「読んでいない本について堂々と語る方法」 ピエール・バイヤール “本は読んでいなくても批評できる。いや、むしろ読んでいないほうがいいくらいだ。テクストの細部にひきずられて自分を見失うことなく、その書物の位置づけを大づかみに捉える力こそ、「教養」の正体なのだ。” 読書感想文でこの本を紹介する勇気をまず褒めて欲しい(笑) 言っていることはだいぶ極論ですが、 知識全体の中の一冊の書物の位置を把握するためには個々にとらわれる読み方はかえって危険であり、その本に対して適当な距離を
「日曜日よりの使者の詩」 甲本ヒロト 全歌詞 たとえばこの街がぼくを欲しがっても 今すぐ出かけよう (日曜日よりの使者) もしも今夜眠れないで 夜が明けるのを待ちながら テレビを見たり マンガ読んだり ひとりぼっちでいるんなら うまくいくぜ うまくいくぜ なにもかもが うまくいくぜ インスタントのコーヒーと紅茶のティーバッグで (うまくいくぜ) なんだかよくわからないけれど 見た目がすげえヤバいぜヤバいヤバすぎるヤバい 見た目がすげえ ヤゴ ヤゴ ヤゴ ヤゴ (ヤゴ
「木曜日だった男」 チェスタトン “この世の終わりが来たようなある奇妙な夕焼けの晩、十九世紀ロンドンの一画サフラン・パークに、一人の詩人が姿をあらわした。それは、幾重にも張りめぐらされた陰謀、壮大な冒険活劇の始まりだった。日曜日から土曜日まで、七曜を名乗る男たちが巣くう秘密結社とは。” 無政府主義者たちが巣食う謎の秘密組織に潜入することになった主人公、ひょんなことから組織の幹部“木曜日”が空席であることを知ります。そして次期木曜日候補の案内を受けて議論を深めていくうち、ふ
「検閲官のお仕事」 ロバート・ダーントン “政治体制、思想、国際関係、経済事情、名誉…。さまざまな文脈が絡み合う。「検閲とは何か?」時代と場所の異なる三つの政治体制の比較に、その答えを求める、人類学的歴史分析。“ 検閲官、と聞くと浮かぶのは、黒塗りの新聞や華氏451度のような抑圧のイメージ。都合の悪い言論を封殺していく独裁者の手先ロボット。 しかし実際のところ、彼らはどのようなシステムに基づいて、またどのような誇りを持って“仕事”をしていたのか?そこに現れる人間性とは。
「証明の読み方・考え方〔原著第6版〕」 Daniel Solow 証明問題への取り組み方、その戦術を一つ一つ丁寧に解説している数字的思考過程への手引きです。 結構ガチ目な専門的入門書の類なのですが、ちょっと普通とは毛色が違う今まで空白だった部分に特化しています。 それは、 “問題に取り組む時にどのワザを採用するか” これ結構いままではセンスで片付けられることが多かったんですよ。解答を見た時にその解答自体は理解できても、“いやその最初の一歩の発想どっから来た?”“何食ったら
「好色五人女」 井原西鶴 “お夏清十郎”や“八百屋お七”など、実際の事件をモデルに西鶴が創り上げたエンターテインメント小説五作。鋭い人間観察が可能にした性愛と「義」をめぐる物語から、はかない今を恋に賭ける女たちのリアルが浮かび上がる。“ 江戸後期の、運命に翻弄される中で性と義に目覚めていく女性たちの物語。「そこまで疑われちゃあしょうがない!」とばかりにとんでもない方向に針を振り切って開き直っていく女性の強さと恐ろしさは、「義」というものが現代の感覚では一筋縄でいかないこと
「楽園」 後藤静香 大正から昭和にかけての社会運動家であり、全国点字活動の推進者でもある著者の詩・エッセイ集です。 “一つ失敗したら、次こそ成功するぞと覚悟をするべきではないか。失望は勇気の自殺である” “逆境を利用して突っ立ち上がるためには跳ね返る気概、弾力がいる。これに時の力を加えたものが堅忍持久である。世の中のことは一時的発奮よりも、辛抱強い堅忍持久の方が効果をあげる。” “人生は楽園なり、という信念を持つ” などなどグッと肚に力を入れてくれる言葉が多いのですが
「古代文字の解読」 高津 春繁/関根 正雄/永井 正勝 “発音も不明な謎に満ちた文様ーエジプト聖刻文字、楔形文字、ヒッタイト文書、ウガリット文書、ミュケーナイ文書。主要古代文字が解読されるまで推理、仮説、検証を重ねた、気の遠くなるような忍耐と興奮の軌跡を、言語学と旧約聖書研究の泰斗が平易かつ正確に描写。数千年を超えた過去との交流を先人とともに体感できる一冊。” 付箋を貼りまくって収集つかなくなっちゃう本って二種類ありまして。 一つが感動したり感心したり大事なこと宝箱状態で
