ちびたの本棚 読書記録「シャーロック・ホームズの凱旋」森見登美彦
物語の舞台は森見さんお得意の京都、うんうん、登場人物はシャーロックとワトソン、ハドソン夫人などコナン・ドイルの作品でお馴染みの彼らだ。そして住まいは寺町通221B。…寺町通?
シャーロック一門がビクトリア朝京都に住んでいるという設定なのだ。
最初はこの設定に少し戸惑った。でも読み始めてしばらくすると、洛中洛外を狸が闊歩する「有頂天家族」となんら違いはないと思い、たちまちこの物語に馴染めた。狸かシャーロックかの違いだけで、なんのことはない、いつもの森見ワールドだ。
「謎は全て解けば良いというものではない。解いてはならないものがある」というシャーロックの言葉。京極夏彦氏の作品の登場人物、陰陽師 中禅寺秋彦の決め台詞「この世に不思議なことなど何もないのだよ、関口くん」とは正反対の言葉だ。
後々この「解いてはならない〜」が、物語にどう関わっていくのか。
ミステリーではないけれど、謎が謎を呼ぶファンタジーだ。スランプからなかなか抜け出せないシャーロックを描いた前半に比べ、後半は怒涛のようにストーリーが展開する。
読み終わるのが残念で、今日はここまでと、とっておきの羊羹を味わうかのように読み終えた。