お寺の在り方を再定義──とまり木プロジェクト 油小路和貴 × Gns【前編】
みなさんのお寺のイメージは何ですか?
「葬儀や法事を行うところ」
「お坊さんって厳格でお堅いイメージ」
中には
「旅行中に観光で見学するところ」
などの印象をお持ちの方もいるかもしれません。
今回の対談のお相手は、そんなお寺の在り方を再定義するためにさまざまな挑戦をされた佛現寺 副住職の油小路和貴さん。地域に開かれたお寺となるために、IT企業Gnsと挑戦した内容やきっかけをお聞きします。
お寺とGns。小学校の同級生同士がビジネスパートナーへ。
──2人は小学校時代の同級生だとお聞きしました。長い時間を経て、ビジネスパートナーになったきっかけを教えてください。
油小路:普段から渡邊さんを「ワタ」と呼んでいるため、そう呼ばせていただきますね。子どもの頃はワタとずっと一緒で、よく遊んでいました。親友ですね。
ワタとは、2022年の年明けの新年会で10数年ぶりに再会しました。
僕は、大学を卒業して銀行員になり、辞めてお坊さんの養成学校と大学院で学んでいました。再会した時は、ちょうど修士論文を提出し終えたばかりで、博士号を取るかどうか悩んでいたんです。同時にお寺や仏教に対する違和感があり、何かを変えたい想いがありました。いろいろな悩みにあふれ身動きが取れなかった時に、ワタと新年会で再会したんです。
──お寺のどんなところに違和感がありましたか?
油小路:宗教や仏教という言葉に対する世間一般のイメージがネガティブなところです。新興宗教の怪しいイメージや昨今の宗教問題のニュースから、抵抗を感じる気持ちも理解できます。ですが、知識を深めることで本当はそんなに悪いものではないとわかります。私も含めたこれまでのお坊さんたちが、世間の人が仏教を知るきっかけ作りを怠っていたため、今のイメージがあるのだと思います。
僕は信者さんを増やしたいわけではなく、今ネガティブに引っ張られているイメージをフラットに変えたいと思っています。「仏教ってまだ捨てたもんじゃないよね」と思う人を増やしたいです。
当時はここまで考えがまとまっていなかったのですが、僕の想いや悩み、動き出せない言い訳や愚痴をワタに打ち明けると、「あぶさんが考えていること、一緒にやろうや」と言ってくれました。
「わからなくても挑戦していいんだ」と目から鱗でしたね。
それから愚痴は目標に変わり、ワタがビジネスパートナーになり、僕の挑戦が始まりました。
──仏教の意味や価値を知る人が増えてほしいという願いですね。渡邊さんはどういった思いで油小路さんと活動を共にしたいと思われたんですか?
渡邊:普段から油小路さんを「あぶさん」と呼んでいるので、ここでもそう呼ばせてもらいますね。僕はシンプルにあぶさんの挑戦を応援したいと思ったので一緒に活動をしています。
あぶさんの挑戦は、仏教への世間一般的なイメージと本質のミスマッチを変えること。ここに共感しました。
僕は仏教について詳しくないですが、死生観は強く持っています。大きな選択をする際には、どう生きたいか、どう死にたいかを念頭に判断します。それは、20代の頃に父親が病気になり要介護になった過去などが大きく影響していると思います。あぶさんから「ワタの生き方は仏教や」と表現されたことがあり、僕の生き方や考え方は仏教に近い部分もあるようです。そのため、より強く共感できたのかもしれませんね。
僕はあぶさんの想いに共感し、挑戦を応援したいと思ったので「一緒にやろうや」と声をかけ、あぶさんの想いを形にすることをスタートしました。
──油小路さんが1歩踏み出せない理由は何でしたか?
油小路:とにかくわからないことが多すぎました。変えたいけど具体性がどこにもない。何をしたらいいかわからない。想いをどこにどう乗せたらいいかわかりませんでした。
わからないから行動することもできなくて、もやもやがずっと積み重なっていましたね。動き出すことができたのは、ワタからの「やったらええやん」の一言です。
わからなくても「やってもいいんだ」という発見でしたね。
あの新年会がなければ、僕はきっと博士号を目指して勉強していたかもしれません。
渡邊:何かに挑戦する時には想いも大切ですが、タイミングも重要ですよね。あぶさんの中には想いはありましたが、まだきっかけがなかった。そこに僕がたまたまきっかけを運んできた感じですね。
──お2人が再会して想いを語り合い、渡邊さんの「やったらええやん」の一言で始まったものがとまり木プロジェクトなんですね!
お寺のあり方を再定義。とまり木プロジェクトとは?
──とまり木プロジェクトについて教えてください。
油小路:私が副住職している佛現寺が、多くの人の人生のとまり木のような存在になることを目的として始めたプロジェクトです。
とまり木とは鳥が羽を休めるための木です。
これから羽ばたく準備をする場
飛び続けた後、一休みする場
ただただほっこりゆっくりする場
そして、いつでも帰ってこれる場
そんな人生のとまり木のようなお寺を目指しています。
具体的には、
日本酒会
AI勉強会
アトツギ交流会
などをしています。
──お話を聞くとお寺の在り方を再定義する活動ですね。IT企業Gnsさんとお寺は縁遠く感じますが、何が繋がって一緒に活動されましたか?
渡邊:「挑戦」によって繋がったと考えています。
IT企業はさまざまなプロジェクトに携わりますが、中でも、新しいチャレンジをされる場にサポートとして入らせていただく感覚でご一緒しています。サポートしていくという立場上、Gnsが誰よりもチャレンジしているスタンスは必要です。
取り組みの1つ1つがGnsの成長に繋がりますし、あぶさんの挑戦を応援することで我々の挑戦にもなる。「明確なゴールが描けなくても共に考え、共に実現する」というスタンスを重視しています。
Gnsの社名は「Go next stage.」の頭文字です。「お客様を次のステージへ」とも受け取れますが、我々は「お客様と我々も共に次のステージへ」を常に考えています。
だから一緒に挑戦できました。
──油小路さんから見てどうですか?
油小路:最初はこんなにいろいろしてくれて、何を返していけばいいだろうと考えていました。知り合いの企業さんを紹介しようとか。そしたら「あぶさんに求めていることは、そういうことじゃない」とワタに言われ、もらったから何かを返すという単純な関係じゃないことに気づきましたね。
ただ同じ目標に対して一緒に走って、伴走どころか追い抜くほど全力で走って引っ張ってくれる。それがGnsさんであり、ワタだと思います。
──伴走どころか追い抜くほど全力。Gnsさんだからこそだと感じます。10数年間それぞれ東京と京都で生活をしていたお2人が、今は同じ方向を向いて走っているのですね。
後編では、とまり木プロジェクトの内容についてもっと詳しくお話を聞いていきます。お楽しみに。
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