「ステパンチコヴォ村とその住人たち」 ドストエフスキー “都会で暮らす主人公は、育ての親であるおじの召使から、故郷での異常事態について知らされる。祖母に取り入った居候が口八丁を弄して家庭の権力をほしいままにしているというのだ。彼と対決すべくかの地に向かうが、癖のある客人や親戚たちの思惑にも翻弄され、予想外の展開に…。” ドストエフスキーがその流刑時代の人間観察の成果をありったけ注ぎ込んだ傑作喜劇です。流刑囚の作とあって文壇からは黙殺され、知名度は低いですが、(借金に追われ
子供の頃すり切れるほど読んだ絵本。 「せむしの子馬」 世界観が立ち上がるようなディティールや、 知恵と勇気の大切さを教えてくれるストーリー、そしてスーホーの白い馬やマリオのヨッシーにも通じる愛くるしくも頼りになるこうま。 どうしてもう一度読みたくて、探してみたものの、版や訳がいくつもあってほとんどが絶版で書影もありません。というわけで、蛇の道は蛇、本の道は司書。図書館のレファレンスサービスを利用してみることにしました。 断片的な記憶 1:1984-90くらいには出版されて
今5冊ほど並行している中の一冊。 「ウナギと人間」 冒頭から、 ダヴィンチの最後の晩餐の中にはうなぎ料理がある、という記述があって、 この本買ってよかったー!と思いました(笑) ただ、序章読んで終章読んで、後ろから各章の最終段落を読みながら遡っていったら大体この本の概要が7割ほどつかめて、、どっちかというとウナギ自体というよりはウナギに関わる人間たちにフォーカスした感じ。通して読むかどうかは別の本読みながら考えたいと思います。 訂正) ちょっと読み進めたら、 心理学者のフ
「中国の死神」 大谷亨 “中国の死神である「無常」は、中国ではよく知られた民間信仰の鬼神である。フィールドワークに基づきながら、無常の歴史的な変遷を緻密にたどり、妖怪から神へと上り詰めたそのプロセスや背景にある民間信仰の原理を明らかにする中国妖怪学の書。” 死神、と聞いてよくイメージに上がるのは、ローブをまとったドクロが大鎌を携えてる図です。 ところが中国の死神は、 「無常」といって、 長い帽子に長い舌を垂らし👅基本は現場官僚として魂魄集めに精を出しつつ出会い頭に富を授
アガサクリスティの、誰も死なない隠れた名作。 「春にして君を離れ」 主人公の女性が、ふと人生を振り返る。 ただそれだけの、ただそれだけの小説なのになんでしょうかこの読後感は。。 “理想の家庭を作り上げた”彼女の自己評価は極めて極めて高いのですが、その軸足は「他者がどう思うか」に置かれています。心理学で言うところの他人本位。満足した他人本位者には「救われる」余地が全くありません。親鸞の悪人正機も真っ青です。 そんな主人公の絶対的な世界が、アガサクリスティの繊細な筆致の中で
「鉄道ダイヤのつくりかた」 この本を読んでいる理由の建前と本音ってのがありまして。 建前は、 限られた設備と期限内で最大の輸送を渋滞なく効率化するためのプロフェッショナルな考え方や技術の真髄は畜産のボトルネックを作らない生産計画にも役立てられるのではないか、日常の当たり前の裏にある最適化されたシステムを知ることは他業種においても得られるものが大きいと感じられたから。 本音は、 なんかーよくわからなすぎてかえってめっちゃおもしろそーじゃーんってなったから。
「萌えて覚える英単語 もえたん」 逃げちゃダメだ、私には十二人の妹がいる、 などのアニメ例文を使った参考書の走りです。 何でこれを今日紹介したのかというと、 実はこの本、 2003年度東大生協で最も売れた本だったのです(笑) あそこはほぼほぼ通年で売上一位がカラマーゾフの兄弟で不動なのですが、その記録に楔を打ち込んだのがこの「もえたん」なのです。 この年の前後でオタク文化が市民権を得て、ついには東大にてドストエフスキーの覇権を脅かすに至ったと考えるとなかなかにエポック
二月前半の読了書籍(とも)達。 ・『クオリティ国家という戦略:大前研一』『街場の中国論:内田樹』両極な二人ですが視点が鋭くてどちらも好き(≧∇≦) ・『教育論:齋藤孝』著者の専門ど真ん中だけあって力入ってます。紹介されている学者アラムハラドの見た着物は一読の価値あり(^−)−☆ ・『ストーリー創作の極意:冲方丁』『企む技術:加地倫三』それぞれ天地明察、アメトークのプロデューサー。半端ない分析力と段取り力に感動した(T_T) ・『風の王国:平谷美樹』てっきり三巻で終わると思って