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#ショートショート
ショートショート 「話、聞いて」
私の妄想、聞いてくれるかな?
私の彼氏は困った人で、バレンタインデーにチョコをあげたら「香澄からチョコ貰った~」なんて友達に自慢するの。恥ずかしいからやめて欲しい!
俺の妄想、聞いてくれるかな?
俺の彼女は困ったやつで、ホワイトデーにマカロンをあげたら「智也から貰った~」って友達に自慢してやんの。恥ずいからやめろって!ホワイトデーに渡すマカロンには「あなたは特別な人です」って意
ショートショート 「公園」
公園のベンチに座って読書をするのが好きだ。勉強で溜まったイライラがスーっと解消されていく。公園で遊ぶ子供達の賑やかな声を楽しみながらの読書。書斎でクラシックを聴きながらする読書なんかよりよっぽど優雅だ。
キャッチボールをする人、子供連れの家族、ベンチに座って弁当を食べる人…。2週間前に引っ越してきて、およそ10日前に見つけた公園。それから毎日このベンチに座って読書をし、たまに公園の様子をチラ
ショートショート 「死のニオイ」
死の匂いが分かる。もうすぐ死ぬ人から発せられる独特な匂い。例えるなら、泥水の様な。あまり良い匂いではない。
初めて死の匂いを嗅いだのは、約12年前。祖母が亡くなった時。いつも石鹸の良い匂いがした祖母から、急に不快な匂いを感じた。心不全で亡くなったのは、それから2日後のことだった。父が亡くなった時も、不快な匂いを感じた。泣きながら「死なないで…」なんて言って、何も知らない父を困らせた事もある。
ショートショート 「貯金箱」
私は、明日、異動の為この学校を去る。4年間勤めた小さな中学校。私が担任をした1年生は、たったの4人。全校生徒合わせても11人。異動先の中学校は、全校生徒513人と、この学校とは比べ物にならない生徒数だ。
生徒に囲まれる様な教師生活を夢見ていた私には、楽しみな環境ではある。ただ、生徒一人一人と密な関係を築けるこの学校を離れるのは、やはり寂しい。せめて、1年生4名を卒業まで見守りたかった。離任式
ショートショート 「お子様ランチ」
俺の目の前に置かれているお子様ランチ。40手前の男がボーっとお子様ランチを眺める。小ぶりのオムライス、タコさんウインナー、エビフライ、みかんゼリーにオレンジジュース。別に俺が頼んだ訳ではない。というか、ダンボールで作った家に住む俺だ、そもそも買えない。
街灯に照らされたそれは、食べようと手を伸ばすか、目が完全に覚めてしまうと消えてしまう。寝ぼけ眼でしか見ることが出来ない。いつもぼやけていて、
ショートショート 「黒天井」
夜空を眺めていると、どこかに天井があるんじゃないかと思う事がある。日中の青空は、どこまでも際限無い程に深く高いのに。限界が無いように感じられる様を「青天井」と言うが、上手い言葉を考えたものだと感心する。
日中の空を「青天井」と言うのなら、私が今見ているのは「黒天井」とでも言うべきだろうか。星が美しく輝いているが、実は割りと低い位置にあるのではないかと疑ってしまう。スーパーボールを思いっきり跳
ショートショート 「白紙の夢」
夢を叶え、小学校教師になって5年。初めて6年生の担任を勤めることになった。思春期の子供が相手な訳だから、難しい。思い描いていた『生徒に囲まれる大人気の先生』とは程遠い。勿論、懐いてくれる生徒も居るが。
今日は、約1ヶ月の夏休みが終わり始業式の日。そして、夏休みの宿題の提出日。案の定、というか伝統行事というか、「忘れました」の合唱祭が我が教室でも行われた。普段は合唱をサボりがちな、不真面目な男
ショートショート 「引っ越しのバイト」
「好きな事を仕事にして稼げるなんて最高じゃん!」そう思って始めた引っ越しのアルバイト。引っ越しの何が好きかと聞かれても答えるのが難しいが、強いて言えばイベントの様な高揚感。
依頼者は皆、新たな生活をスタートさせようとしている人ばかり。中には、全く見知らぬ土地で0からのスタートを切る人も居る。そんな、数多くのイベントに関わる事が出来る仕事。それが引っ越しの仕事。
今日の依頼者は中々面白い人
ショートショート 「夢と現実」
「俺さ最近、夢と現実の区別付かなくなる時あるんだよね」
「え!俺も!」
「これが現実っていうのは分かるけど…」
「え?夢でしょ?」
「え?じゃあ…」
「うわっ!いきなり殴って来んなよ…って痛くない…?やっぱり夢だよ、これ」
「え~?じゃあもう一発」
「全然痛くない」
「ダメだ、俺の拳が痛てー。…これはどうかな?」
「いやいや、痛くなくても鉄パイプは怖いって」
「いくぞ!」
「
ショートショート 「命が産まれる」
『新台入荷!』と赤字で書かれた旗。スーパーの端っこにある無人ゲームコーナーでは中々お目にかかれない文字だ。
田舎にある寂れたスーパー。一年ほど前に、安さを売りにした大型スーパーがこの町に出来た為、このスーパーは閑古鳥が合唱している。
私も普段はこのスーパーに来ないのだけれど、日頃の勉強や部活で疲れた時は、このゲームコーナーに一人で憩いに来る。元気な女子高生とはいえ、集団の中に毎日居るのは疲れる
ショートショート 「雨」
嫌な色をした雲。嫌な温度の雨。雨が降る時の匂いは好きだけど、ずっと外にいればその匂いもしなくなる。
「はぁー、疲れた…」
ようやく家に着いた。この雨の中、30分も歩いた自分にお疲れ様。
濡れた服を脱ぎ、濡れた身体を拭き、濡れた髪を乾かす。そうすればどうだろう。あれだけ嫌だった雨は心地良い物に変わる。
雨音。
自分に関わる“雨”を雨音だけにして、インスタントのオニオンスープを準備