「楽園」
「楽園」
後藤静香
大正から昭和にかけての社会運動家であり、全国点字活動の推進者でもある著者の詩・エッセイ集です。
“一つ失敗したら、次こそ成功するぞと覚悟をするべきではないか。失望は勇気の自殺である”
“逆境を利用して突っ立ち上がるためには跳ね返る気概、弾力がいる。これに時の力を加えたものが堅忍持久である。世の中のことは一時的発奮よりも、辛抱強い堅忍持久の方が効果をあげる。”
“人生は楽園なり、という信念を持つ”
などなどグッと肚に力を入れてくれる言葉が多いのですが、この本の特異なところは、この詩集が30代の時(!)に書かれたものに80代の著者がコメントを入れる形式で作られているというところです。
蕾の命と花の美と、熟しきった実の味が溶け合った作品、と著者自身が称しているのもうなづけます。
僕なんて昨晩書いたものですら恥ずかしくて読めません(笑)
様々な人生経験を経てもなお、
“人生は楽園なり”
と肯定できる清々しさは、フランクルの『夜と霧』やアンデス飛行機墜落事故を描いた『生存者』の人間価値を彷彿とさせるものがあります。
一過性の強い言葉は世間に溢れていますが、時を跨いで繋がれた、粘り強い言葉たちに触れられる一冊です。