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太宰治「皮膚と心」を解説。人間臭さを描いた名作。

 どうも宇宙ゴリラです。マスクをつける機会が増えて、肌荒れになることが多くなりました。肌が荒れてニキビとか吹き出物ができてしまうとちょっとへこみますよね。気にしないようにしていても、鏡を見るたびに「あーできてるな」と思ってしまいテンションが下がります。マスク着用が当たり前になって、肌荒れに悩んでいる人も多いと思いますので今日は吹き出物が題材になった短編小説『皮膚と心』を紹介したいと思います。

 『皮膚と心』は太宰治が1939年に書いた短編小説で、吹き出物に悩む女性が主人公の作品です。今から約80年以上前に書かれた作品ですが、軽妙な語り口調で描かれる女心は、今もなお、多くの女性の共感を得ています。まずは、簡単にあらすじを説明していきたいと思います。

※以下ネタバレあり

『皮膚と心』のあらすじ

主人公である女性の身体に、ある日吹き出物ができました。
初めはあまりに気にしてませんでしたが、風呂場でこすると吹き出物が全身に広がってしまいます。
生来、自分の顔にあまり自信のない主人公は、ひどく落ち込んでしまい、夫に相談しましたが、吹き出物の原因は分からず病院へ行くことになります。
病院の待合室にて不安がピーク達し、色んな事に思いをめぐらせる主人公。
元々容姿に自信がなく、女性らしさを捨てたように生きてきた主人公でしたが、急に女としての寂しさや不安を覚えて、葛藤してしまいます。
結局、吹き出物の原因はアレルギーの一種であると診断され、注射によって快方に向かうのでした。

 あらすじを見ると、「これだけの話?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、これだけの話で面白いからこの作品は凄いんだと思います。


「皮膚と心」の魅力

 この作品最大の魅力はなんといっても、ジェットコースターのように上下する女性心理の描写にあります。読んでみると分かるんですけど、「皮膚と心」の主人公って、自意識過剰でプライドが高いんですよね。自分は容姿がよくないと卑下してはいるんですけど、卑下することによってプライドを保っているみたいな。本当に容姿を気にしていなければ、吹き出物ができてもどうでもいいはずなんですよね。でも、主人公は気にしちゃう。プライドを全て捨てているわけではないという人間臭さがリアルに感じました。

 こういう「人間臭い」部分を描くのが太宰治はとにかく巧みです。誰しもが持っている、共感できるけど口にしないような感情を作品に落とし込んでくるあたりが、文豪といわれる所以なのかなも思います。「皮膚と心」は女性向けの小説として、扱われることが多い作品ですが、男性にこそ読んでほしいと僕は思います。女心が上下する様を読むことでもしかすると、彼女や奥さんとの関係に活かせるかもしれません。興味が出たという方は是非読んでみてください。

最後まで読んでいただいてありがとうございました。

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