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いちからぬか床をつくってみた

よく晴れた秋の日に、せっせと捏ね続けていた。
かれこれ30分は経過している。
何かというと、糠(ぬか)である。
いい天気なのに出かけなくてもったいないと言われるかもしれないが、家に籠もってひとり糠を捏ねるほうが楽しかった。

ぬか床を作ろうと思ったきっかけは単純だ。
我が家のお米は、無くなりそうになったら、夫が楽天ポイントがお得につく日に買うということになっているのだが、
前回頼んでくれたときに、無料で生ぬかも着いてくるおまけがあったのだ。

米5kg×5こについてきた、生ぬか1kg。

最初は家庭菜園をしているので、肥料にしようかなと考えていたけど、失敗すると虫などがくるリスクに怯え、
また、掃除にも使えるとも知ったけど面倒だなぁと思い、
よし。ぬか床をつくろうと決意したのだった。

実家では祖母がぬか床を管理していた。
姉はキュウリの古漬けが好きで、よく食べていたのだが、私はそこまで好きじゃなく、漬物全般に苦手意識があった。
大人になり、外食する機会が増え、大根のゆずに漬けたものや青菜の漬物など食べるようになってから、漬物を好むようになった。

結婚当初、ぬか漬けセットを買ってつくってみたことがある。
健康になれそうだし、ぬか漬けつくってるって何かいいなぁという単純な理由で。

最初はちゃんとキュウリとか食べていたのだが、だんだん作らなくなり、結局やめてしまった。

糠を混ぜるときのべちょっとした感覚が嫌で、混ぜるのがストレスになったことと、どこまで漬けたら美味しいのかが分からなく、ぬか漬け大好き!ってわけじゃないので、やる気の灯火が消えてしまったのだ。

このことは私に影を落とす出来事のひとつになった。
こんなこともできないのかというのと、もったいないことしてしまったなぁという後悔。

なので記憶の引き出しの奥深くにぎゅーっと無理やり詰め込んで、考えないようにしていた。

そんな私がなんでぬか床に再挑戦しようと思ったのか。

それは、小川糸先生の『食堂かたつむり』を読んだことがきっかけとなる。
ある日帰宅した主人公が目にした風景は絶望的なものだった。
同棲していた彼氏が金目になるものや大事に集めていたキッチン道具、通帳など全て持ち去り逃げ出したのである。
そんななか、祖母から引き継いだぬか床は取られずに済んだことに、主人公は安心するのだ。

そのシーンがすごく印象に残っていた。

主人公の祖母はすでに他界しているけど、そのぬか床で祖母と心が通じ合っているところがいいなぁと思った。
またちゃんとお手入れしたら、こんなに長くぬか床を続けられることに驚いた。
そして時間の積み重ねによる、糠の熟成具合。

もう一度ぬか床をしたいと思うには十分なことだった。
そう思っていたところにタイミング良く、生ぬかを手に入れることができた。

これはもうやるっきゃない。

ぬか床の作り方は、白ごはん.comさんのレシピを参考にした。

作ってみて、捏ねるのがすごく大変だった。
底から混ぜているつもりだけど、全然混ざっていない部分もあったし、逆にこの部分は水がたまってる!ということもあって、体感100回以上は混ぜた気がする。

混ざったら、卓球ボールくらいの大きさにし握ったときに水がじんわりでたら水分の含み具合がちょうど良いと書かれていたが、混ぜすぎると水分が飛びすぎてしまうのか、全然じんわり出てこないので焦った。
方法があってるか分からないが、その都度水を足してもう一度混ぜて、水分具合を確かめて…を繰り返し、
これくらい柔らかければ大丈夫かと勝手に判断してようやく手を止めた。合っているかが分からないので少し不安。

その後、容器に糠を詰めていく。
ホーローの容器とかもあるけど、私は、towerの密封容器を使うことにした。
密封されていることと、冷蔵庫に入れやすいということ、そして蓋から中身が見えるということが決め手だ。
発酵が止まるので、冷蔵庫には基本的には入れないが、万が一今後長期旅行にいくことになる場合も考えて、便利だなぁと思って購入した。

糠を詰めたら、鰹節や干し椎茸、唐辛子など下地の味になるものを入れ、捨て野菜を入れて、表面を馴らして、上からぎゅっと押して空気をぬいたら終了だ。

ちょうどおやつどきになった。
LUPICIAのマスカットティーを入れて小休憩。

ぬか床づくりはこれで完成ではない。
ここからがスタートだ。

良いぬか床になるまで、毎日かき混ぜ、捨て野菜を入れ替え、冷暗所に置いておく。
手をかければかけるほど、美味しいぬか床になるそうだ。

私が種から植物を育てることが好きな理由にも通じることだけど、こうやって手間暇かけることで結果がでるという行為がわりと好きだ。

なので糠を混ぜるときの感覚には慣れないけど、いちから自分で作ったことだし、ぬか床LIFEを続けていこうと思う。

そして将来、おばあちゃんの糠漬けが一番美味しいと言ってもらえるように長くぬか床を守っていけたらいいな。




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