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「DX?わからん!」から始まる私塾の挑戦──Club Meridian 中根一 × Gns【前編】
数年前のコロナ禍で、今まで対面で行ってきたさまざまなコンテンツがオンラインに移行したことはまだ記憶に新しいのではないでしょうか?
そんな時代背景の中で、
「これはオンラインでできるのでは?」
「でも、オンラインにしたことで価値が変わることは怖い」
と思った経験がある方もいるかもしれません。
今回の対談のお相手は、そんな気持ちを抱えながらDXを視野に入れて走り出した株式会社Fieroの中根一さんです。主に鍼灸院の経営をされています。
鍼とオンラインを掛け合わせようと思ったきっかけから、実現するための葛藤を振り返ります。
コロナ禍を経て気付いたオンラインの可能性
──よろしくお願いします。それではさっそくですが、株式会社Fieroさんについて教えてください。
中根:はい、よろしくお願いします。
株式会社Fieroは主に鍼灸院の経営をしています。
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中根一(株式会社Fiero 代表取締役社長、Club Meridian代表)
医家の四代目として育ち、ご縁があって鍼灸師の道へ。明治鍼灸大学(現・明治国際医療大学)を卒業後、臨床と教育に20年以上携わる。
「鍼灸Meridian烏丸」で鍼灸院の経営、大学で客員教授をし後輩育成、「Club Meridian」ではより良い鍼灸師の育成など幅広く活躍している。
鍼灸Meridian烏丸HP / Club Meridian
鍼灸院では患者さんの体の不調やお悩み、時には美容のお手伝いをしています。その他に大学での客員教授、私塾「Club Meridian」では鍼灸師向けの勉強会を行っています。
学校教育と私塾の違いは、伝えられることが少し異なる点です。私塾では自分が経験したことや自分の価値観に重点を置いてシェアをし、より良い鍼灸師を目指す人のお手伝いを目的に行っています。
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もう迷わない鍼灸師へ
どれだけ釘が上手く打てても、設計図がなければ家を建てることはできません。
皆さんが、いずれ鍼灸師として充実した日々が過ごせるように、1年間を掛けて「設計図の書き方」と「釘の打ち方」を一緒に育てていきましょう。
鍼灸師としての専門性を再認識する
「はり師」「きゅう師」の免許は、ともすれば人を殺めてしまう危険性のある道具を、安全に扱うことができるという証です。
鍼と灸は東洋医学を行うために必要な道具だから、ボク達は免許を取得するのです。
つまり「アナタの専門は何ですか?」と訊ねられたら、「東洋医学です」と答えるのが正解!ボク達は、東洋医学の専門家であるということを忘れないでください♪
今回、私塾Club MeridianのDXについて、Gnsさんに依頼しました。その背景には、コロナウィルスで時代が変わったことがあります。コロナ禍の間、私も実際にオンラインで1〜2時間の動画を視聴して学ぶ経験をし、オンラインでの学びが一般的な選択肢になったことを実感しましたね。そこで、鍼の分野でもオンラインで伝えられるものがあると考えました。
そこから、Club Meridianでも、もう1度勉強の在り方や学びたい人たちとの関わり方を見直そうと決めました。
いろいろなやり取りをマニュアル化し、その流れでDXを視野に入れて検討し始めました。Club Meridianの勉強会がDXを通してどこまで変容できるか。また、今どれくらいの変化を受け入れるキャパシティがあるか考えていました。
──渡邊さんは当時のことを覚えてますか?
渡邊:はい、よく覚えています。中根さんはClub Meridianがどのくらい変化することを受け入れられるか、非常に深く考えられていたことが印象的でした。
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渡邊 高行(株式会社Gns 代表取締役)
東京で創業し、2年前から京都に活動範囲を広げる。
主な事業内容はシステム・アプリ開発、Web制作、AI・DX支援など。
クライアントの次のステージへ、共に進む。
ご依頼としては「補助金があるからDXしたい」というパターンもあります。ですが、今回はDXを決める1歩前の段階から共に考えさせていただきました。
具体的には、Club Meridianの価値をどう届けていくか、さらに次に繋げるためにはどうしたらいいか、何を変えて何を変えないのか、一緒に深掘りしていくところからのスタートでした。
──お2人の出会いは何がきっかけだったのですか?
