインのテーマは「モダン×クラシカル」。
蔵としては新しい手法を取り入れ、今までのブランドとは異なる方向性で酒造りに挑む五色彩雲。
ラベルへの想い
ラベルは日本酒の顔とも言われ、重要な役割を果たします。五色彩雲でもラベルの製作にはこだわりを持ち、デザイナーに作成していただきました。
五色彩雲のラベルは漢字ロゴ、英字ロゴ、シンボルマーク、曲線、そしてカラーの5つのファクターが組み合わさってできています。
曲線
曲線は雲と釧路の霧を表現しています、しっかりとした形状を把握できる雲ではなくどこかつかめない、靄(もや)のような雲。不安定でありながらも自由に形を変える。形式にとらわれるのではなく自由な表現を示しています。
シンボルマーク
五角形は万物を形成する5つの要素(火・水・木・金・土)を頂点に持つ完全体とされ、「万能」や「成功」を意味する図形とされています。五色もまた5つの要素を持つことから五角形をモチーフにした。5つの頂点から出る棘のようなものは、北海道のアイヌの文様を取り入れている。アイヌの文様は魔除けの意味合いがあり、このシンボルマークにもアイウシ(棘紋)を入れることで、長く親しまれるブランドになることを願った。
デザインを担当してくれたのは株式会社ワッカの小野寺さん。釧路に住んでいるころに出会い、いつか日本酒のラベルデザインをしたいという熱い想いを知りお願いするようになりました。親しみを込めて「ちほっしゅ」と呼んでいます。五色彩雲の他、秋のお酒「YONAGA(よなが)」のラベルデザインも依頼しました。今回五色彩雲の立ち上げにもかなりご尽力いただき、ライターさんやカメラマンをつなげてくれたのも小野寺さんです。このブランドにかかわってくれた方々もゆくゆく紹介したいと思います。
カラー
四季の移ろいの中に美の心を生み出した様々な伝統色。日本では古来より暮らしの中に多彩な色合いを取り入れ、繊細な色の世界を見出し、その豊かな情趣を愛でてきました。
日本の色彩は、海外の色彩より淡く優しい色合いで、名称にも風情を感じます。それらは多くの絵画、染織物、陶芸、詩歌、文学として、生活や文化の中に深く息づいています。歴史の流れの中でつけられた和の色は、名前も美しく風雅です。この土地の文化を表現する日本酒として、色もまた伝統色から選んでいます。
キャッチコピー
『仕込んでいるのは100年先を想う地酒。』
2019年に創業100年を迎えた福司酒造。それまでは100周年を目標の1つにしていました。100年を迎え次なる目標は?と考えたとき、実は100年先が見えませんでした。VUCA時代と言われ「先行きが不透明で将来の予測が困難な状態」⇒未来の予測が困難な時代と言われています。そんな時代に100年先のことを公言することは無謀にも等しい。でも目標として掲げ、そのための今を生きることが無謀ではないはずです。
創業者は100年先のことは考えなかったかもしれません。しかし、地酒を創る会社としてどうしたら残るかは考えていたはずです。私たちもこの先、この土地でお酒を造り続け、地酒として親しまれるための環境を維持していくために、日本酒の製造技術の研鑽とその技術を受け継ぎ伝える人材の育成を課題としました。
このキャッチコピーは、単にお酒を仕込んでいるという意味だけではありません。「仕込み」には準備などの意味もあります。100年先まで続く地酒として、今からその準備をしていこうという意思を言葉にしてもらっています。
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