渡邊:中根先生の奥様と私がもともと別のプロジェクトを通して知り合いだったことがきっかけです。
中根:誰の紹介って大事でしょう?京都ですからね、紹介文化があるじゃないですか。
紹介だと、会社の規模や資本金とかはとりあえず置いておいて「じゃあ話を聞こうかな」となるんですよ。
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そして、聞けば聞くほど悩みましたね。「DXがわからん!」「概念もわからん!」の状態だったです。
わからなくてもDXへ走り出すことはできる。
──わからないことがわかっていく過程で、それでもDXに挑戦しようと思ったのはなぜですか?
中根:前年、オンライン化やアーカイブ視聴を希望する声が多かったことがあります。コロナ禍で「鍼もオンラインで何かできるのでは?」と感じてはいましたが、実際にニーズがあると気づかされたからですね。
今までオフラインで1対10数人とある程度決まった人数に価値を届けていたところから、オンラインにすることで1対nとなり、いくらでも数字を追うことができるようになります。
すると、「数字を追いかけなさい」と悪魔の声が聞こえてきました。でも、「オンライン化してもClub Meridianで本当に伝えたいことは伝わるのか?」「質が変わったら、それまでいいねと言ってついてきてくれていた人たちが離れるかもしれない。」「でも、オンライン化のチャンスは来ている。」この葛藤がずっとありました。
きっかけは奥さんからの紹介でしたが、この葛藤やわからないことに本気で一緒に向き合い、壁打ち相手となってくれたのがGnsさんです。
──Gnsさんと関わったことでDXしたわけですが、実際にやってよかったと思うポイントはありますか?
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中根:Club Meridianとしての棚卸しができたという点ですね。自分たちが「ええもん」と思っているものが何か自覚できました。
もう1つは、実務をしてくれるスタッフの作業が効率化したことです。
前年はClub Meridianが盛り上がっていた頃の人数にほぼ戻っています。リアルでの学び方と受講者数が変わらないところまできています。
DXをしたことで作業が効率化して時間は増え、お客さんは変わらずにいるので得ることしかないです。
ちょっとポエム的に言いますと、Gnsさんと関わることはリベラルアーツ。自由になるための技ですね。
渡邊:嬉しいお言葉をありがとうございます!!!
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今回いただいたご依頼は、今までClub Meridianとして行ってきた授業を残し、いつでも見れる状態にしておくことで、新しい価値を作っていくことです。
その根幹でもある
アーカイブ視聴できる状態とはどんな価値があるのか
動画を視聴する対象は誰なのか
アーカイブ視聴できる人たちはこれからどうなっていくのか
というところも一緒に考えさせていただきました。
今までオフラインで中根先生が熱量高く届けていた授業ですが、オンラインという形を取ることでおそらく温度感は下がるという話もさせていただきましたね。
オンラインとオフラインでは価値が変わることは中根先生も感じられていて、そこを丁寧に作り上げていきました。
中根:最初から明確なゴールがあったわけでも、ゴールが見えていたわけでもありません。
一緒に最初の1歩の踏み出し方を模索していくうちに、事業をアップデートして新しい学び方を届けるという覚悟が生まれました。
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今Club MeridianがDXをすることでITツールを手に入れました。それは、今まで鍬で耕していた畑が耕運機を使えるようになったイメージです。作物の収穫量を増やすためにはどうするの?という結果からの逆算ではなくて、自分たちが出会ったものから得たスキルや協力の先に結果が生まれていることを感じています。
──GnsさんがClub MeridianにとってのDXのメリットとデメリットを多方面から捉えていたからこそ、明確な目的やゴールがなくても進めていくことができたのですね。
後編では、実際のオンラインとオフラインの違いやDXへの覚悟を詳しく聞いていきます。こちらからどうぞ!
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株式会社Gns ( https://gns-japan.com/ )
担当:渡邊 高行
電話:03-6822-3327(受付時間:平日9:00〜18:00)
メール:info@gns-japan.com
LINE:https://lin.ee/9Vuc0Xd
〈インタビュー〉仲田 匡志(株式会社SOU)
〈撮影〉黒木 康太
〈ライティング〉神崎 千晶